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 ◆ 自然災害時における人々の保護に関するIASC活動ガイドライン(日本語版)
   第一部:序論

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第一部:序論
 1.自然災害は人権にどのような影響を与えるのか
 2.人権に基づくアプローチが自然災害時において人々の保護を促進する理由
 3.保護とは何か
 4.活動ガイドラインの目的および適用範囲



第一部:序論

 1.自然災害は人権にどのような影響を与えるのか

従来、自然災害1は、もっぱら人道的支援の提供に関連した課題を生む状況として捉えられてきた。そうした考え方の中では、災害時の人権保護の必要性はあまり注目されることはなかった。

特に、2004年と2005年にアジア各地および米州を襲った津波、ハリケーン、地震、さらには2010年のハイチ地震において、被災者は自然災害の後に様々な人権問題に直面する可能性があることが明らかになった。それらの人権問題とは、例えば次のようなものである。
  •  安全と安全確保の欠如(例えば、犯罪の横行、災害による二次的被害等)
  •  ジェンダー(性別)に基づく暴力行為
  •  支援、基本物資およびサービスの不平等な入手・利用機会(アクセス)、支援提供における差別
  •  子供に対する虐待、育児放棄および搾取
  •  家族の離散(特に、子供、高齢者、障がいのある人々および生活上家族の助けを必要としているその他の人々の家族との離散)
  •  個人の身元に関する書類の消失・破損、その再発行の問題(特に不十分な出生登録制度が原因となる場合)
  •  不十分な法の執行体制、公正かつ効率的な司法制度の利用機会の制限
  •  フィードバックおよび苦情の効果的な収集体制の欠如
  •  雇用および生計手段の不平等な入手・利用機会
  •  強制移住
  •  災害によって避難を強いられた人々の危険なまたは非自発的な帰還または再定住
  •  財産の不返還および土地への立ち入り不可
災害の緊急段階の間において差別と人権無視が生じる可能性があるが、災害の影響が長引けば長引くほど、人権侵害の危険性も高まることは過去の事例が示している。また、自然災害時には、以前から存在していた脆弱性と差別が悪化することも過去の事例が示している。

特に危険にさらされるのが、被災者の中でも、災害によって住居や常居所地を離れることを強いられ、避難者2となった人々である。そのような人々は、その結果、1998年の「国内強制移動に関する指導原則」に従って待遇されることとなる。〔訳注:internally displaced persons は通常、「国内避難民」と訳されるが、本ガイドラインでは「避難者」と訳した。〕

自然災害が発生した後の人権に対する悪影響は、意図的な政策が原因で生じるのではなく、計画策定と災害準備の不備、不適切な災害対応の政策と対策、または単なる怠慢が原因となって起こることが多い。

国連事務総長は次のように述べる。「自然のハザードに関連する危険と〔ハザードが災害となる〕可能性は、脆弱性の一般的な状況、および災害に対する予防・軽減・事前準備の対策の実効性に大きく左右される」3。〔訳注:hazard は「災害外力」とも訳される。〕

関連する人権の保障が事前準備、救援、復旧・復興といった災害対応のすべての段階で国内のまたは国際的な組織・関係者によって考慮されれば、このような課題は軽減でき、あるいは完全に避けることができる。
 1 「付属資料I:用語集」を参照。
 2 「付属資料I:用語集」を参照。
 3 事務総長の総会への報告書「援助から開発まで、自然災害の現場における人道的支援に対する国際的な協力について(On international cooperation on humanitarian assistance in the field of natural disasters, from relief to development)」A/60/227を参照。

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 2.人権に基づくアプローチが自然災害時において人々の保護を促進する理由

人権保護の視点は、人権の充足の保障と推進という戦略的側面を人道支援プログラムにもたらすだろう。過去の経験からも明らかなように、支援というものが被災者全員に対して平等かつ積極的に行われる中立的な活動であると単純に考えることはできない。支援がどのように提供され、利用され、吸収されるのか、そしてどのような文脈で行われるのかという問題は、被災者のニーズと人権の尊重または充足という問題に大きな影響を与えることになる。人権に基づくアプローチは、人道支援活動に必要な枠組みと基準を提示する。つまり、人間の尊厳、非差別および普遍的に保障されている人権といった普遍的な原則に、人道支援活動の基礎を置くことになるのである。従って、被災者は、単に慈善活動の恩恵を受ける受動的な立場ではなく、特定の義務履行者に対し権利を主張できる個別の権利保持者ということになる。

