トップ  避難者無償住宅問題  イベント情報  資料集  ブログ(外部リンク)
トップ資料集
 ◆ 国内強制移動に関する指導原則 日本語版
(2010年10月)

pdfで読む (原文〈英語〉含む)

国内強制移動に関する指導原則

目次

序 範囲および目的
第一部 一般原則(原則1~原則4)
第二部 強制移動からの保護に関する原則(原則5~原則9)
第三部 強制移動が継続する間の保護に関する原則(原則10~原則23)
第四部 人道的援助に関する原則(原則24~原則27)
第五部 帰還、再定住および再統合に関する原則(原則28~原則30)



 範囲および目的

1.これらの指導原則は、世界各地に存在する国内避難民の具体的な必要に対処するものである。これらの指導原則は、強制移動からの人々の保護に関連する権利および保障ならびに強制移動が継続する間ならびに帰還または再定住および再統合の過程における人々の保護および援助に関連する権利および保障を特定する。

2.これらの原則の適用上、国内避難民とは、特に武力紛争、一般化した暴力の状況、人権侵害もしくは自然もしくは人為的災害の影響の結果として、またはこれらの影響を避けるため、自らの住居もしくは常居所地から逃れもしくは離れることを強いられまたは余儀なくされた者またはこれらの者の集団であって、国際的に承認された国境を越えていないものをいう。

3.これらの原則は、国際人権法および国際人道法を反映し、かつ、これらの法と合致しているものである。これらの原則は、次のものに対して指針を示す。

 (a) 国内避難民に関する事務総長代表(自らの職務の遂行にあたって)
 (b) 国家(国内強制移動の現象に直面した場合)
 (c) その他のすべての当局、集団および個人(国内避難民との関係において)
 (d) 政府間組織および非政府組織(国内強制移動に対処する場合)

4.これらの指導原則は、できる限り広い範囲において周知が図られ、かつ、適用されるべきである。

 ページトップ

第一部 一般原則

 原則 1

1.国内避難民は、十分平等に、自国において他の者が享受するものと同一の国際法および国内法上の権利および自由を享受する。国内避難民は、国内避難民であることを理由として、いかなる権利および自由の享受においても差別されてはならない。

2.これらの原則は、特にジェノサイド、人道に対する犯罪および戦争犯罪に関して、国際法上の個人の刑事責任に影響を及ぼすものではない。

 原則 2

1.これらの原則は、自らの法的地位のいかんを問わず、すべての当局、集団および個人によって遵守されるものとし、また、いかなる不利な差別もすることなく適用されるものとする。これらの原則の遵守は、関係するいかなる当局、集団または個人の法的地位にも影響を及ぼすものではない。

2.これらの原則は、国際人権法もしくは国際人道法のいかなる文書の規定をも、または国内法により個人に与えられる権利を、制限し、変更しまたは侵害するものと解釈してはならない。特に、これらの原則は、他国に庇護を求め、かつ、他国においてこれを享受する権利を害するものではない。

 原則 3

1.国家当局は、その管轄内にある国内避難民に対して保護および人道的援助を与える第一義的な義務および責任を負う。

2.国内避難民は、国家当局に対して保護および人道的援助を要請し、かつ、国家当局からこれらを受ける権利を有する。国内避難民は、そのような要請を行うことにより迫害されまたは処罰されてはならない。

 原則 4

1.これらの原則は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教もしくは信念、政治的もしくはその他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、法的もしくは社会的地位、年齢、障がい、財産、出生等のいかなる種類の差別または他のいかなる類似の基準による差別もすることなく適用されるものとする。

2.児童(特に保護者のいない未成年者)、妊娠中の母親、幼い児童を持つ母親、女性世帯主、障がいのある者および高齢者等一部の国内避難民は、自らの状態が必要とする保護および援助ならびに自らの特別の必要を考慮した待遇を受ける権利を有する。

 ページトップ

第二部 強制移動からの保護に関する原則

 原則 5

 すべての当局および国際的な主体は、人々の強制移動につながるような状態を防止しおよび回避するため、すべての場合において、人権法および人道法を含む国際法上の義務を尊重し、かつ、その尊重を確保する。

 原則 6

1.すべての人は、自らの住居または常居所地からの恣意的な強制移動から保護される権利を有する。

2.恣意的な強制移動の禁止には、次の場合における強制移動を含む。

 (a) 強制移動が、影響を受ける住民の民族的、宗教的もしくは人種的構成を変更することを目的とするまたは変更する結果となるアパルトヘイト、「民族浄化」もしくは類似の慣行の政策に基づく場合

