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★ 準備書面(41) ―土壌汚染と管理区域,クリアランスレベル― 
 第3 クリアランスレベル 
平成28年6月22日

 目 次(←準備書面(41)の目次に戻ります。)

第3 クリアランスレベル
 1 管理区域の水準に達しないレベルの土壌汚染
 2 クリアランスレベルとは
 3 小括



第3 クリアランスレベル


 1 管理区域の水準に達しないレベルの土壌汚染

 一部の原告の避難元住所では,土壌汚染のレベルが管理区域の水準に達しない地域もある。
 しかし,そうした地域であっても,平米あたり6500ベクレルを超える土壌汚染が存在する場合は,当該地域からの放射線障害を防ぐ目的で避難し,避難を継続する行為は社会通念に照らして相当な行為であり,本件事故との相当因果関係が認められる。
 以下,その理由を述べる。


 2 クリアランスレベルとは

  (1)核燃料物質によって汚染された物でないもの

 原子炉等規制法は,原子力事業者等に対し,工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて,原子力規制委員会の確認を受けることができ,この確認を受けた物は,原子炉等規制法,廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用については,核燃料物質によって汚染された物でないものとして取り扱うものとする旨定めている(原子炉等規制法61条の2第1項,第3項)。
 この「核燃料物質によって汚染された物でないものとして取り扱う」ことができる基準を「クリアランスレベル」といい,環境省は,「クリアランスレベル」は,「廃棄物を安全に再利用できる基準」であると説明している。

  (2)原子力規制委員会規則

 上記の「原子力規制委員会規則で定める基準」は,「精錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」(平成17年11月22日経済産業省令第112号)第2条第1項に定められている。
 この第2号によると,「評価に用いる放射性物質の種類が二種類以上である場合にあっては,評価単位におけるそれぞれの放射性物質の平均放射能濃度の値を別表第一の第2欄に掲げるそれぞれの放射性物質に応じた放射能濃度の値で除して得られるそれぞれの割合の和が1を超えないこと」とされ,別表第一によると,セシウム137及びセシウム134は,いずれも「0.1bq/g」とされている。
 そうすると,セシウム137とセシウム134を評価に用いる場合のクリアランスレベルは,合算で0.1Bq/g(100Bq/kg)となる。

  (3)クリアランスレベルの土壌汚染への換算

 クリアランスレベルは,単位重量当たりのベクレル数(1秒間に崩壊する原子の個数)であるから,単位面積当たりの土壌汚染濃度と比較するためには,単位面積当たりのベクレル数に換算する必要がある。この点,換算にあたっては,「土壌密度」,「土壌採取の深さ」が変数となるが,土壌密度については平均的な土壌密度1.3g/cm3を,土壌採取の深さは文部科学省が採用している5cmを採用して換算できる。


 3 小括

 上記法令が,放射能濃度が一定の基準を超える資材等を再使用することを禁じている目的は,原子炉等規制法が明記するように,放射線による障害を防止することである。そのような資材等が生活環境に存在することにより,それらの資材の間近で,あるいはそれらと触れ合って生活する人が放射線障害を受けるリスクが否定できないことから,それを避ける必要があるとされているのである。
 平米あたり6500ベクレルを超える土壌汚染が存在する場合は,当該地域からの放射線障害を防ぐ目的で避難し,避難を継続する行為は社会通念に照らして相当な行為であり,本件事故との相当因果関係が認められる。

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