さらに、人権に基づくアプローチは、支援活動の価値をより高度なものにするだろう。例えば、当局が女性および子供に対して差別のない安全な環境で十分な食料と適切な住居を提供すれば、そうした支援がなかった場合に比べて性的搾取、児童労働および暴力にさらされる危険は減るだろう。

人道的支援が人権保護の枠組みに基づくものでないとしたら、その支援は視野狭窄に陥る危険があり、被災者の基本的なニーズのすべてが全体の計画策定と支援提供の過程の中に必ずしも組み入れられないことになる。
そうなると、後の復旧・復興において重要となる要素も軽視されることになる。さらにいうならば、自然災害の被災者は法の真空地帯に生きているわけではない。被災者は、国際的・地域的な人権文書を批准し、人権を保護する憲法、法律、規則および制度を備えた国に住んでいる国民である。従って、国家は、その管轄下にある市民およびその他の人々の人権を尊重し、保護し、充足する直接の責任を負っているのである。

そのため、人権は、自然災害における人道的活動を支える規範として重要なものであり続ける。災害管理に関する法律を定めている国は多く、災害対策の特定の側面に関する国際的な規定もあるが、人権法は、人道的対応の活動の指針となる重要かつ包括的な、国際的な法的枠組みを提供している4

国際的な人権条約に直接拘束されないものの、ほとんどの国際的な人道支援組織が、また多くの国内の人道支援組織が、自らの活動は人権の尊重に基づいて行わなければならないと受け止めている。これらの組織は、被災者のために、自らの権限に関する厳密な文言を超えて人権を尊重し、保護すべきであり、少なくとも国家による人権侵害につながるような政策もしくは活動を推し進めたり、積極的に加わったり、または認めたりすることは避けるべきである。

とりわけ、自然災害時に生じうる多くの人道的支援と人権保護のジレンマを考えた場合に、人権の概念を現場の支援活動にどのように適用するのかという課題が頻繁に生じる。支援活動の場面では、人権の枠組みは次の問題に対処するのに有効である。
  •  被災者の関連するニーズと利益を特定する。
    例:人権法は、移動の自由と居住地選択の権利を定めており、避難者の帰還または国内の別の場所への定住の自由を保障している。その半面、人権法は資金の信用貸し付けに対する権利を保障しておらず、被災者に対して小額融資(マイクロ・クレジット)を認めるか否かは組織や当局の判断に委ねられる。
  •  権利保持者と義務履行者を特定する。
    例:(1)「児童の権利に関する条約」によれば、子供は最大限の配慮の下で最大の利益を享受する権利を有し、それゆえ権利保持者である。(2)多くの人権条約によれば、主要な義務履行者たる国家は、キャンプおよび集団避難施設で警察保護を提供する義務を負う。
  •  人々の要求の制限を特定する。
    例:移動の自由は絶対的な権利であるとは限らない。そのため、強制避難または強制移住は特定の例外的なケースでは認められる(ガイドライン A.1.4 およびD.2.4 を参照)。
  •  人道支援活動が人権基準に適合することを確保する。
    例:食料、住居または保健医療サービスは特別のニーズを持つ人々に対して利用しやすいものでなければならないという人権基準に従えば、人道支援活動は、例えば、母子世帯、高齢者、障がいのある人々またはその他の特定の脆弱性を持つ人々が支援を利用できるかどうかという具体的な問題に対処する方法で計画する必要がある。
 4 自然災害の状況では、武力紛争の状況において適用される法である国際人道法は、武力紛争において紛争当事者の支配下にある市民が被害を受けない限り、自然災害の状況には適用されない。このような例外的な状況は、活動ガイドラインの対象外である。

