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★ 原告準備書面(21) ―中間指針追補および同第二次追補の位置づけについて― 
 第6 被告東京電力の主張(準備書面(1)・62,63頁)に対する反論 
2015〔平成27〕年9月18日

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第6 被告東京電力の主張(準備書面(1)・62,63頁)に対する反論
 1 健康被害のリスクが十分に低いという主張に対する反論
 2 政府の避難指示等による避難ではないから低額であっても合理的であるとする主張に対する反論



第6 被告東京電力の主張(準備書面(1)・61,62頁)に対する反論


 1 健康被害のリスクが十分に低いという主張に対する反論

 被告東京電力は,政府による避難指示等の基準となった年間20ミリシーベルトという基準がICRPが提言する「緊急時被ばく状況の参考レベルの範囲のうち,安全性の観点から最も厳しい値」をとったものであり,「被ばくによる発がんリスクとの関係において相当厳格な基準となっている。」と主張する。
 そして,「政府による避難区域の設定に当たっては,放射線被ばくによる被害が発生しないよう極めて慎重な基準が採用されていることからすれば,・・・自主的避難等対象区域における被ばくによる発がんリスクはそもそも非常に低いものということができ(る)」と主張している(被告東京電力共通準備書面(1)・61,62頁)。
 しかし,原告準備書面9・31頁以下および原告準備書面18・5頁以下で述べたように,ICRPの示す参考レベルは,国内法に導入されている概念ですらないばかりか,個人によって容認できない線量である国内法における線量限度とは全く異なる概念であって,個々人の避難行為の相当性を判断する要素とはならない。
 しかも,被告東京電力の上記主張は,20ミリシーベルトを下限として表現している以上,現在もなお緊急被ばく状況が続いているという前提に立っていると理解せざるを得ないが,被告東京電力の主張には,現在は現存被ばく状況にあると理解される内容も散見され,全体として整合しない。

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 2 政府の避難指示等による避難ではないから低額であっても合理的であるとする主張に対する反論

  (1) 被告東京電力の主張

 被告東京電力は,中間指針追補及び同第二次追補が,政府指示に基づきその意思にかかわらず避難を余儀なくされたものではない自主的避難等対象者に対する賠償基準を,避難指示を受けた避難等対象者より低額としたことを相当と評価し,裁判においても,自主的避難者の損害は,避難等対象者よりも低額とすることに合理性があるとの立場に立つようである。

  (2) 裁判では,相当因果関係ある損害が賠償されるべきこと

 言うまでもなく,賠償すべき損害の範囲に関する裁判上の基準は相当因果関係の有無である。政府による避難指示等の有無にかかわらず,一般人を基準とした社会通念に基づく判断として,避難することが合理的であると認められる場合には,避難によって生じた損害が賠償されなければならない。政府による避難指示等が一切なかった場合における損害賠償を想定すれば,あまりにも当然の論理であり,これが本来の出発点である。
 政府による避難指示を受けたことは損害の評価においても重要ではなく,避難指示の有無にかかわらず,本質的には同等の損害を被っているといえる。確かに,避難指示等があった場合には,着の身着のままで避難した場合が多く,また地元コミュニティーの破壊の程度がより深刻である等の傾向はあるかも知れない。しかし,区域外避難者は,避難等対象者よりも政府等による支援が乏しいことや,“自主的避難”とされることに起因する軋轢にも苦しめられているから,避難指示の有無によって一概にいずれの被害が重い等とは評価し得ないものである。
 従って,区域内避難者に対する賠償よりも,区域外避難者の賠償を「低くする」という視点に立つことは誤りである。
 中間指針等が区域外避難者の賠償額基準を避難等対象者より低くしたことは,その行政上の指針である性質を考慮しても,必ずしも適切だったとは評価し得ない。ましてや,このような区別が,裁判基準としても合理的であるとは到底言えないものである。

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