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★ 準備書面(41) ―土壌汚染と管理区域,クリアランスレベル―
 第2 放射線障害防止法による管理区域の規制及び飲食等の禁止 
平成28年6月22日

 目 次(←準備書面(41)の目次に戻ります。)

第2 放射線障害防止法による管理区域の規制及び飲食等の禁止
 1 原告らの避難前の生活圏における土壌汚染
 2 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)における管理区域の規制
 3 放射線障害防止法施行規則による飲食等の禁止
 4 主要な規則等による規制
 5 小括



第2 放射線障害防止法による管理区域の規制及び飲食等の禁止


 1 原告らの避難前の生活圏における土壌汚染

 平成27年10月14日及び15日,原告ら代理人において,専門家の協力のもと,原告らの避難元生活圏の土壌における放射能量(ベクレル:以下「Bq」と表記する)を測定したところ,多くの地点で4万Bq/m2を超える数値が検出された。
 この点,放射線障害防止法は,ある区域における放射線同位元素の表面密度が4万Bq/m2を超えるおそれのある場合,その区域を管理区域と定め,当該区域における出入りの管理,線量の管理がなされるなど厳格な規制を設けている。
 すなわち,原告らの避難元生活圏の多くは,現時点においても,このような厳格な法規制が行われている管理区域に相当するほど放射性物質に汚染されていることとなる。
 また,本件事故以前には避難元で生活を送っていく上で,放射性同位元素を経口摂取するおそれは皆無であった。
 放射線障害防止法は,こうした恐れのある作業室及び貯蔵施設内における飲食等を禁止している。
 原告らの避難元においては,環境中に飛散した放射性物質が土壌等に付着した状態であり,条件が整えば空気中にも浮遊しうる状態である。
 すなわち,通常の生活を送っていても放射線同位元素を経口摂取する恐れが常にあり,本来,飲食等は禁止されるべき土壌環境である。
 以下,放射線障害防止法及び同法に基づく管理区域について説明し(2項),その後,飲食等の禁止について説明する(3項)。
 その上で,放射線障害防止法以外にも管理区域,飲食等の禁止にかかる規制がなされる法分野のあることを指摘する(4項)。
 なお,現時点において,福島第一原子力発電所付近の土壌から検出される放射性物質は,セシウム134とセシウム137が主要なものである。これらの物質は,ベータ崩壊を起こしてベータ線を放出するので,セシウム134とセシウム137は,以下の関係法令において,「アルファ線を放出しない同位元素」にあたる。

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 2 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)における管理区域の規制

  (1)放射線障害防止の考え方

 日本における原子力平和安全利用の憲法ともいうべき存在は,原子力基本法である。同法2条1項は,原子力利用は,平和の目的に限り,安全の確保を旨とするべきことを謳っている。その上で,同条2項は,「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」としている。
 原子力基本法が制定されたのは,昭和30年のことであるが,その後,放射性同位元素及び放射線発生装置に関する規制として「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(以下「放射線障害防止法」という。)が昭和32年に制定された。
 放射線障害防止法は,上に指摘した原子力基本法2条2項を具現化する法規であり,国際放射線防護委員会(ICRP)から出された勧告を基に放射線審議会の審議及び日本の実情にあわせて放射線同位元素や放射線発生装置の使用等を規制することにより,放射線障害の発生を防止するために制定されたものである。
 放射線障害防止法による放射線防護の基本原則は,放射線作業に従事する者及び一般国民の受ける放射線量を放射線障害の生ずる恐れのない線量以下にすることにある。
 そして,放射線障害防止法はその目的として,放射性汚染物の廃棄その他の取扱いを規制することにより,これらによる放射線障害を防止し,公共の安全を確保することを掲げている(同法1条。なお,以上について以上について社団法人日本アイソトープ協会「放射線障害の防止に関する法令 概説と要点改訂8版」。甲D共152号証18ページ以下)。

