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★ 準備書面(8) ―シビアアクシデント対策― 
 第4 SA(SBO)対策の予見義務 
平成26年11月6日

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第4 SA(SBO)対策の予見義務
 1 本件における予見の対象
 2 平成14年までに被告国,及び,被告東電に予見義務が発生した



第4 SA(SBO)対策の予見義務


 1 本件における予見の対象

 本書面「第2」において,日本においては,外的事象PSAが実施されず,外的事象に起因するシビアアクシデント対策(規制),及び,SBO対策(規制)がなされなかったことの問題点を述べた。
 本書面「第3」において,述べた事情は以下の2点に整理できる。

 (1)「外的事象に起因するSA対策(規制)の必要性」を予見する契機
 (2)「外的事象に起因するSBO対策(規制)の必要性」を予見する契機

 そして,SBOは,外的事象に起因するシビアアクシデントの主要な寄与要因と位置づけられるので,(1)は(2)を含む関係にある。


 2 平成14年までに被告国,及び,被告東電に予見義務が発生した

 平成14年4月,原子力安全・保安院(平成13年1月発足)は,「アクシデントマネジメント整備上の基本要件について」(甲C28)を策定し,他方,被告東電ら電気事業者は,同年5月に,「アクシデントマネジメント整備報告書」を被告国に提出し,日本のシビアアクシデント対策は終了する。
 しかし,国内外の知見の進展,事故事例の報告等により,遅くとも平成14年までには,被告国,及び,被告東電に,外部事象に起因するシビアアクシデント(SBOを含む)対策・規制の必要性についての予見義務が生じていた(「第2,2(6)」参照)。
平成14年までに生じた内外の知見については,次表のとおりである。

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[シビアアクシデント(SBO)対策の知見に関する略年表]
S50(1975)年  米国 原子力発電所に対する世界初の確率論的安全評価(WASH-1400)
S54(1979)年3月  スリーマイル島(TMI)2号機の事故
S60(1985)年  米国 「シビアアクシデント政策声明書」
S61(1986)年4月  チェルノブイリ4号機の事故
62(1987)年2月  米国NUREG-1150(初版)
S62(1987)年7月  国内でPSAに基づくAMの検討を開始(原子力安全委員会共通問題懇談会)
S63(1988)年  米国「SBO」規則策定
H2(1990)年2月  原子力安全委員会 中間報告(共通問題懇談会中間報告)
H3(1991)年  米国 NRCが事業者に対し,地震等の外的事象を対象とした個別プラントごとの解析(IPEEE)の実施を指示
H3(1991)年3月  安全委員会 全交流電源喪失WGにてSBOの調査検討
H4(1992)年5月  原子力安全委員会決定(共通問題懇談会最終報告) 「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」
H4(1992)年7月  通商産業省公益事業部長通達 「アクシデントマネジメントの今後の進め方について」 電気事業者に対し,PSAの実施,AM整備の検討,報告を要請
H6(1994)年3月  電気事業者,通産省に対し,個別プラントのAM報告書を提出
H6(1994)年10月  通産省,上記報告書を評価検討し,原子力安全委員会に報告「軽水型原子力発電所におけるアクシテデントマネジメントの整備について検討報告書」
H8(1996)年9月  通産省課長通知 「発電用軽水型原子力発電施設におけるアクシデントマネジメントの整備について」 電事業者に資料提出を促す
H11(1999)年12月  仏 ルブレイエ原発事故(洪水を原因とするSBO事故)
H13(2001)年3月  台湾 第三(馬鞍山)原発事故(霧害を原因とするSBO事故)
H13(2001)年9月  米国 航空機テロ
H14(2002)年2月  米国 暫定保障措置命令(第「B.5.b」項)
H14(2002)年4月  原子力安全保安院 「アクシデントマネジメント整備上の基本要件について」策定
H14(2002)年5月  電気事業者「アクシデントマネジメント整備報告書」提出
H14(2002)年10月  原子力安全保安院 「軽水型原子力発電所におけるアクシデントマネジメントの整備結果について」の評価報告書を発表し,有効なAMが整備されたと結論づける。

[以下,参考として平成14年以降の事象を記載]
H16(2004)年12月  インド マドラス原発事故
H17(2005)年5月  IAEA NUSSC会合にて「原子力発電所のシビアアクシデント計画」の前身「DS385」が承認される。
H17(2005)年8月  東北電力女川原発にて設計基準を超える地震動(宮城県沖地震)
H18(2006)年5月  溢水勉強会 被告東京電力が,設計基準を超える外的事象(津波)により,福島第一原発が,SBO及びSAに至る調査結果を報告
H19(2007)年1月  保安院「B.5.b」入手
H19(2007)年3月  北陸電力志賀原発にて設計基準を超える地震動(能登半島沖地震)
H19(2007)年7月  東京電力柏崎刈羽原発にて設計基準を超える地震動(新潟中越沖地震)

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