 (b) 武力紛争の状況においては、強制移動が、関係する文民の安全または絶対的な軍事上の理由のために必要とされない場合(c)やむを得ないかつ優先的な公共の利益によって正当化されない大規模開発事業の場合(d)災害においては、被災者の避難が自らの安全および健康のために必要とされない場合(e)強制移動が集団に科する刑罰として用いられる場合

3.強制移動は、状況によって必要とされる期間を超えて継続してはならない。

 原則 7

1.関係当局は、人々の強制移動を伴うあらゆる決定の前に、強制移動を全面的に回避するため、すべての実行可能な代替案が検討されることを確保する。代替案がない場合には、強制移動およびその悪影響を最小限にとどめるため、すべての措置がとられるものとする。

2.強制移動を実施しようとする当局は、最大限実行可能な限り、強制移動の対象者に対して適切な施設が設けられること、強制移動が安全、栄養、保健および衛生について満足すべき条件で行われることならびに同一家族の構成員が離散しないことを確保する。

3.強制移動が武力紛争および災害の緊急段階の間以外の状況において行われる場合には、次の保障が満たされるものとする。

 (a) 明確な決定が、強制移動に関する措置を命じる権限を法によって付与された国家当局によって行われること。
 (b) 強制移動の理由および手続について、ならびに該当する場合には補償および移転について、十分な情報を強制移動の対象者に対して保障するための適切な措置がとられること。
 (c) 強制移動の対象者の自由なかつ情報を与えられた上での同意が求められること。
 (d) 関係当局は、移転の計画策定および管理運営に当事者(特に女性)を関与させるよう努めること。
 (e) 必要とされる場合には、法の執行措置が権限のある司法当局によって実施されること。
 (f) 効果的な救済措置(これらの決定についての適切な司法当局による再審理を含む。)に対する権利が尊重されること。

 原則 8

 強制移動は、生命、尊厳、自由および安全に対する当事者の権利を害する方法で実施されてはならない。

 原則 9

 国家は、自らの土地に対して特別の依存性およびつながりを有する先住民、少数者、小作農、牧畜民およびその他の集団の強制移動を防止する特別の義務を負う。

 ページトップ

第三部 強制移動が継続する間の保護に関する原則

 原則 10

1.すべての人は、生命に対する固有の権利を有し、この権利は法によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。国内避難民は、特に次の行為から保護される。
 (a) ジェノサイド
 (b) 殺人
 (c) 略式または恣意的処刑
 (d) 死の脅迫を伴うまたは死に至らしめる強制失踪(誘拐または非公認の抑留を含む。)

前記のいずれかの行為を行うとの脅迫および扇動は、禁止する。

2.敵対行為に参加せずまたはもはや参加しない国内避難民に対する攻撃またはその他の暴力行為は、すべての場合において、禁止する。国内避難民は、特に次の行為から保護される。

 (a) 直接的もしくは無差別な攻撃またはその他の暴力行為(文民への攻撃が許可される区域の創設を含む。)
 (b) 戦闘の方法として飢餓の状態に置くこと。
 (c) 軍事目標を攻撃から掩護しまたは軍事行動を掩護し、有利にしもしくは妨げるための国内避難民の利用
 (d) 国内避難民のキャンプまたは居住地に対する攻撃
 (e) 対人地雷の使用

 原則 11

1.すべての人は、尊厳ならびに身体的、精神的および道徳的に健全であることに対する権利を有する。

2.国内避難民は、自らの自由が制限されているか否かにかかわらず、特に次の行為から保護される。

 (a) 強姦、身体の切断、拷問、残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰およびその他の個人の尊厳に対する侵害(例えば、ジェンダーに基づく暴力行為、強制売春およびあらゆる形態の強制わいせつ行為)

 (b) 奴隷の状態に置くことまたはあらゆる現代的形態の奴隷制(例えば、婚姻への人身売買、性的搾取または児童の強制労働)

 (c) 国内避難民の間に恐怖を広めることを目的とする暴力行為前記のいずれかの行為を行うとの脅迫および扇動は、禁止する。

 原則 12

1.すべての人は、身体の自由および安全に対する権利を有する。何人も、恣意的に逮捕されまたは抑留されない。

2.この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、国内避難民は、キャンプに収容されまたは監禁されてはならない。そのような収容または監禁が例外的な状況において絶対的に必要である場合には、これらは、当該状況によって必要とされる期間を超えて継続してはならない。

3.国内避難民は、自らの強制移動の結果としての差別的な逮捕および抑留から保護される。

4.国内避難民は、いかなる場合においても、人質にとられてはならない。

 原則 13

1.避難民の児童は、いかなる場合においても、徴集されまたは敵対行為への参加を要求されもしくは許可されてはならない。

2.国内避難民は、自らの強制移動の結果として軍隊または武装集団に徴集される差別的な慣行から保護される。特に、徴集への服従を強要するまたは徴集への不服従を処罰する残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つけるいかなる慣行も、すべての場合において、禁止する。

