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目 次(←クリックすると準備書面(23)の目次に戻ります) 第2 SA対策に関するIAEA報告書の内容 1 設計基準を超える事故とアクシデントマネジメントの評価 2 被告国の規制の不備(甲A15-57〜61) 3 結論―省令制定権限不行使の違法、規制的行政指導の不作為の違法 第2 SA対策に関するIAEA報告書の内容 次に、シビアクシデント対策についてIAEA報告書の指摘する問題点を示す。 1 設計基準を超える事故とアクシデントマネジメントの評価 福島第一事故当時のIAEA安全基準[8]は、全ての通常運転モード、事故状態、及びシビアアクシデントを含む設計基準を超える事故の場合に安全機能を遂行できるかどうかを判断するため、評価を実施することを求めていた。これらの評価手法として確率論的手法、決定論的手法、及び適切な工学的判断を併用して、シビアアクシデントにつながる可能性がある重要事象シーケンスを特定する必要がある。また、事故対策を改善するために使用できる想定事故シナリオを研究するため、設計基準を超える事故の具体的・決定論的分析を実施する必要がある。 しかし、福島第一原子力発電所には、IAEA安全基準が規定する確率論的安全評価を行わず、設計基準を超える事故が十分に考慮されていなかったため、炉心の冷却を維持する能力、重要な安全パラメータを監視する運転員の能力、及びシビアアクシデント状態の管理に影響を及ぼした(甲A15−54〜58)。 【甲A15−57】【図省略】 [8] 引用されている安全基準「IAEA Safety Standards Series No. NS-G-2.15」の内容については原告準備書面(17)「第3」参照 △ページトップへ 2 被告国の規制の不備(甲A15-57〜61) 規制当局による、設計基準を超える事故に関する規制要件の範囲は限定されていた。 (1)IAEA報告書の見解 IAEA報告書は、原子力安全委員会が1992(平成4)年にアクシデントマネジメントに関する指針[9]を発出し、同年には通商産業省(MITI)がアクシデントマネジメントのロードマップを発表し[10]、電気事業者に対し当初の設計で考慮していたものより重大な事故に対処するための措置を取るよう求めたが、事業者による限られた自主的活動にとどまったことを問題点として指摘した。 また、IAEA報告書は、2007(平成19)年6月のIAEA総合規制評価サービス(IRRS)ミッションが、日本の規制当局に対する評価として、「日本の発電所は、予防措置によって確保されているとおり十分に安全であるとみなされているため、設計基準を超える[事故]の考慮に関する法的規制はない」と結論づけたことを問題点として指摘する。例えば、日本の定期安全レビュープロセスが、電気事業者に対し最新の手法を利用して解析させることを要求していなかったこと、規制枠組みにシビアアクシデントマネジメント要件が含まれていなかったことである。そして、この点は、被告東京電力の本件福島第一原発のシビアアクシデントに対する準備不足につながったと指摘した。 ここで、IRRSミッションとは、IAEA加盟国における原子力利用に当たっての安全を確保するため、IAEAが加盟国の要請に基づき行う原子力安全に関するレビューサービスの一つである。IRRSは、加盟国の原子力規制に関し、その許認可・検査等に係る法制度や関係する組織等も含む幅広い課題について総合的なレビューを行う(甲C61-1「INTEGRATED REGULATORY REVIEW SERVICE (IRRS) TO JAPAN」(原文),甲C61-2:「(仮訳)日本に対する総合原子力安全規制評価サービス(IRRS)」)。 また、「定期安全レビュー」とは「許認可取得者と規制当局が新しい情報と現行の基準及び技術に照らして、設計と外部ハザードを再検討する公式メカニズム」である。日本では、2003年に発行された規制により、10年間隔の定期安全レビューが要求されたが対象範囲が限られており、また、外部ハザードの再検討を要求していなかった。IAEA報告書は、日本における定期安全レビューが、対象範囲が限られており、外部ハザードの再検討を要求していなかったことを、「国際的慣行と完全に一致するものではなかった」と評価している。 [9] 甲C1:「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネジメントについて」(安全委員会決定) [10] 甲C7:「アクシデントマネジメントの今後の進め方について」 (2)2007(平成19)年のIRRSミッション IAEA報告書は、「2007年の日本へのIAEAのIRRSミッションは、設計基準を超える事故に関する規制要件の必要性を提案し、原子力安全・保安院がこれらの事象の考慮に対する系統的アプローチを開発し続けること、及び確率論的安全評価とシビアアクシデントマネジメントの補完的使用について提案した[51]。」、しかし「同ミッションの提案は、この分野における更なる努力を喚起することにはつながらなかった。」