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 3.保護とは何か

  定義

機関間常設委員会(IASC)によれば、保護は次のとおり定義される。
「関連する法(すなわち、人権法、国際人道法および難民法)の文言と精神に従い、個人の権利の完全な尊重を確保するためのすべての活動」5
保護に関する活動には、対応、修復または環境構築に関するものがある。すなわち、差し迫った人権侵害または現在進行中の人権侵害を防ぐという「対応型」、過去の侵害に対する補償(例えば、裁判、賠償または回復の機会)を行うという「修復型」、人権の尊重を推進し、将来の侵害を防ぐのに必要な法的および制度的な枠組み、能力および意識を構築するという「環境構築型」である6
 5 「国内避難民の保護に関するIASC の方針(IASC IDP Protection Policy)」(1999年)を参照。この定義は、1999年開催の赤十字国際委員会(ICRC)の保護に関するワークショップで採択された。
 6 「国内避難民の保護に関するIASC の方針」(1999年)、グローバル・プロテクション・クラスター作業グループ「国内避難民の保護のためのハンドブック(Handbook for the Protection of Internally Displaced Persons)」(2010年3月)7 頁を参照。

  保護実施者とその義務

こうした保護の定義は、国際人権法が国家に課している4つの義務の観点から考える必要がある。その義務とは、「人権の尊重」、すなわち、積極的な人権侵害を避けること、「人権の保護」、すなわち、他者によってまたは状況によって生じる脅威に対して被害者に代わって対応し、防御策を講じること、「人権の充足」、すなわち、人々が人権を完全に享受するのに必要な物資とサービスを提供すること、そして「差別することなく」これらの義務を全うすることである。

これらの義務は、時間の流れの点では、国家にとって特に次の義務を意味する。(a)人権侵害の発生の防止または再発の防止、(b)人権侵害が行われているときには、国家機関および当局による当該権利の尊重を確保し、また国家機関および当局が第三者によってまたは自然災害等の状況によって生じる脅威から被害者を保護することを確保し、人権侵害を止める、(c)人権侵害が起こった後の賠償および完全な回復の保障。

当局の責任を遂行する能力または意思が不十分である場合には、国家の取り組みを支援し、補完する上で国際社会が重要な役割を果たす。多くの自然災害の規模と複雑性に鑑みれば、特別の専門的技能・知識および資源を持った国連内外の組織の積極的な関与が必要となる。

人道的支援および開発に携わる組織は、特に市民的および政治的な権利を中心とした人権の保障に取り組んでおり、その取り組みは「危害を与えない」(“Do Not Harm”)7という原則に具体化されている。また、食料、水、衛生環境、住居、保健医療サービスおよび教育を含めた人道的支援を行うことによって、これらの組織は、経済的、社会的および文化的な権利を充足する上でも重要な役割を果たしている。しかし、人道的物資の供給および人道的サービスの提供は被災者の人権の享受に大きく貢献するものの、それ自体はさほど保護活動であるとはいえない。具体的に将来の人権侵害を防いだり、現在進行中の人権侵害を止めたり、過去の人権侵害に対する補償をしたりすることを目的とする限りにおいて、保護活動となるのである。
従って、人道支援活動の中での保護の概念は、国際人権法の下での被災者の権利が差別されることなく尊重され、保護されおよび充足されることに関して人道的支援および(復旧・復興における)開発に携わる組織・関係者が果たす役割と理解される。
 7 この概念に関しては、「付属資料I:用語集」を参照。

  実際の保護

保護とはつまり人権を保障することであるが、この抽象的な概念をより具体的に示すには、これまでの経験から保護に関する課題を引き出すのが有効である。保護に関する課題は、特に次のような状況から生じる。すなわち、人々が被害を被ったりまたは放置されたりする状況、既存の人道的物資・サービスの入手・利用機会が打ち切られる状況、権利を無視・侵害された人々が権利を主張する可能性を閉ざされたりまたはその権利を妨害されたりする状況、そして差別を受ける状況である。実際の問題になぞらえるなら、保護活動は次のように分類できる。