  (2)放射線作業従事者と一般公衆の放射線防護

  ア 放射線作業従事者と一般公衆
 放射線障害防止法において放射線管理の対象となるのは,放射線作業従事者と一般公衆とに大別される。
 放射線施設及び放射線管理区域の視点からこれをみると,施設あるいは管理区域内と外の管理対象者と表現できる。
 放射線管理の対償である放射線作業従事者と一般公衆はいずれも人間であるが,その防護方法は,大きく異なる。
 放射線作業従事者の場合,厳格な個人管理が行われ,適切な作業環境管理のもとで外部被ばく線量・内部被ばく線量の測定(算定)による年実効線量限度(50mSv/年)以下であることの確証と定期的な健康診断によって放射線障害の発生が防止される。
 一般公衆の場合,公衆の受ける年実効線量限度をlmSv/年としたうえで,これを担保するために事業所境界において十分な環境管理(空間線量率,排気・排水中放射能濃度)を行うこととしている。

  イ 年実効線量限度の設定理由
 放射線作業従事者に比較して一般公衆の年実効線量限度が極めて低く設定されている。
 生物学的には同じヒトであるにも関わらず,被ばくの限度に大きな差がある理由は,次のように説明されている(吉澤康雄「放射線健康管理学」153号証16ページ以下)。

   (ア)公衆には子どもが含まれている。
 放射線作業従事者はすべて成人であるが,公衆の中には子どももいる。子どもは,以下の理由で放射線防護の観点から注目されなければならない(甲D共153・72ページ)。
 第一に,子どもは大人に比べて放射線感受性が高い。胎児や小児は特に放射線感受性の高さが問題となる。
 第二に,子どもは,将来子どもを産む可能性(子期待数)が大きく,同じ線量を被ばくしても若年者の方が遺伝線量(生殖腺線量×子期待数)が多く,遺伝的影響のリスクが大きい。
 第三に,子どもは年令がより多い者よりも余命が長い。したがって,放射線被ばくによってがんが発生するにしても,余命がより短い高齢者よりも発がんの可能性が多いことになる。

   (イ)公衆には被ばくについて選択の自由がない。
 放射線作業従事者は,放射線作業に従事するか否かについて,何らかの形で自分で判断し選択する自由を持っている。しかし,一般公衆には原則としてそれがない。

   (ウ)公衆は被ばくによる直接的利益がない
 放射線作業従事者は,放射線を取り扱う仕事によって,労働報酬等の直接的利益を受ける。しかし,一般公衆にはそうした利益がない。
 仮に原子力発電所の運転によって電力を生産し,それによって国民経済に益するところがあるとする。
 この考え方に立つと,原子力発電所の運転によって,周辺公衆に微量の放射線被ばくがあったとしても,国民経済の向上ということを介して公衆は利益を受けているのではないかという主張も可能であった。しかし,この場合の利益は,間接的利益であって,直接的利益ではない。間接的利益は一般公衆も放射線作業従事者も等しく受けているものであって,両者の間に差はないのである。
 いずれにせよ,本件で問題となる被ばくは,原子力発電所の「運転」によるものではなく,「事故」による被ばくであるから,そもそも直接,間接,いずれの意味でも利益は存しない。

   (エ)公衆は,職業人のように放射線管理の下に置かれていない
 職場において放射線作業をしている人は,被ばく線量管理及び健康管理などの放射線管理の対象として常に見守られ,管理を受けている。したがって,異常な事態が生じたとしても早期に発見し,それぞれの状況に応じて対処することが可能である。しかし,公衆の場合は,個人を対象とした管理を放射線作業従事者の場合と同じようにすることは,困難または不可能である。

   (オ)公衆はその多くが自分自身の職業によるなんらかの危険にさらされている
 職業には,それぞれなんらかの危険が伴う。一般公衆の多くは,自分自身の職業に従事している。したがって,一般公衆としての放射線被ばくに加え,各個人の職業に伴う危険にもさらされていることになる。このことを考えるとかんがえると,公衆に適用する限度の値を放射線作業従事者に対する値と同じとすることは不適当である。