 原則 14

1.すべての国内避難民は、移動の自由および居住選択の自由に対する権利を有する。

2.特に、国内避難民は、キャンプまたはその他の居住地の内外を自由に移動する権利を有する。

 原則 15

 国内避難民は、次の権利を有する。

 (a) 国内の他の場所に安全を求める権利
 (b) 自国を離れる権利
 (c) 他国に庇護を求める権利
 (d) 自らの生命、安全、自由もしくは健康が危険にさらされるおそれのあるあらゆる場所への強制送還または当該場所における再定住から保護される権利

 原則 16

1.すべての国内避難民は、行方不明の親族の消息および所在を知る権利を有する。

2.関係当局は、行方不明であると報告された国内避難民の消息および所在を明確にするよう努めるものとし、また、この任務に従事する関連する国際的な組織に協力する。関係当局は、近親者に対して調査の進捗状況を伝達し、かつ、あるゆる結果を通知する。

3.関係当局は、死亡者の遺体を収容しおよびその身元を特定し、その破損または切断を防止し、ならびに近親者への遺体の返還を容易にしまたは遺体を丁重に処理するよう努める。

4.国内避難民の墓地は、すべての場合において、保護され、かつ、尊重されるべきである。国内避難民は、死亡した親族の墓地に立ち入る権利を有するべきである。

 原則 17

1.すべての人は、自らの家族生活を尊重される権利を有する。

2.この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、共にいることを希望する家族の構成員は、これが許可される。

3.強制移動によって離散した家族は、できる限り速やかに再会が可能となるべきである。特に児童が関係する場合には、離散家族の再会を迅速に実現するため、すべての適切な措置がとられるものとする。責任当局は、家族による捜索を容易にするものとし、また、家族再会の任務に従事する人道的組織の活動を奨励し、かつ、これに協力する。

4.キャンプにおける収容または監禁によって個人の自由を制限された国内避難民の家族の構成員は、共にいる権利を有する。

 原則 18

1.すべての国内避難民は、適切な生活水準に対する権利を有する。

2.管轄当局は、状況のいかんを問わず、かつ、差別することなく、少なくとも、国内避難民に対して次のものを与え、かつ、これらを安全に得ることを確保する。

 (a) 不可欠の食糧および飲料水
 (b) 基本的な避難所および住宅
 (c) 適切な衣類
 (d) 不可欠の医療サービスおよび衛生設備

3.これらの基本的な物資の計画策定および配給への女性の完全な参加を確保するため、特別の努力がなされるべきである。

 原則 19

1.国内避難民で、すべての傷者、病者および障がいのある者は、最大限実行可能な限り、かつ、できる限り速やかに、医療上の理由以外のいかなる理由によっても差別されることなく、自らが必要とする医療上の看護および手当を受ける。国内避難民は、必要な場合には、心理学的および社会的サービスを利用することができる。

2.女性が有する健康上の必要(リプロダクティブ・ヘルス等女性のための保健に関する提供者およびサービスを利用する機会ならびに性的およびその他の虐待の犠牲者のための適切なカウンセリングを受ける機会を含む。)に対して特別の配慮がなされるべきである。

3.国内避難民の間における接触伝染病および感染症(エイズを含む。)の予防に対しても特別の配慮がなされるべきである。

 原則 20

1.すべての人は、すべての場所において、法の前に人として認められる権利を有する。

2.この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、関係当局は、国内避難民に対し、自らの法的権利の享受および行使に必要なすべての書類(例えば、旅券、本人確認用の書類、出生証明書および婚姻証明書)を発行する。特に、当局は、新規書類の発行または強制移動の途中において紛失した書類の再発行について、これらまたはその他の必要書類を取得するために常居所がある地域に戻ることを要求する等の不合理な条件を課すことなく、容易なものとする。

3.女性および男性は、それらの必要書類を取得する平等の権利を有し、かつ、自己の名義で必要書類の発行を受ける権利を有する。

 原則 21

1.何人も、恣意的に財産および所有物を奪われない。

2.国内避難民の財産および所有物は、特に次の行為から、すべての場合において、保護される。

 (a) 略奪
 (b) 直接的もしくは無差別な攻撃またはその他の暴力行為
 (c) 軍事行動または目標を掩護するために用いられること。
 (d) 報復の対象にされること。
 (e) 集団に科する刑罰として破壊されまたは没収されること。

