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★ 原告準備書面(16) ―津波補論―
 第2 長期評価についての国交省等の認識 
平成27年6月26日

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第2 長期評価についての国交省等の認識
 1 はじめに
 2 国土交通省、内閣府の「高潮・津波ハザードマップマニュアル」の策定
 3 国土交通省が想定する地震発生の切迫度



第2 長期評価についての国交省等の認識


 1 はじめに

 被告らは中央防災会議が福島県沖海溝沿いの領域について検討対象としなかったことを根拠に長期評価の信用性を否定する。これに対して原告らは、原告準備書面(13)第4、3にて反論した。以下では、さらに敷衍して反論する。


 2 国土交通省、内閣府の「高潮・津波ハザードマップマニュアル」の策定

 平成14年11月、国土交通省、内閣府及び農林水産省は、共同で「津波・高潮ハザードマップ研究会(座長:河田惠昭京都大学防災研究所巨大災害研究センター長)」を設置し、平成15年12月までに5回にわたり検討を実施した。これは、地方自治体が津波・高潮被害の危険度情報を住民に提供するための、「ハザードマップ」の作成・活用のノウハウをまとめたマニュアルを作成するための研究会である(甲B43)。
 研究会は5回の会議を経てマニュアルを取りまとめ、平成16年3月9日、国土交通省、内閣府及び農林水産省は、「津波・高潮ハザードマップマニュアル」を関係自治体等に送付した(甲B44:プレスリリース)。
 このマニュアルでは、津波・高潮災害の時間的切迫性を解説するために「長期評価」の報告結果を引用し、「三陸沖から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震)」の発生確率を「30年以内 20% 程度」と紹介している(甲B45.7)。
 すなわち、国土交通省、内閣府及び農林水産省は、長期評価を根拠として、津波・高潮ハザードマップの作成を指示しているのである。

[甲B45.7:津波・高潮ハザードマップマニュアル(案)[3]

表1.2.1 地震発生の切迫度
想定される地震 切迫度・発生確率 マグニチュード 出典
東海地震 いつ発生してもおかしくない M8.0 注1
東南海地震 今世紀前半での発生が懸念 M8.2 注2
30年以内 50%程度 - 注3
南海地震 今世紀前半での発生が懸念 M8.6 注2
30年以内 40%程度 - 注3
三陸沖から房総沖の海溝寄りの
プレート間大地震(津波地震)
30年以内 20%程度 M8.2 注4
宮城県沖地震 30年以内 90%程度 M7.5 注4
注1:中央防災会議「東海地震対策専門調査会」(平成13年12月)
注2:中央防災会議「東南海・南海地震等に関する専門調査会」(平成15年4月)
注3:地震調査研究推進本部「南海トラフの地震の長期評価について」(平成13年9月)
注4:地震調査推進本部地震調査委員会(平成14年9月)


[3] 甲B45「津波・高潮ハザードマップマニュアル(案)」は、平成15年12月16日の第5回「高潮・津波ハザードマップ研究会」の配布資料である。同案は一部修正の上成案となった。

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 3 国土交通省が想定する地震発生の切迫度

 上記、「高潮・津波ハザードマップマニュアル」の策定は平成16年3月であり、被告らが根拠とする、平成18年1月の中央防災会議「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会報告」に先行する。
 しかしながら、国土交通省は上記報告がなされた後も、長期評価に依拠して「『津波に強い東北の地域づくり検討調査』東北における沖合津波(波浪)観測網の構築検討調査 報告書」及び、「『津波に強い東北の地域づくり検討調査』 沖合津波観測情報を活用した津波減災対策検討調査 報告書」を策定した。
 さらに、国土交通省は、そのHPにおいて「津波防災のために」というページを設け、「地震発生の切迫度」という項目においては、平成14年の「長期評価」の地震の発生確率を引用している(甲B46:国土交通省HP[4])。
 すなわち、長期評価は現在でも国の施策の根拠として有効性を認められているのである。それにもかかわらず、平成14年の長期評価の信用性を否定する被告らの主張は不合理である。

[甲B46:国土交通省HP「2.2津波に対して危険な地域」]【図省略】

[4] 国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/tsunamibousai/02/index2_2.htm

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