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  (3)放射線管理区域の意義

 放射線障害防止法は,放射性物質を取扱う施設や放射線発生装置を使用する施設において,作業者や周辺公衆の放射線被ばくが定められた限度を超えないようにするため、ある一定の放射線(能)レベルの基準を超えるおそれのある区域を管理区域としている。
 そこでは、管理区域外への放射線(能)の異常な漏洩等がないように管理が行われるとともに、管理区域内においても、作業者等の出入り管理や被ばく管理とともに作業場所の放射線(能)レベルのモニタリングが行われ、放射性物質等を取扱った研究・作業等が安全に行われている。
 管理区域は、外部被ばくだけが問題になる区域(放射線管理区域)と内部被ばくおよび外部被ばくの両方が問題になる区域(汚染管理区域)とに分けることができる。密封線源または放射線発生装置だけを取り扱う照射施設は放射線管理区域に該当し、非密封の放射性同位元素の使用施設は汚染管理区域になる。汚染管理区域の出入口には管理室、汚染検査室、除染室などを設け、出入に際しては、履き物を履き替えるかまたは、オーバーシューズを着用する。また必要に応じて専用の実験衣または防護衣を着用し、内部被ばくと汚染の広がりを防止する。
 原告らの避難元は,環境中に放射性物質が飛散した状態にあるので,上記の区域区分に照らせば,汚染管理区域に相当する。

  (4)放射線障害防止法における管理区域

  ア 放射線障害防止法施行規則
 放射線障害防止法施行規則は,第1条第1号で,管理区域を次のとおり定めている。
「管理区域 外部放射線に係る線量が原子力規制委員会が定める線量を超え,空気中の放射性同位元素(中略)の濃度が原子力規制委員会が定める濃度を超え,又は放射性同位元素によって汚染される物の表面の放射性同位元素の密度が原子力規制委員会が定める密度を超えるおそれのある場所」
 また,同条第13号は,「表面密度限度」を次のとおり定めている。
「表面密度限度 放射線施設内の人が常時立ち入る場所において人が触れる物の表面の放射性同位元素の密度について,原子力規制委員会が定める密度限度」
  イ 数量告示
 管理区域を画する放射線同位元素の濃度について,同規則を受けた「平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)」(以下「数量告示」という。)の第4条第3号は,次のとおり定めている。
「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規貝し(以下「規則」という。)第一条第一号に規定する管理区域に係る外部放射線に係る線量,空気中の放射性同位元素の濃度及び放射性同位元素によって汚染される物の表面の放射性同位元素の密度は,次のとおりとする。
  •  (中略)
  •  三 放射性同位元素によって汚染される物の表面の放射性同位元素の密度については,第八条に規定する密度の十分の一」
 ここにいう「第八条に規定する密度」につき,数量告示第8条は,
「規則第一条第十三号に規定する人が触れる物の表面の放射性同位元素の密度限度は,別表第三の左の欄に掲げる放射性同位元素の区分に応じてそれぞれ右の欄に掲げる密度とする。」
と定めている。そして,別表第三では,「アルファ線を放出しない同位元素」の密度限度を「40」(Bq/cm2)と定めている。

  ウ 管理区域は4万Bq/m2を超えるおそれのある場所であること
40Bq/cm2は,40万Bq/m2にあたることから,「第八条に規定する密度の十分の一」とは,4万Bq/m2を指す。
 よって,セシウム134とセシウム137の表面密度が4万Bq/m2を超えるおそれのある場所は,放射線障害防止法施行規則における管理区域となる。

  (5)放射線障害防止法における管理区域の規制

  ア 立入制限
 放射線障害防止法施行規則は,「管理区域の境界には,さくその他の人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設けること」とし,(第14条の7第1項第8号),「管理区域の境界に設けるさくその他の人がみだりに立ち入らないようにするための施設には,別表に定めるところにより,標識を付すること」(同項第9号等)を放射性同位元素の使用施設等の基準として義務づけている。
 原告らの避難元には管理区域に相当する汚染を受けている地域が含まれており,本来,みだりに立ち入りが禁止されなければならないほどに汚染されている場所である。

