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★ 原告準備書面(16) ―津波補論―
 第3 被告東電による平成20年4月の津波高予測 
平成27年6月26日

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第3 被告東電による平成20年4月の津波高予測
 1 原告らの主張
 2 平成20年4月被告東電は浸水深を5.7mと予測していた
 3 被告東電は津波対策の必要性を認識していた
 4 まとめ



第3 被告東電による平成20年4月の津波高予測


 1 原告らの主張

 原告らは、平成20年6月[5]ころには、被告東電は明治三陸沖地震の断層モデルを使用した津波高シミュレーションを行い敷地北部及び南部でO.P.+13.7、O.P.+15.7との試算結果がでていた(原告ら準備書面(13)第3(3)以下)と主張した。
 また、国会事故調査報告書甲A1.84は、東電資料をもとに、この時「4号機原子炉建屋周辺は2.6mの高さで浸水すると予想された57と報告している。
 原告らは、被告らに対し上記東電資料の任意の開示を求めているが、被告東電が補助参加人として参加している株主代表訴訟(東京地裁平成24年(ワ)第6274号、以下「東電株主訴訟」という。)の補助参加人東電の準備書面、書証等(甲B47、48)より、この当時の試算結果の一部が判明したため補充して説明する。

[5] 甲B47においては、社内検討資料の作成は平成20年4月18日付である

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 2 平成20年4月 被告東電は浸水深を5.7mと予測していた

 東電株主訴訟の被告東電の準備書面(甲B47)によれば、(1)被告東電は、耐震バックチェックの過程において保安院から「長期評価の見解を踏まえ、福島県沖海溝沿い領域でも大きな津波を伴う地震が発生する可能性があることを前提とした評価の実施」が求められる可能性があった。(2)被告東電の担当部署は、社内検討のための参考材料として福島県沖海溝沿領域に明治三陸沖地震の断層モデルを置いた場合の試計算を行った。(3)この結果出来上がった資料が平成20年4月18日付「新潟県沖中越沖地震を踏まえた福島第一・第二原子力発電所の津波評価委託 第2回 打合せ資料 資料2 福島第一発電所 日本海溝寄りの想定津波の検討Rev.1」(本件においては未提出の書証)である。(4)上記資料においては敷地南側O.P+10mにおける最大津波高さはO.P.+15.707mとなり、浸水深は5.707mとなった
 被告東電の準備書面においては上記資料から、下記の図表を転載している。したがって、被告東電の主張によっても、平成20年4月段階で浸水深5.707mを予測していた。なお、従前述べた通り、平成18年の溢水勉強会においては、浸水深1mを仮定すれば、SBO及び最終ヒートシンクの喪失に至ることも明らかとなっていた。

[甲B47:東電第11準備書面15ページ別紙]【図省略】

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 3 被告東電は津波対策の必要性を認識していた

 被告東電の準備書面(甲B47-13ページ以下)によれば、平成20年9月10日被告東電は所内にて耐震バックチェックの説明会を行った。この説明会の資料「福島第一原子力発電所津波評価の概要(地震調査研究推進本部の知見の取扱)」[6]には、明治三陸沖試算の結果が添付され、さらに「上記資料には『地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると、現状より大きな津波高を評価せざるを得ない想定され、津波対策は不可避。』との記載がある。」(甲B48参照)
 以上の東電主張事実を前提とすれば、被告東電は遅くとも平成20年9月には、敷地溢水の可能性を認識し、津波対策の必要性を認識していた。

[6] 当該資料については、東京地裁係属中の株主代表訴訟において原被告間にて証拠契約が結ばれ、公開されていない。


 4 まとめ

 以上の通り、被告東電は平成20年には、敷地南側O.P+10mにおける最大津波高さがO.P.+15.707mであることのみならず、浸水深が5.707mに達することを認識し、かつ、津波対策の必要性を認識していた。

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