  1.  危害:人権の保障に反して人々にもたらされる、または過失によって人々に生じる(過去、現在または未来の)危害に対処する活動。
  2.  入手・利用機会(アクセス)の欠如:支援を必要とする人々が、人権によって守られた物資とサービス(適切な食料、水、衛生環境、住居、保健医療サービスおよび教育等)を利用できることを確保し、その入手・利用機会の妨げとなっている障害をなくすための活動。
  3.  自己の権利の主張が不可能なまたは阻止される状況:権利が侵害された場合に、人々が自らの権利を行使し、主張できることを確保するための活動。また、特に次の場合において権利を主張する能力を強化しようとする活動。
    1. 権利を侵害された人々に影響を与える決定事項およびそれらの人々の権利に関する情報提供、協議および参加機会の欠如
    2. 書類の欠如
    3. 侵害に対する効果的な救済(裁判所の利用および自らの権利の侵害に対する賠償を含む)の欠如
    4. 権利侵害に対する説明責任の欠如
  4.  差別:人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的なおよびその他の意見、民族的もしくは社会的出身、財産、障がい、出生、年齢またはその他の地位を理由として、人々が選別的に危害を受け、利用機会を拒否され、権利を主張する機会を奪われ、またはその他の不利を被ることがないこと、すなわち、人々が差別されないことを確保するための活動。
こうした保護活動に厳密にはどのようなものが含まれるのかは、実際の状況、機会および制約条件に大きく左右されるが、主だった保護手段には次のものがある。
  1.  状況の監視および関連する保護の課題の特定、ニーズに基づいた保護活動の優先順位の決定
  2.  関連する利害関係者への働きかけ(非公開または公開で)
  3.  関連する利害関係者、被災者および被災コミュニティの能力向上
  4.  被災者に対する直接的な保護の実施(例えば、被災地からの避難を希望している人々の移送、ジェンダーに基づく暴力行為の防止・減少を目的としたキャンプおよび集団避難施設の給水場所・衛生エリアの照明設置、人権侵害の被害者に対する法的支援)

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 4.活動ガイドラインの目的および適用範囲

  対象者および目的

活動ガイドラインは、主に、国際組織、非政府の人道的組織およびIASC のメンバー組織が、災害救援と復旧・復興活動が被災者の人権保護・推進の枠組みの中で行われ、かつ、当該活動が被災者の人権を促進することを確保するにあたり、それらの組織を支援するものである。具体的には、次のことを目的としている。
  •  できる限り早い段階から、人権の諸原則および保護の基準(非差別の基本原則を含む)が災害対応および復旧・復興のすべての活動に組み込まれることを確保する。
  •  人権の原則に従い、災害対応のすべての段階において、できる限り被災者および被災コミュニティが全面的に協議を受け、積極的に参加できることを確保するための関連する対策を特定する。
  •  自然災害時における人道的基準に関する既存のガイドラインを補完する(取って代わるものではない)。
  •  人権法の下で政府が被災者に対して負う義務について政府と対話を始める際に、人道支援組織にその基盤を提供する。
活動ガイドラインは、政府組織のうち、被災者に対して保護および人道的支援を提供することに主要な責任を有する組織、特に災害管理に携わる組織にとっても有用であると思われる。さらに、ガイドラインは、国内の法令および政策を啓発するものとなるかもしれない。

活動ガイドラインは、また、自然災害の被害を受けた国の市民社会にとっても有用なものとなるかもしれない。

  適用範囲

この活動ガイドラインは、自然災害時における対応および復旧・復興を対象とする。活動ガイドラインは、災害に対する事前準備およびリスク軽減自体を扱うものではないが、事前準備についての可能な対策は、適切と考えられる箇所で言及している。さらに、活動ガイドラインは、保護に関する課題を災害の事前準備の政策および戦略の中に導入するためにも使うことができる。具体的には、国および地方のレベルで、研修活動の推進、災害管理、人権活動に関与する組織の能力構築、法的および制度的枠組みの改善、緊急対応計画を通じてという形である。

