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目 次(←準備書面(9)の目次に戻ります) 第5 WGでの議論過程は,避難(継続)の相当性を根拠づけること 1 はじめに 2 避難の社会的相当性を裏付ける議論過程 3 内部被ばくの問題 第5 WGでの議論過程は,避難(継続)の相当性を根拠づけること −議論過程を黙殺し恣意的にまとめられた報告書の問題性― 1 はじめに 本準備書面第4で述べたとおり,WG報告書は,その内容自体多くの問題を含んでいるが,特に最後のまとめ方が極めて恣意的であり,それまでの議論過程のうち,放射線被ばくの危険性を重視する側の意見を排除している。 しかし,ワーキンググループにおける議論過程では,原告らの準備書面(3)における主張,すなわち,国際的に採用されているLNT仮説に基づき,あらゆる低線量被ばくにはリスクがあり,少なくとも,公衆被ばく線量限度1mSvを超える地域を生活圏内に含む場合には,避難に社会的相当性があるという主張を裏付ける説明が数多く行われている。それゆえ,WG報告書は,議論過程を踏まえれば,むしろ原告らの主張する避難の社会的相当性を裏付けるものとも評価できる。同時に,20mSvという線量を「社会的に許容される水準である」とする被告東京電力の主張が明らかな誤りであることも容易に判断できる。 そもそも報告書は,それのみで文意を十分理解できるものではない。8回に渡ってなされた議論も踏まえ理解されるべきものであり,それらを踏まえれば,避難(を継続)しようと考えることは極めて合理的である。 また,8回に渡ってなされた議論のうち重要な部分が報告書において恣意的に省略されていることにより,却って国民の不信感を買うことは明らかであり,その例として,内部被ばくに関するワーキンググループの議論とWG報告書の相違について指摘しておくこととする。 △ページトップへ 2 避難の社会的相当性を裏付ける議論過程 (1) LNT仮説に関する知見 WG報告書は,そのまとめにおいて, 「放射線防護の観点からは,100 ミリシーベルト以下の低線量被ばくであっても,被ばく線量に対して直線的にリスクが増加するという安全サイドに立った考え方に基づき,被ばくによるリスクを低減するための措置を採用するべきである。」として,LNT仮説を積極的に採用している(甲共D35・19頁)。 ここで,WG報告書は「安全サイドに立った考え方に基づき」としているが,第7回ワーキングループにおいて,WG構成員である佐々木康人氏は,「安全サイドに立った考え方」にとどまらず,むしろ,100mSv以下の被ばくリスクについて,LNT仮説が科学的な視点からみても合理的であるとICRPも述べている,と説明している(甲共D46の1・第7回議事録・37頁)。 「そこは気をつけないといけないのは,100mSvのことはわかっていないという言い方そのものが非常に問題だと思うのですが,100mSv以下を直線で考えるということにいろいろ異論はあるけれども,しかし,直線的に考えるということは,現在のさまざまな今までの科学的な知見から判断しても,もっともであると。そんなに間違ったことではないということは,ICRPがパブリケーション99で詳しく述べているわけです。ですから,そこのところのリスクは,今までの科学的ないろいろな議論からの推定であっても,そんなに間違っていることではない・・・」第4回ワーキンググループでも,甲斐倫明氏が,次のとおり,低線量被ばくリスクについて,1mSv以下の被ばくでもリスクがあり,1mSvをしきい値のように扱うことも国際的に考えられないと説明している(甲共D43の1・第4回議事録・31頁)。 「今日お伝えしたように,健康リスク上の判断というのは,リスクがどの線量であっても,2ミリであっても,5ミリであっても,1ミリ,0.5ミリであっても,それに応じた非常に低いリスクであってもリスクがあるという考え方にたっていますから,他のリスクを考えながらリスクを下げるということ。1ミリを閾値のように扱うことは,国際的には考えられないだろうと思います。」このように,ワーキンググループにおける議論は,ICRPが科学的知見から判断してLNT仮説を妥当であり,1mSvをしきい値のように扱うことが国際的に考えられないと説明されている。これらの説明は,国際的にもLNT仮説が採用されているという原告らの主張を裏付けるものである。 (2) 公衆被ばく線量限度を超える被ばくは容認されないとする説明 公衆被ばく線量限度を超える被ばくを公衆が容認できないものであることについても,ワーキンググループの議論過程で述べられている。 すなわち,まず,第2回ワーキンググループにおいて,WG構成員である佐々木康人氏は,公衆被ばく線量限度を超える被ばくを公衆は容認できないこと,線量限度を守ればいいというわけではなく,それ以下でもリスクはあり,線量限度以下であっても無用な被ばくをさせないように努力しなければならないと説明している(甲共D41の1・第2回議事録・35頁)。 