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★ 準備書面(10) ―シビアアクシデント対策2― 
 第2 シビアアクシデント対策(結果回避措置) 
平成26年12月25日

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第2 シビアアクシデント対策(結果回避措置)
 1 電源対策
 2 崩壊熱除去系
 3 シビアアクシデント対策をとり得た具体的契機



第2 シビアアクシデント対策(結果回避措置)

 前項で述べたとおり,本件事故を回避するためのシビアアクシデント対策は,電源対策(「直流電源」「交流電源の復旧」)及び「崩壊熱除去系」(最終ヒートシンク)である。
 以下,これらについて論ずる。

 1 電源対策

  (1) 電源対策とは

 平成24年3月14日,原子力安全委員会(平成24年9月に原子力規制委員会に移行)原子炉安全基準・指針専門部会安全設計審査指針等検討小委員会は,SBOに関する検討報告書「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針及び関連指針類に反映させるべき事項について(とりまとめ)」を公表した。
 同報告書が指摘するSBO対策は,福島第一原発事故を踏まえたものであり,同様の対策が事故前になされていれば福島第一原発事故を回避できたものである(甲C40-7:発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針及び関連の指針類に反映させるべき事項について(とりまとめ))。
 同報告書は,「今後のSBO対策の基本的な考え方」として「SBOが発生した際には,原子炉を安全に停止し,停止後の冷却を確保し,かつ,復旧できること。」(同5頁)を挙げ,以上の「考え方」を具体化するものとして下記要求事項を挙げる。
  1. 長時間のSBOの想定ならびに代替交流電源の設置
     長時間のSBOを想定し,このときに原子炉施設が基本的「考え方」を満足する設計であること。また,このための方策として代替交流電源を設置すること。
  2. 原子炉施設の設計上の想定を超える事象に対する代替交流電源の性能
     代替交流電源は,既設の非常用所内電源設備に対して配置等による高い独立性を有するよう配置し,想定を超える外部事象や内部事象に対して一定の頑健性を有するものであること。

  (2) 新規制基準に盛り込まれた対策

 上記原子力安全員会の報告を踏まえ,原子力規制委員会発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チームは電源確保対策をまとめた。
 同チームは,「基本的要求事項」として,「電源喪失を伴う事故が発生した場合,炉心の著しい損傷を防止し,格納容器の破損を防止し,使用済燃料貯蔵プールの燃料の損傷を防止し,及び原子炉停止中に燃料の損傷を防止するために必要となる電力を確保する設備,手順等を整備すること。」を挙げた。また,それを具体化したものとして,24時間供給可能な恒設の直流電源の備蓄をおこなうこと(バッテリー対策),さらに(事故後)24時間以内に可搬式代替電源を供給できるように要求している。また,配電盤(MCC,P/C,MC)に対し,共通原因故障対策を要求している(甲C41-28,29)。

2.重大事故対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)
(15)電源確保対策

【基本的要求事項】
電源喪失を伴う事故が発生した場合、炉心の著しい損傷を防止し、格納容器の破損を防止し、使用済燃料貯蔵プールの燃料の損傷を防止し、及び原子炉停止中に燃料の損傷を防止するために必要となる電力を確保する設備、手順等を整備すること。

【要求事項の詳細】
A  「必要となる電力を確保する設備、手順等」とは、以下に規定する措置又はこれと同等以上の効果を有する措置を行うための設備、手順等をいう。
 
(代替電源設備)
B 重大事故防止設備は、設計基準事故対処設備に対して、独立性を有し、位置的分散を図ること。
(a)  重大事故防止設備は、設計基準事故対処設備に対して、独立性を有し、位置的分散を図ること。
(b)  可搬式代替電源(例、電源車、バッテリ)を配備すること。
(c)  恒設代替電源として交流電源及び直流電源を設置すること。
 