と報告している。 ここで、2007年のIRRSレビューチームは、日本の規制の有効性を肯定的に評価する場合は「Good practices;良好事例」とし、他方、改善が必要な点を「Suggestions;助言」「Recommendation;勧告」としてレポートした。以下、IRRSレビューの原文より、平性年当時に指摘されていた日本の規制の問題点を示す(甲C61−1:3,48頁以下:「IAEA-NSNI-IRRS-2007/01」、甲C61−2:3,48頁以下:「(仮訳)日本に対する総合原子力安全規制評価サービス(IRRS)」)。 分野1:法制度と政府の責任しかしながら、同ミッションの提案は、規制当局により実行されず日本の原子力規制の改善につながらなかった。 なお、平成23年7月29日付東京新聞は「原子力安全・保安院が、同年に国際原子力機関(IAEA)から組織の総合的な評価を受けた際、保安院と原子力安全委員会の役割が明確でない点など問題点を指摘されたのに、好意的に評価された部分のみを和訳して公表していたこと」、すなわち意図的にIRRSの否定的評価の和訳を公表しなかったことを報道している。 【東京新聞 2011年7月29日朝刊】【図省略】 (3)国際的慣行に合致しない規制(甲A15-61) IAEA報告書は、日本の主要分野の規制と指針の一部が、事故当時の国際的慣行に一致していなかったことを指摘する。その中で、最も顕著な相違は、定期安全レビュー、ハザードの再評価、シビアアクシデントマネジメント及び安全文化に関連する規制である[52[11], 57[12], 58[13]]。 定期安全レビューは、許認可取得者と規制当局が新しい情報と現行の基準及び技術に照らして、設計と外部ハザードを再検討する公式メカニズムである。IAEA報告書は、日本では、2003(平成15)年より、10年間隔の定期安全レビューが要求されたが、対象範囲が限られており、また外部ハザードの再検討を要求していなかったことから「国際的慣行と完全に一致するものではない」と指摘している。 [11] INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY, Periodic Safety Review of Nuclear Power Plants, IAEA Safety Standards Series No. NS-G-2.10, IAEA, Vienna (2003). (This publication is superseded by SSG-25 (2013)). 原子力発電所定期安全レビュー (PDF) [12] INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY, Governmental, Legal and Regulatory Framework for Safety, IAEA Safety Standards Series No. GSR Part 1, IAEA, Vienna (2010). [政府、法律及び規制の安全に対する枠組み: http://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000117675.pdfよりダウンロード可] [13] INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY, Periodic Safety Review of Nuclear Power Plants: Experience of Member States, IAEA-TECDOC-1643, IAEA, Vienna (2010). △ページトップへ 3 結論―省令制定権限不行使の違法、規制的行政指導の不作為の違法 IAEA報告書は、定期安全レビュー、ハザードの再評価、シビアアクシデントマネジメント及び安全文化に関連する規制が国際的慣行から逸脱するものであったことを指摘している。これには、外部ハザード(原子力発電所の外部で発生する原子力発電所の安全性に脅威を与える可能性のある事象)の再検討が含まれる。 また、規制当局は平成19年にIAEAのIRRSミッションから、上記の事項を勧告されていたにもかかわらず、これを規制要件化しなかった。 これらは、規制当局の省令制定権限不行使の違法、規制的行政指導の不作為の違法を基礎付ける事実である。 △ページトップへ 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 〒612-0066 京都市伏見区桃山羽柴長吉中町55−1 コーポ桃山105号 市民測定所内 Tel:090-1907-9210(上野) Fax:0774-21-1798 E-mail:shien_kyoto@yahoo.co.jp Blog:http://shienkyoto.exblog.jp/ |
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