「それで公衆の被ばく,これもいろんな考え方が,一つだけではないんですが,限度として,公衆の被ばく限度を定めなければならない状況になった時に,職業人の約10分の1にしましょうということから,1mSv,年間1mSvが出てきております。これは,平時の線量限度であります。これは仮に100年生きたとしますと生涯で100mSvになります。そのくらいであれば,もちろん確定的影響も起こらないし,それから先ほど申し上げましたように,発がんのはっきりとしたデータも無いくらいの線量であって,これは公衆でも容認できるのではないか。こういう考えに基づいています。これはあくまでも,平時の線量限度でありまして,その線量限度を守ればいいというわけではなくて,その上でさらにできるのであれば,無用な被ばくを起こさないようにしよう。それは何らかのリスクはやっぱり低い線量でもあるので,それは少しでも下げましょう。そういう努力をいつもやりましょうというのが,ALARAの精神,あるいは最適化の精神であります。」第4回ワーキンググループでも,甲斐倫明氏が,次のとおり,1mSvは安全基準ではなく,ICRPも1mSvまで被ばくしてもいいとは決して考えていないことを述べている(甲共D43の1・第4回議事録・30頁)。 「通常1ミリというのがどこから出てきたのかというと,もともと,線源を管理している状態でこれを例えば病院を運営する,原子力発電所を運転するということで,放射性物質をコントロールしながら使う,ある意味で,管理を厳格に行うがことがしやすく,線源をコントロールができる。その中で,より厳しく使うための上限値として国際機関としては1ミリというのが提唱されてきた。しかし,計画被ばく,通常の原子力発電所であったり,通常の病院であったりしても1ミリまで被ばくしてもいいとは考えていません。現に,日本の原子力発電所の通常時の目標というのは50マイクロシーベルトが使われている。1ミリを安全基準として考えているわけではない。あくまでもリスクとして,リスクを下げるという考え方をとっている。」これらの説明は,公衆が年間1mSvを超えて被ばくすることを容認できないという原告らの主張を裏付けるものである。 それと同時に,これらの説明をみれば,20mSvという線量が「社会的に許容される水準である」とする被告東京電力の主張が誤りであることも明白である。 △ページトップへ 3 内部被ばくの問題 本準備書面第2で紹介したとおり,WG報告書は,内部被ばくに関して, 「内部被ばくは外部被ばくよりも人体への影響が大きいという主張がある。しかし,放射性物質が身体の外部にあっても内部にあっても,それが発する放射線がDNAを損傷し,損傷を受けたDNAの修復過程での突然変異が,がん発生の原因となる。そのため,臓器に付与される等価線量が同じであれば,外部被ばくと内部被ばくのリスクは,同等と評価できる」としたうえで,欄外に小さな字で 「放射線の感受性を定めるに当たっては,性と年齢について平均化して検討している。そのため,実際のリスク値は,子どもの方が高い等の変動を含みうる。」と注釈をつけている(甲共D35・同5頁)。 しかし,ワーキンググループの第7回の会議では,以下のようなやりとりが行われている(甲共D46の1・第7回議事録・39頁〜40頁)。 「(細野大臣)上記のやりとりにおいて,内部被ばくについての評価には,まだまだ不確実な点が多いこと,数値を算定するうえでかなり幅が認められる(誤差があること),それにも拘わらず1mSvと10mSvに大差はないという発想がWG構成員(丹羽氏)のものであることが明らかになっている。 これと対比すれば,報告書の記載があまりに雑駁な整理であって,誤解を招きやすいことは明らかである。 この内部被ばくの問題に象徴されるように,WG報告書は,それのみで文意を十分理解できるものではなく,8回に渡ってなされた議論も踏まえて理解されるべきものである。そして,その議論過程も踏まえて報告書を理解したとき,8回に渡ってなされた議論のうち重要な部分が報告書において恣意的に省略されていることは,却って国民の不信感を買うことは明らかである。 △ページトップへ 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 〒612-0066 京都市伏見区桃山羽柴長吉中町55−1 コーポ桃山105号 市民測定所内 Tel:090-1907-9210(上野) Fax:0774-21-1798 E-mail:shien_kyoto@yahoo.co.jp Blog:http://shienkyoto.exblog.jp/ |
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