3.国内避難民が残置した財産および所有物は、破壊および恣意的かつ違法な没収、占拠または使用から保護されるべきである。

 原則 22

1.国内避難民は、キャンプに居住しているか否かにかかわらず、自らの強制移動の結果として、次の権利の享受において差別されてはならない。

 (a) 思想、良心、宗教または信念、意見および表現の自由に対する権利
 (b) 雇用の機会を自由に求める権利および経済活動に参加する権利
 (c) 自由に結社する権利および共同体の事項に平等に参加する権利
 (d) 投票する権利ならびに政府および公共の事項に参加する権利(この権利の行使に必要な手段を与えられる権利を含む。)
 (e) 自らが理解する言語で意思疎通を図る権利

 原則 23

1.すべての人は、教育を受ける権利を有する。

2.この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、関係当局は、国内避難民(特に避難民の児童)が教育を受けることを確保するものとし、その教育は初等段階において無償かつ義務的なものとする。教育は、国内避難民の文化的アイデンティティ、言語および宗教を尊重するべきである。

3.教育プログラムへの女性および未成年の女性の完全かつ平等な参加を確保するため、特別の努力がなされるべきである。

4.教育および訓練の施設については、条件が許す限り速やかに、キャンプに居住しているか否かにかかわらず国内避難民(特に未成年者および女性)にとって利用可能なものとする。

 ページトップ

第四部 人道的援助に関する原則

 原則 24

1.すべての人道的援助は、人道および公平性の諸原則に従い、かつ、差別することなく実施される。

2.国内避難民に対する人道的援助は、特に政治的または軍事的理由のために転用されてはならない。

 原則 25

1.国内避難民に対して人道的援助を与える第一義的な義務および責任は、国家当局に帰属する。

2.国際的な人道的組織およびその他の適切な主体は、国内避難民を支援するために役務の提供を申し出る権利を有する。そのような申出は、非友好的な行為または国家の内政への介入と認められず、また、誠実に検討されるものとする。特に関係当局が必要とされる人道的援助を与える能力または意思を有しない場合には、その申出に対する同意は恣意的に保留されてはならない。

3.すべての関係当局は、人道的援助の自由な通行を許可しおよび容易にするものとし、また、人道的援助の提供に従事する者に対し、国内避難民への迅速なかつ妨げられることのない接触の機会を許可する。

 原則 26

人道的援助に従事する者、これらの者の移動およびその物資は、尊重され、かつ、保護される。これらを攻撃またはその他の暴力行為の対象としてはならない。

 原則 27

1.国際的な人道的組織およびその他の適切な主体は、援助を提供する場合には、国内避難民の保護上の必要および人権に妥当な考慮を払い、かつ、これに関して適切な措置をとるべきである。これらの組織および主体は、その際に、関連する国際的な基準および行動規範を尊重するべきである。

2.前項は、保護の職務を有する国際的な組織の保護責任に影響を及ぼすものではなく、これらの組織の役務の提供が申し出されることまたはその役務が国家によって要請されることがある。

 ページトップ

第五部 帰還、再定住および再統合に関する原則

 原則 28

1.管轄当局は、国内避難民が自らの意思によって、安全に、かつ、尊厳をもって自らの住居もしくは常居所地に帰還することまたは自らの意思によって国内の他の場所に再定住することを可能にする条件を確立し、かつ、その手段を与える第一義的な義務および責任を負う。管轄当局は、帰還しまたは再定住した国内避難民の再統合を容易にするよう努める。

2.自らの帰還または再定住および再統合の計画策定および管理運営への国内避難民の完全な参加を確保するため、特別の努力がなされるべきである。

 原則 29

1.自らの住居もしくは常居所地に帰還しまたは国内の他の場所に再定住した国内避難民は、移動を強いられていた結果として差別されてはならない。
これらの国内避難民は、すべての段階における公共の事項に完全かつ平等に参加する権利を有するものとし、また、公共サービスを利用する平等の機会を有する。

2.管轄当局は、帰還しまたは再定住した国内避難民に対してこれらの国内避難民が強制移動の際に残置しまたは奪われた自らの財産および所有物を可能な限り回復することを支援する義務および責任を負う。それらの財産および所有物の回復が不可能な場合には、管轄当局は、これらの国内避難民に対して適切な補償または他の形態の適正な賠償を与え、またはこれらを取得することを支援する。

 原則 30

すべての関係当局は、国際的な人道的組織およびその他の適切な主体に対し、それらの組織および主体のそれぞれの職務の遂行にあたり、国内避難民の帰還または再定住および再統合を支援するための国内避難民への迅速なかつ妨げられることのない接触の機会を許可しおよび容易にする。

 ページトップ
Copyright (C) 2017 うつくしま☆ふくしまin京都 All Rights Reserved. すべてのコンテンツの無断使用・転載を禁じます。