(所内直流電源の容量)
(a)  所内恒設蓄電式直流電源設備は、負荷切り離しを行わずに8時間、電気の供給が可能であること。ただし、「負荷切り離しを行わずに」には、中央制御室又は隣接する電気室等において簡易な操作で負荷の切り離しを行う場合を含まない。加えて、必要な負荷以外を切り離して残り16時間の合計24時間にわたり、電気の供給を行うことが可能であること。
(b)  24時間にわたり、事故の対応に必要な設備に電気の供給を行うことが可能である可搬式直流電源設備を整備すること。
(c)  更なる信頼性を向上するため、負荷切り離し(中央制御室又は隣接する電気室等において簡易な操作で負荷の切り離しを行う場合を含まない)を行わずに8時間、加えて、必要な負荷以外を切り離して残り16時間の合計24時間にわたり、事故の対応に必要な設備に電気の供給を行うことが可能であるもう1系統の特に高い信頼性を有する所内恒設直流電源設備(3系統目)を整備すること。
(d)  所内直流電源設備から給電できる24時間内に十分な余裕を持って可搬式代替電源を繋ぎ込み、給電開始できること。
 
(電力融通)
C  複数号機設置されている発電所では、号機間の電力融通を行えるようにしておくこと。
(a)  予め電気ケーブル等を敷設し、手動で接続できること。
(b)  敷設した電気ケーブル等が利用できない状況に備え、予備の電気ケーブル等を用意すること。
 
(所内電気設備)
D  所内電気設備(モーターコントロールセンター(MCC)、パワーセンター(P/C)、金属閉鎖配電盤(メタクラ)(MC)等)は、共通要因で機能を失うことなく、少なくとも一系統は機能の維持及び人の接近性の確保を図ること。

[甲C41-28,29:新規制基準(重大事故対策)骨子]

  (3) 被告東電の事故後の電源対策

 被告東電は,再稼働を申請した柏崎刈羽原発において,SBOに備え以下の電源対策を行うものとしている(甲A6 添付資料3-1,161乃至166)。
 (1)全電源喪失時の冷却系の維持のための,可搬式蓄電池,代替ポンプ,予備ボンベの配備,既設蓄電池の容量増加
 (2)電源設備の代替手段の確保のための可搬式電源(電源車,電源設備の高所化,蓄電池強化)の設置

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 2 崩壊熱除去系

  (1) 崩壊熱除去系とは(甲A2:政府事故調中間報告12〜13)

 炉心に制御棒を挿入して原子炉を停止させた場合においても,燃料棒内に残存する多量の放射性物質の崩壊により発熱が続く。これを崩壊熱(decay heat)又は残留熱(residual heat)という。従って,原子炉停止後も,燃料の破損を防止するために炉心の冷却を続ける必要がある。そこで,原子炉施設には通常の給水系の他に様々な注水系が備えられている。かかる注水系は,原子炉で発生する蒸気を駆動源とするタービン駆動ポンプ又は電動ポンプにより,原子炉へ注水する。
 福島第一原発の各号機に設置されている原子炉冷却機能を有する主な設備は,以下のとおりである。

  (1) 1号機
1号機には,原子炉冷却機能を有する主な設備として,炉心スプレイ系(CS)2系統,非常用復水器(IC)2系統,高圧注水系(HPCI)1系統,原子炉停止時冷却系(SHC)1系統及び格納容器冷却系(CCS)2系統が設置されている。
 「CS」とは,何らかの原因により冷却材喪失事故によって炉心が露出した場合に,燃料の過熱による燃料及び被覆管の破損を防ぐために,圧力抑制室(S/C)内の水を水源として,炉心上に取り付けられたノズルから燃料にスプレイすることによって,炉心を冷却する設備である。
 「IC」とは,主蒸気管が破断するなどして主復水器が利用できない場合に,圧力容器内の蒸気を非常用の復水器タンクにより水へ凝縮させ,その水を炉内に戻すことによって,ポンプを用いずに炉心を冷却する設備である。最終的な熱の逃し先は大気である。
 「HPCI」とは,配管破断等を原因として冷却材喪失事故が発生したような場合に,圧力容器から発生する蒸気の一部を用いるタービン駆動ポンプにより,復水貯蔵タンク又はS/C内の水を水源として,圧力容器内へ注水することによって炉心を冷却する設備である。
 「SHC」とは,原子炉停止後,炉心の崩壊熱並びに圧力容器及び冷却材中の保有熱を除去して,原子炉を冷却する設備である。
 「CCS」とは,冷却喪失事故が発生した際に,S/C内の水を水源として,格納容器内にスプレイすることによって,格納容器を冷却する設備である。

