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★ 準備書面(18) ―因果関係論・被告東京電力共通(5)に対する反論― 
 第5 被告東京電力に対する求釈明事項 
平成27年7月1日

目 次(← クリックすると準備書面(18)の目次に戻ります)

第5 被告東京電力に対する求釈明事項
 1 参考レベルの意味について
 2 何らの責任もない住民の避難の相当性判断と緊急被ばく状況との関係
 3 緊急時避難状況における参考レベルの下限基準について
 4 ICRPの勧告する参考レベルと相当因果関係



第5 被告東京電力に対する求釈明事項


 1 参考レベルの意味について

 「参考レベルの意味」について,被告東京電力は,「緊急時被ばく状況又は現存被ばく状況において,これを上回る被ばくの発生を許す計画の策定は不適切であると判断される線量レベル」だと主張する(被告東京電力準備書面(5)・26頁)。
 しかし,この定義・説明は不明確である。
 この点,低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループの第4回会議において,甲斐倫明氏は,
「 参考レベルといいますが,国際的に参考レベルを設けて,これを超える人を下げるようにしようと,だんだん下がってくれば更に参考レベルを下げていく。つまり,最初から1ミリにしていたら,それこそ誰を優先すればいいのかということで,対応そのものが混乱する。20というのは,まず20を超える人を優先的に対応するということ,20を超えてなければ例えば10というように,徐々に参考レベルを下げることでリスクを下げていく。そういう考え方…」
「 20ミリなら被ばくしてもいいよと国際機関はどこも言っておりません。一つの目安として,20ミリを超える状況があれば20ミリ以下に下げなさいと,そこから順次下げるためのスタートとして使うということです。」
と述べており,「参考レベル」が,LNT仮説を前提として「一定期間に受ける線量がいかなるレベルを超えると考えられる人に対して『優先的に』防護措置を実施するか」という政策判断の考慮要素であることが明らかになっている。
 被告東京電力の「参考レベル」についての理解も,これと同様と考えて良いのか,明らかにされるよう求める。


 2 何らの責任もない住民の避難の相当性判断と緊急被ばく状況との関係

 被告東京電力は,計画被ばく状況時の公衆被ばく線量限度が年間1ミリシーベルトであることを認めつつ,それは計画被ばく状況のみに適用されるものであって,政府による避難指示における避難基準である年間20ミリシーベルトの基準は,このようなICRPの勧告内容の緊急時被ばく状況における下限の基準を採用したものだと主張する。
 しかし,緊急時被ばく状況を招いた原因も責任も何ら地元住民には存しない。
 それにも拘わらず,計画被ばく状況ではなく緊急時被ばく状況の基準を前提に地元住民の避難の相当性を判断すべきであると主張する根拠は何か。

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 3 緊急時避難状況における参考レベルの下限基準について

 被告東京電力は,ICRPの勧告の1つとして,
「 放射線源が制御されても汚染地域は残ることになります。国の機関は,人々が その地域を見捨てずに住み続けるように,必要な防護措置を取るはずです。この場合に,委員会は,長期間の後には放射線レベルを1ミリシーベルト/年へ低減するとして,これまでの勧告から変更することなしに現時点での参考レベル1ミリシーベルト/年〜20ミリシーベルト/年の範囲で設定することを用いることを勧告します。」
との勧告内容を紹介している(被告準備書面(5)・28頁)。
 しかし,文面から明らかなように,この勧告は1ミリシーベルトから20ミリシーベルトの範囲で判断せよと述べているのであり,被告東京電力が同準備書面の直前で述べている「20ミリシーベルトの基準は,このようなICRPの勧告内容の緊急時被ばく状況における下限の基準」であるとの主張(準備書面(5)P.27)との関係が不明確である。
 よって,被告東京電力が主張する「下限の基準」がどの時点で妥当するものなのか,年間1ミリシーベルトへの低減や参考レベル1〜20ミリシーベルトの範囲での防護措置を勧告する上記ICRP勧告との関係はどうなるのかにつき,具体的に明らかにするよう求める。


 4 ICRPの勧告する参考レベルと相当因果関係

 また,被告東京電力が紹介しているICRPの勧告は,国の機関に対して向けられたものであるところ,何故この勧告に記載された基準,しかも年間20ミリシーベルトという線量が,地元住民の避難の相当性を画する基準になるのか(勧告は,国の防護措置設定を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトの範囲と述べている)について具体的に明らかにするよう求める。

以 上

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