  イ 放射性汚染物の持出禁止
 また,同規則は,「放射性汚染物で,その表面の放射性同位元素の密度が原子力規制委員会が定める密度を超えているものは,みだりに管理区域から持ち出さないこと」(第15条第1項第10号)とし,「使用施設又は管理区域の目につきやすい場所に,放射線障害の防止に必要な注意事項を掲示すること」(同第11号)としている。
 原告らの避難元には,本来,区域外に持出が禁止されるような土壌が広がっているほどに汚染されている場所があるということである。

  ウ 管理区域に立ち入る者に対する線量測定義務
 放射線障害防止法第20条第2項は了許可届出使用者及び許可廃棄業者は,原子力規制委員会規則で定めるところにより,使用施設,廃棄物詰替施設,貯蔵施設,廃棄物貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入った者について,その者の受けた放射線の量及び放射性同位元素等による汚染の状況を測定しなければならない。」と,施設に立ち入った者に対する線量測定義務を課している。
 この測定方法について,同規則は,第20条第2項において,次のとおり,管理区域に立ち入る者に対して,管理区域に立ち入っている間継続して測定することを義務づけている。

「 法20号第2項の放射線の量の測定は,外部被ばくによる線量及び内部被ばく(人体内部に摂取した放射性同位元素からの放射線に被ばくすることをいう。以下同じ。)による線量について,次に定めるところにより行う。
  • 一 外部被ばくによる線量の測定は,次に定めるところにより行うこと。
  • (中略)
  • (ホ)「管理区域に立ち入る者について,管理区域に立ち入っている間継続して行うこと。
 原告らの避難元には,本来,継続して被ばくの測定をしていなければならないほどに汚染されている場所が含まれている,ということである。

  エ 管理区域に立ち入る者についての教育訓練義務
 放射線障害防止法第22条は,「許可届出使用者及び許可廃棄業者は,使用施設,廃棄物詰替施設,貯蔵施設,廃棄物貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入る者に対し,原子力規制委員会規則で定めるところにより,放射線障害予防規程の周知その他を図るほか,放射線障害を防止するために必要な教育及び訓練を施さなければならない。」と,施設に入る者に対する教育及び訓練を施すことを義務づけている。
 この教育訓練内容について,同規則21条の2第1項は,「法第二十二条の規定による教育及び訓練は,次の各号に定めるところによる。」とし,その第1号で「管理区域に立ち入る者(第二十二条の三第一項の規定により管理区域でないものとみなされる区域に立ち入る者を含む。)及び取扱等業務に従事する者に,次号から第五号までに定めるところにより,教育及び訓練を行うこと。」と,管理区域に立ち入る者に対する教育及び訓練義務を課し,その第5号において,教育及び訓練内容を「前号に規定する者以外の者(第二十二条の三第一項の規定により管理区域でないものとみなされる区域に立ち入る者を含む。)に対する教育及び訓練は,当該者が立ち入る放射線施設において放射線障害が発生することを防止するために必要な事項について施すこと。」と定めている。
 ちなみに初めて管理区域に立ち入る前または取扱い等業務を開始する前に,放射線作業従事者に対して行わなければならない教育訓練の項目及び時間数は,次の通りであり,合計6時間以上の教育訓練を受けることが要求されている。
放射線の人体に与える影響  30分以上
アイソトープまたは放射線発生装置の安全取扱い  4時間以上
放射線障害防止法等  1時間以上
放射線障害予防規程  30分以上
 原告らの避難元には,こうした教育訓練が必要とされているほどに汚染されている場所が含まれているにも関われず,教育訓練は実施されていない。

  オ 管理区域に立ち入る放射線業務従事者への健康診断実施義務
 放射線障害防止法第23条は,「許可届出使用者及び許可廃棄業者は,原子力規制委員会規則で定めるところにより,使用施設,廃棄物詰替施設,貯蔵施設,廃棄物貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入る者に対し,健康診断を行わなければならない。」と,施設に立ち入った者に対する健康診断実施義務を課している。
 この健康診断について,同規則第22条は,管理区域に立ち入った放射線業務従事者について,
「 法第二十三条第一項の規定による健康診断は,次の各号に定めるところによる。
 一 放射線業務従事者(一時的に管理区域に立ち入る者を除く。)に対し,初めて管理区域に立ち入る前に行うこと。
 ニ 前号の放射線業務従事者については,管理区域に立ち入った後は一年を超えない期間ごとに行うこと。」
として,初めて管理区域に立ち入る前に健康診断を行うことと,管理区域に立ち入った後は一年を超えない期間ごとに健康診断を行うことを義務づけている。
 原告らの避難元には,本来,一年を超えない期間ごとに健康診断が義務づけられているほどに汚染されている場所が含まれているにも関わらず,こうした健康診断は実施されていない。