  (2) 2号機から5号機
 2号機乃至5号機には,原子炉冷却機能を有する主な設備として,前記CS2系統及びHPCI1系統のほか,原子炉隔離時冷却系(RCIC)1系統及び残留熱除去系(RHR)2系統が設置されている。
 「RCIC」とは,原子炉停止後に何らかの原因で給水系が停止した場合等に,圧力容器から発生する蒸気の一部を用いるタービン駆動ポンプにより,復水貯蔵タンク又はS/C内の水を水源として,蒸気として失われた冷却材を原子炉に補給し,炉心を冷却する設備である。
 「RHR」とは,原子炉停止時の残留熱の除去を目的とする ので,弁の切替操作により使用モードを変え,「SHC」,低圧注水系(LPCI)及びCCSとして利用できるようになっている。

 崩壊熱除去系は,以上の冷却系のうち,原子炉停止時の残留熱の除去を目的とする「SHC」(原子炉停止時冷却系:1号機)及び「RHR」(残留熱除去系:2乃至3号機)をいう。これらは,原子炉停止時の崩壊熱を,海水との熱交換によって海に排出する仕組みである。これらが機能することにより,冷温停止が実現する。
 したがって,原子炉停止後崩壊熱を除去し冷温停止させるためには,崩壊熱除去系設備が維持され,熱を海に排出するまでの設備が機能しなくてはならない。海への熱排出の仕組みを「最終ヒートシンク」という。

[甲A3-129:政府事故調最終報告]【図省略】

[甲A3-政府事故調中間報告資料編II-8]【図省略】

  (2) 福島第一原発事故における崩壊熱除去系の損傷

 崩壊熱除去系は,海水ポンプによる水循環により熱交換を行い,熱を海水に放出する仕組みである。したがって,海水ポンプを作動させ続けるには,海水ポンプ自体の健全性と,ポンプを動かす電源が確保されていなければならない。福島第一原発事故では,海水ポンプが津波に被水し損傷し,また,電源も損傷した。
 他方,福島第二原発においても,3号機南側を除き,非常用海水ポンプは浸水(又は電源盤の浸水)のため機能を喪失した。しかし,外部電源1回線が損傷を免れたため,非常用海水ポンプの部品(モーター)交換と電源敷設により,残留熱除去運転に移行し,全機において冷温停止が実現した(甲A1-180〜185:国会事故調)。
以下,被告東電及び被告国による本件事故を踏まえた最終ヒートシンク対策について述べる。

[甲A3-135政府事故調最終報告]【図省略】

  (3) 新規制基準における崩壊熱除去系に対する要求事項

 前述の原子力規制委員会発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チームは,シビアアクシデント時における崩壊熱除去系の対策(最終ヒートシンク対策)をまとめた。同チームは「基本的要求事項」として,「最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統(UHSS)の機能が喪失した場合に,炉心の著しい損傷を防止し,あるいは炉心損傷前の段階での格納容器の破損を防止するため, 当該機能を復旧,代替する等して最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する設備,手順等を整備すること。」とし,その詳細として,「重大事故防止設備の多重性又は多様性及び独立性を有し,かつ,位置的分散を図る」こと並びに「取水機能の喪失及び残留熱除去系(RHR)の使用が不可能な場合」についても対策を講ずることを要求事項としている(甲C41-18)。

 2.重大事故対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)
 (7)事故時の重大事故防止対策における最終ヒートシンク(UHS)確保対策
【基本的要求事項】

