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★ 準備書面 (45) −IAEA事務局長報告書(技術文書第2分冊)について− 
 第3 まとめ 
2016〔平成28〕年9月9日

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第3 まとめ

 技術文書によれば,有史データのみを用いて震源や規模等を想定するという津波評価技術の手法は,遅くとも1979年以降はIAEA安全基準,すなわち国際安全基準には適合しないものとされ,特に2003年以降は有史データを用いるのみでは不十分であることが強調されて,完全に否定されていた。技術文書が述べるところに従えば,国際安全基準では,津波評価技術の手法は否定され,長期評価の知見を考慮することが正しい評価である。
 このように,被告らが合理的であると述べる津波評価技術については,少なくとも津波の原因となる地震の震源や規模等の評価という点に関しては,国際安全基準において完全に否定されている。
 そして,日本は,IAEAの原加盟国であるとともに,発足当初からIAEAの意思決定機関である理事会の理事国として,IAEAの政策決定・運営に一貫して参画し,その活動に積極的に協力してきた。また,多数の人員を派遣し,資金的も多額の資金を投じてきた。さらに,本件事故の前には事務局長をも輩出している。このような,日本のIAEAへの関与を考えれば,被告らは.IAEA安全基準,すなわち国際安全基準を十分に理解していたはずである。
 また,被告らは,このような国際的な安全基準でもって,国内の原子力発電所の安全評価を行うことが求められており,原子力安全条約の締約国の義務に適うものであることも十分に理解していたはずである。
 したがって,被告らは,津波の原因となる地震の発生場所や規模の想定に関する津波評価技術の手法が国際安全基準に適合していないことを十分に認識していた。また,被告らは,国際安全基準に従えば,長期評価の知見を考慮すべきであることも十分に認識していたというほかない。
 そして,長期評価の知見を考慮していれば,本件津波と比肩する津波を予見することができたことは技術文書が指摘するとおりである。被告らが,原告が主張する福島第一原発の敷地高(O.P.+10メートル)に達する津波の発生はもとより,技術文書が指摘するように本件津波に比肩するような津波すら予見することが可能であったことは明らかである。

以上

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