  (6)小括

 以上のとおり,放射線障害防止法は,4万Bq/m2を超えるおそれがある場所を管理区域と定め,多くの規制を設けている(全体像は次ページ参照)。

図1 管理区域にあける管理の概要【図省略】
出典:アイソトープ便覧、RI協会から

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 3 放射線障害防止法施行規則による飲食等の禁止

 放射線障害防止法施行規則は,作業室における飲食及び喫煙の禁止(15条1項5号)並びに貯蔵施設のうち放射性同位元素を経口摂取するおそれのある場所での飲食及び喫煙の禁止(17条1項5号)を定めている。
 作業室とは,「密封されていない放射性同位元素の使用若しくは詰替えをし、又は放射性同位元素若しくは放射線発生装置から発生した放射線により生じた放射線を放出する同位元素によって汚染された物(以下「放射性汚染物」という。)で密封されていないものの詰替えをする室」であり(1条2号),貯蔵施設とは,「放射性同位元素を貯蔵する施設」である(放射線障害防止法3条1項6号)。
 その趣旨は,こうした場所は環境中に放射性物質が存在することから,経口摂取による内部被ばくを防止することにある。
 原告らの避難元地域は,環境中に放射性物質が存在し,経口摂取により内部被ばくするおそれがある場所であるという点において,作業室ないし貯蔵施設と同じである。
 ところが,当該地域の住民は,本来,飲食及び喫煙が禁止されるべき場所であるにも関わらず,当該地域での生活を強いられている。


 4 主要な規則等による規制

 放射線同位体元素等の取扱いは,取扱いや放射線発生の態様等により,さらに次の規則等によって規制される。いずれも放射線障害防止法施行規則と同様の管理区域概念を用いた規制を行い,飲食等の禁止も規定している。

  (1)電離放射線障害防止規則

 労働者(国家公務員及び船員を除く)を放射線障害から保護することを目的として定められている。労働安全衛生法の適用される事業所で放射線を取り扱う場合には,本規則にも従わなければならない。

  (2)職員の放射線障害の防止(人事院規則10−5)

 国家公務員法に基づき,一般職の国家公務員を放射線障害から保護するために設けられている。

  (3)医療法施行規則

 医療法に基づき,医療従事者,患者等を放射線障害から保護するための規定が設けられている。


 5 小括

 以上のように,4万Bq/m2以上の表面密度のある物質が存在する場所は,国内法により管理区域とされ,みだりに人が立ち入らないための規制が設けられ,そこから物を持ち出すことも禁じられ,立ち入る者に対しては常時の線量の計測が義務付けられるなど,放射線障害を防止するための厳格な規制が課されるエリアである。
 また,4万Bq/m2以上の表面密度のある物質が存在する場所でなくても,環境中に放射性物質が飛散しており,経口摂取することによって内部被ばくする恐れがある作業所または貯蔵場所は,飲食及び喫煙が禁止されている。
 原告らの避難前の生活圏には,現在もなお,そのような厳格規制が設けられているエリアと同等に,放射性物質によって土壌汚染されている地点が存在する。
 しかも,これらの地点では放射線障害を防止するための厳格規制が課されないため,そこで生活する住民は,自ら放射線防護措置をとるか,防護措置をとらず被ばくを余儀なくされるなかで,日常生活を送り,子どもを育てていかなければならない。
 このような事態を避けるために避難し,そして避難を継続することは,社会通念に照らして相当な行為であり,本件事故との相当因果関係が認められる。

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