 最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統(UHSS)の機能が喪失した場合に、炉心の著しい損傷を防止し、あるいは炉心損傷前の段階での格納容器の破損を防止するため、当該機能を復旧、代替する等して最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する設備、手順等を整備すること。
【要求事項の詳細】
A  「最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する設備、手順等」とは、以下に規定する措置又はこれと同等以上の効果を有する措置を行うための設備、手順等をいう。
(a)  炉心損傷を防止するため、重大事故防止設備等を整備すること。
(b)  重大事故防止設備は、設計基準事故対処設備に対して、多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図ること。
(c)  取水機能の喪失により最終ヒートシンクが喪失することを想定した上で、BWRにおいては、サプレッションプールへの熱の蓄積により、原子炉冷却機能が確保できる一定の期間内に、十分な余裕を持って所内車載代替UHSSの繋ぎ込み及び最終的な熱の逃がし場への熱の輸送ができること。加えて、残留熱除去系(RHR)の使用が不可能な場合について考慮すること。
 また、PWRにおいては、タービン動補助給水ポンプ及び主蒸気逃がし弁による2次系からの除熱により、最終的な熱の逃がし場への熱の輸送ができること。
(d)  フィルタ・ベントを整備する場合は、2.(9)A(a)を準用すること。また、その使用に際しては、敷地境界での線量評価を行うこと。

[甲C41-18:新規制基準(重大事故対策)骨子]

  (4) 事故後の被告東電の対策

 被告東電は,柏崎刈谷原発における最終ヒートシンク対策(下図「原子炉循環冷却」)として,非常用海水ポンプに対して,可搬設備である,海水ポンプ予備モータ,代替水中ポンプ,及び,代替熱交換器を準備して,崩壊熱除去系損傷時にも対応することとした(甲A6 添付資料3-1)。

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 3 シビアアクシデント対策をとり得た具体的契機

 原告準備書面(8)において,SA対策(含SBO対策)の知見の進展に関する詳細な主張を行ったが,被告らがSA対策の必要性を認識し得た契機を具体的回避措置に即して再論する。

  (1) 電源対策について

  ア 米国SBO規則の策定
 米国では,原子力規制委員会(NRC)が,昭和63(1988)年に,「SBO 規則」(10CFR50.63)を定めた。SBO規則においては,SBOの継続時間を,(1)所内非常用交流電源の多重性,(2)所内非常用交流電源の信頼性,(3)外部電源喪失に関して予想される発生頻度,(4)外部電源を復旧するために必要な時間に基づくことを前提として,各軽水炉はその継続時間に耐え復旧できなければならないとした。
 また,規制指針(Regulatory Guide)1.155 SBOを発行し,各プラントの設計状況により,2時間,4時間,6時間,8時間,又は,16時間(後に72時間を追加)の耐性を持つように要求されることとなった(甲A3-323頁:「政府事故調最終報告」)。

  イ 仏ルブレイエ原発事故
 平成11(1999年)12月,フランス,ルブレイエ原子力発電所において,洪水による電源喪失事故が起きた(INESレベル2の事故)。
 被告東電は,同事故に関し,「洪水防止壁は最大潮位を考慮していたが,これに加わる波の動的影響を考慮していなかったために防止壁が押し流されたことが原因であり,国内の施設の設計では津波,高潮等について最も過酷と考えられる条件を考慮していることを確認していた。この分析では,事故が生じた原因のみに着目し,洪水が全電源喪失を容易に引き起こすという結果,そしてどのような対策が実施されたのかに着目していなかった」と総括している(甲A5-13)。


  ウ 馬鞍山原発事故
 平成13(2001)年3月18日 台湾第三原子力発電所(馬鞍山原子力発電所)は,塩霧害を原因とする送電線事故により外部電源喪失事故が発生し,更に非常用ディーゼル発電機の起動失敗が重なったため,全交流電源喪失事故となった(甲C18)。
 被告東電は,総括文において,同事例において「事故が生じた原因のみに着目し,全交流電源喪失が生じた場合の影響や採られた対策に着目しなかった。背後要因も,ルブレイエ原子力発電所の分析結果と同様である。」と総括している(甲A5-14頁)。

