TOP    裁判資料    会報「原告と共に」   げんこくだより   ブログ   リンク

★ 準備書面(26) ―結果回避措置について― 
 第3 福島第一原発の冷却設備と発電設備 
平成28年1月28日

目 次(←クリックすると準備書面(26)の目次に戻ります)

第3 福島第一原発の冷却設備と発電設備
 1 冷却設備
 2 電源設備



第3 福島第一原発の冷却設備と発電設備


 1 冷却設備

  (1)原子炉冷却系の全体像

 下記の図は、原子炉冷却系の全体像を示したものである。

[上図 甲A2 資料編10に加筆/下図 甲A2 資料編11に加筆]【図省略】

  (2)原子炉停止後2時間以内の冷却-IC、RCIC、HPCI

  ア 非常用復水器(IC)
 福島第一原発1号機には、非常時に原子炉が主冷却系から隔離された場合の代替冷却システムである非常用復水器(IC)が設置されている。非常用復水器(IC)は、動力を必要とせず自然循環で冷却することができ、冷却水が枯渇するまで、14時間程度の運転が可能になる。また、復水器に給水すれば冷却を継続できる。IC内の冷却水は沸騰/蒸発し、外部に排気される(甲A16-5)。

[甲A2資料編-72]【図省略】

  イ 原子炉隔離時冷却系(RCIC)
 1号機のICの代わりに、2〜5号機には原子炉隔離時冷却系(RCIC)が設置されている。RCIC は、何らかの原因で給水系が停止した場合等に、原子炉水位異常低下信号によって起動し、圧力容器から発生する蒸気の一部を用いるタービン駆動ポンプにより、蒸気として失われた冷却材を原子炉に補給し炉心を冷却する。RCIC は、水源として復水貯蔵タンクの水を使用するが、S/C(サプレッションチェンバー/圧力抑制プール)の水を水源とすることも可能である(甲A2-23)。

[甲A2資料編-73]【図省略】

  ウ 高圧注水系(HPCI)
 全号機に非常用炉心冷却システムとして高圧注水系(HPCI)が設置されている。HPCIは、蒸気タービン駆動の高圧ポンプにより原子炉に冷却水を高圧で注水して炉心を冷却する。通常は、水源として復水貯蔵タンクの水を使用するが、S/Cの水を水源とすることも可能である(甲A2-24)。原子炉が高圧状態でも注水でき、時間当たりの注水量も大きい。今回の福島原発事故では3号機のみ稼働した。

[甲A2資料編74]【図省略】

 △ページトップへ

  (3)最終排熱系[3](SHC(1号機)、RHR(2〜5号機))

 RCIC及びHPCIは、復水貯蔵タンク乃至S/C内の水を循環させて冷却するシステムであるから、熱を格納容器から外部に逃がすことができず、崩壊熱が徐々に系全体の水を温めるため、いつまでも原子炉を冷やし続けることはできない(「閉じた系」)。また、ICも復水器内の冷却水が蒸発し大気中に排気されるため、冷却水の枯渇により14時間程度で停止する(甲A16-5)。
 そこで、海水をポンプで汲み上げ熱交換を行い、海中に排熱する最終排熱系の稼働が必要になる。最終排熱系として、1号機にはSHC(原子炉停止時冷却系)が、2〜5号機にはRHR(残留熱除去系)のSHCモード(原子炉停止時冷却モード)がある。

[3] 原告ら準備書面(10)20頁以下における「崩壊熱除去系」と同じ意味で用いる。

  ア SHC(原子炉停止時冷却系)
 SHC(原子炉停止時冷却系 1号機)は福島第一1号機のみの専用設備で、原子炉を停止した後、冷却材(炉水)を熱交換器にて冷却し、崩壊熱を除去するための設備である(乙B3の2東電「福島原子力事故調報告書添付資料」参考5(9/22)p554)。原子炉圧力容器内の炉水は、原子炉停止時冷却系熱交換器、原子炉補機冷却系、熱交換器、補器冷却系海水ポンプを介し、海水と熱交換する(別紙:福島第一1号機系統概略図 参照)。


  イ RHR(残留熱除去系)
 RHR(残留熱除去系 2〜5号機)は、原子炉を停止した後、ポンプや熱交換機を利用して冷却材の冷却(燃料の崩壊熱の除去)、及び、非常時に冷却水を注入して炉水を維持する系統(非常用炉心冷却系ECCSのひとつ)であり、原子炉を冷温停止に持ち込む能力を有している。ポンプ流量・熱交換機ともに能力が高く、以下の運転方法(モード)を有する。(1)がSHCと同じく最終排熱系の機能を有する。(乙B3の2:東電事故調添付資料参考5(8/22)p553)

 (1)原子炉停止時冷却(SHC)モード
 (2)低圧注水モード (ECCS)
 (3)格納容器スプレイモード
 (4)圧力抑制室冷却モード
 (5)非常時熱負荷モード

RHRの熱交換器を除熱するために海水を供給する冷却用海水ポンプが残留熱除去系ポンプである。RHR を冷却する系統が残留熱除去海水系(RHRS)である(甲A2-25、A2-資料編75)。

[甲A16-7]【図省略】

  (4)各冷却設備が機能する時間

 最終報告書によれば、冷却系の停止後、崩壊熱により1時間で圧力容器内の水が蒸発し燃料が露出する。そこで、1号機では、原子炉停止後2時間以内[4]にIC又はHPCIを、その他の号機では、RCIC又はHPCIを作動させる必要がある(甲A16-2)。
 前述のように、1号機は、非常用復水器(IC)により14時間程度の冷却が可能である(復水器に給水できれば更に長時間の冷却が可能 甲A16-5)。2号機〜5号機の原子炉隔離時冷却系(RCIC)、及び、高圧注水系(HPCI)は半日程度しか冷却機能を維持できない(甲A16-3)。
 したがって、IC等による冷却を維持しながら、最終的にはSHC、RHRにより排熱する必要がある。

[4] 最終報告書は、原子炉停止後津波到来前の1時間は冷却系が機能していたとする。


 2 電源設備

 原子力発電所内は、通常は自ら発電した電力を使用するが、発電が停止した場合には外部電源を利用し、外部電源も喪失したときには非常用ディーゼル発電機を利用する。交流電源、直流電源は、冷却設備を稼働させるために必要不可欠である。
 ここで、原子炉隔離時冷却系(RCIC)、及び、高圧注水系(HPCI)の作動(制御と弁操作)には250Vの直流電源が、海水ポンプ(最終排熱の際に海水を循環させるために必要)には6900Vの交流電源が必要である。
 非常用復水器(IC)の操作には、480Vの交流電源又は、直流電源が必要である(甲A16-5)

[甲A16-15、図A2]【図省略】

 △ページトップへ

原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
  〒612-0066 京都市伏見区桃山羽柴長吉中町55−1 コーポ桃山105号 市民測定所内
   Tel:090-1907-9210(上野)  Fax:0774-21-1798
   E-mail:shien_kyoto@yahoo.co.jp  Blog:http://shienkyoto.exblog.jp/
Copyright (C) 2017 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 All Rights Reserved. すべてのコンテンツの無断使用・転載を禁じます。