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★ 準備書面(26) ―結果回避措置について― 
 第2 目的・検証対象 
平成28年1月28日

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第2 目的・検証対象

 最終報告書は、福島第一原発事故の直接の原因は、(1)地震によって外部電源が喪失し、(2)津波で、地下の非常用ディーゼル発電機と配電盤が水没し使用できなくなり、全交流電源喪失が生じた、(3)一部の号機は蓄電器も水没し直流電源も喪失した、(4)海水系冷却設備(最終排熱系)も原子炉建屋外にあり津波で破損したため、炉心を冷却できなかったことと総括し、福島第一原発の炉心損傷の直接の原因を、「全交流電源の喪失」、「直流電源の喪失」、「最終排熱系の破損」の3つが同時に生じたことであると結論づけた(甲A16-1)。失敗学会は、これを元に、炉心溶融を回避するための必要最小限度の対策を検討した。
 なお、検討の際には、命題1の津波予測(甲B57:失敗学会の中間報告書[2])との関係で、予測時期から防衛策を講じるまでの時間的猶予を2〜3年と設定し、2〜3年で実行可能な対策に限定し考察している。また、事故前における対策という観点から、本件原発事故後に判明した情報を排除して考察した。
 以上より、命題2の条件は、(1)直流電源、交流電源、最終排熱系の3つを確保すること、(2)3.11以前に知り得た事情からの対策であること、(3)2―3年で実行可能であること、(4)これらの対策により炉心溶融事故を防げることを示すこと、とされている。
以下、最終報告書より、福島第一原発の冷却設備と電源設備について説明し(第3)、全交流電源喪失状態から、冷温停止状態に復旧するまでのシナリオ及びそれに必要な施設を概説する(第4)。

[2] 甲B57は、(1)1997〜1998年の七省庁による「地域防災計画における津波対策強化の手引き」に基づく2000年の東電予測「解析の不確かさ上限の2倍では10mの津波水位(海水ポンプ位置での浸水高さ)と予測され、6mで海水ポンプが停止する」との報告書を提出した。(2)1999年に、国土庁等が福島第一原発の津波浸水予測図を示し、タービン建屋側で4-5mの浸水予測となっていたこと。(3)2002年の文科省・地震調査研究推進本部が「福島沖の更に沖合を含む日本海溝沿いのどこかで、M8.2の大地震が起きる確率は今後30年以内に20%」との見解に基づき、2008年に東電は「福島原発で15.7mの津波(浸水高さ)が予測される」という結果を得ていたこと。(4)2009年初めに東電が貞観津波の波源で計算した結果によると、標準手法で計算すれば敷地高を超える津波が予測されていた。ことから津波高を予見可能とした。したがって、失敗学会は(遅くとも)2009年には予見可能との結論をもとに回避措置を検討した。

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