  エ 米国同時多発テロ後の対策
 平成13(2001)年の同時多発テロを受け,平成14(2002)年2月,NRCは,事業者に対し,暫定保障措置命令(Order for Interim Safeguards and Security Compensatory Measures)を発出した(甲A3-326頁)。
 上記命令の第「B.5.b」節は,設計基準を超えた航空機衝突を含め,あらゆる要因による大火災や大爆発により,施設に大きな損傷を受けた場合に対処するため,炉心冷却,格納容器閉じ込め機能,使用済燃料プールの冷却能力を保ち又は回復するために,容易に利用可能なリソースを使った緩和方策を採用するよう要求するものであった(甲A3-327頁)。
 被告東電は,事故後の総括文の中で,以下の通り述べ,「B.5.b」に示された対策を行えば事故を(少なくとも)緩和できた可能性を認めている。
 「米国では9・11テロ以降,2002年に米国原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission)よりテロ対策を実施するよう命令が出された。今回の事故対応において現場で緊急に行われた消防車による注水,仮設バッテリーによる水位計や主蒸気逃がし安全弁の機能回復等の作業は,テロ対策で要求された対策と極めて類似したものであった。したがって,もし当社においても予め同様の対策が実施されていれば,事故の進展を少しでも緩和できた可能性がある(甲A5-12)。」

  オ 溢水勉強会
 保安院,及び,原子力安全基盤機構(JNES)は,平成18年1月,「溢水勉強会」を立ち上げ,内部溢水及び外部溢水に関する原子力施設の設計上の脆弱性の問題を検討した。
 平成18年5月11日,被告東京電力は,溢水勉強会にて,代表プラントとして選ばれた福島第一原発5号機について,第5号機の敷地高さO.P.+13mよりも1メートル高い,(1)O.P.+14m,及び,設計水位であるO.P.+5.6mとO.P.+14mの中間である,(2)O.P.+10mを,津波水位と仮定し,津波水位による機器影響評価を報告した(甲B18:溢水勉強会第3回での東電報告書)。
 被告東電は,この報告書にて,O.P.+14mの津波,すなわち5号機の敷地高を超える津波が生じた場合には,海側に面した,T/B(タービン建屋)大物搬入路,及び,S/B(サービス建屋)入口から海水が浸水し,非常用海水ポンプが使用不能に陥ることを報告した。(非常用海水ポンプが使用不能になれば,原子炉を冷却できなくなり炉心損傷(メルトダウン)に至る。)
 また,この場合,T/Bの各エリアに浸水し,電源設備の機能を喪失する(全電源喪失)可能性があること,さらに,電源の喪失に伴い,原子炉の安全停止に関わる電動機,弁等の動的な機器が機能を停止すると報告した。

  (2) 最終ヒートシンク対策について

  ア インド・マドラス原発事故
 平成16(2004)年12月,スマトラ沖津波が原因で,インド・マドラス原子力発電所の非常用海水ポンプが浸水し運転不能になった。
 しかし,被告東電は,同事故が海水ポンプを除いてプラント被害がなく,INESレベル0であることから,検討の対象としなかった。
 被告東電は,総括文において,『当時「原子力発電所の津波評価技術」による津波高さの評価結果が十分保守性を有していると考えていたため直ちに対策は実施されず,長期的な対応としてポンプ・モーターの水密化の検討に取り組んでいた。しかしながら,本情報については海水ポンプの機能喪失という原因だけへの対策ではなく,最終ヒートシンクの喪失という結果への対策という観点から着目すべき事故であった。』と総括した(甲A5-14)。

  イ 溢水勉強会
 上記,「溢水勉強会」において,被告東電は,O.P.+14mの津波,すなわち5号機の敷地高を超える津波が生じた場合には,海側に面した,T/B(タービン建屋)大物搬入路,及び,S/B(サービス建屋)入口から海水が浸水すること,及び非常用海水ポンプが使用不能に陥ることを報告した。すなわち最終ヒートシンクが喪失する危険性を認識していたのである。

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