活動ガイドラインは、自然災害時における人道支援活動を導く重要な諸原則を詳述したものであり、特定の状況下におけるそれらの原則の実施についての現場の具体的な活動例を示すものである。提示された活動は網羅的ではなく例示的なものであり、付属資料III に記載されたより詳細な指針に取って代わるものではない。活動ガイドラインに含まれる活動は、次のことを目的とする。
  •  危害を防止し、阻止する。
  •  被災者が、関連する物資、サービスおよび各種機会の入手・利用機会(アクセス)を有することを確保する。
  •  被災者が自らの権利を主張できることを確保する。
  •  差別を回避し、または差別と闘う。
活動ガイドラインは、関連する国際人権法、人道支援活動に関する既存の基準および政策ならびに自然災害時における人道的基準に関する人権ガイドラインに啓発を受け、またこれらから導き出されたものである8。しかしながら、活動ガイドラインは、国際法に規定される人々の権利をリストアップするものではない。活動ガイドラインはむしろ、自然災害の状況において、人道支援活動における権利に基づくアプローチを実施するため、人道支援組織はどのような活動基準によって導かれるべきであるかに着目する9。活動ガイドラインは、突発的な自然災害の影響を想定して作られたものであるが、ガイドラインの大部分は、遅発的な災害等、それ以外の災害への準備または事後対応にも関連するものである。
 8 活動ガイドラインは、可能な限り適切な、十分に多様な普遍的人権文書、関連する地域間の人権条約、「国内強制移動に関する指導原則(Guiding Principles on Internal Displacement)」、スフィア・プロジェクト「災害対応における人道憲章と最低基準(Humanitarian Charter and Minimum Standards in Disaster Response)(スフィア・ハンドブック(Sphere Handbook))」、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)「行動規範(Code of Conduct)」等のその他の基準に基づいている。
 9 国連の国際法委員会は現在、自然災害時の救援における国家の追加的責任に関する基準の準備作業を進めており、この作業は人道的組織が緊急の課題として求めている指針への対応と同時進行で行われている。

  活動ガイドラインの構成

活動ガイドラインは、最初にいくつかの一般的な原則を提示する。被災者の人権保護に関連する重要原則は、実際の問題になぞらえ、次の4つの章に分けて説明する。
  1.  生命、安全および身体の健全性の保護ならびに避難の際の家族の関係の保護に関する権利の保護。これらの保障は、災害が生じる間においてすでに、またその直後において特に関連する市民的および政治的な権利である10。その中でも、安全および身体の健全性に対する権利は、災害対応の中で特に重要である(例えば、ジェンダーに基づく暴力行為の文脈において)。
  2.  食料、保健医療、住居および教育の提供に関する権利の保護。これらの社会的な権利11は、災害の生存者が特に緊急段階の間において、また必要に応じてその後の段階において人命救助の人道的支援を受けることを確保するためのものである。
  3.  住居、土地、財産および生計手段に関する権利の保護。これらは、緊急段階が過ぎ、復旧・復興活動が開始したときに特に関連性を増す経済的、社会的および文化的な権利である。
  4.  文書、避難者の持続的な解決の中での移動の自由、家族の関係の再構築、表現および言論ならびに選挙に関する権利の保護。これらは、復旧・復興段階が長期化するに伴い重要性を増す市民的および政治的な権利である。
従って、活動ガイドラインの利用者は、最初の緊急段階の間においてはカテゴリーA とカテゴリーB を参照し、その後の段階に入ったときにカテゴリーCとカテゴリーDを参照すると良いだろう。しかし、本章で扱われているすべての権利を完全に尊重することによってのみ、自然災害の被災者の人権は適切に保護できる。すべての人権は、普遍的かつ不可分であり、相互に依存し関連し合っている12。従って、活動ガイドラインの構成は、関連する権利の間に階層があることを示すものではなく、むしろ災害のある段階に関連する権利を速やかに特定するためのものである。
 10 これらの権利は、国際的なレベルでは主に「市民的および政治的権利に関する国際規約」(1966年)に規定されている。
 11 これらの権利は、主に「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(1966年)に規定されている。
 12 ウィーンで開催された世界人権会議で採択された「ウィーン宣言および行動計画(Vienna Declaration and Programme of Action)」(国連文書A/CONF.157/23、1993年7月12日)を参照。

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