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★ 準備書面(37) (損害賠償について) 
平成28年5月27日

  原告提出の準備書面(37)(PDF)

 目 次

第1 積極損害
 1 避難移動費,一時立入移動費
 2 生活費増加費用
 3 動産

第2 逸失利益
 1 就労不能損害

第3 精神的損害
 1 避難に伴う慰謝料
 2 コミュニティ侵害に基づく慰謝料



第1 積極損害


 1 避難移動費,一時立入移動費

  (1)基本的な考え方

 移動区間や移動方法により算出される定額を損害額とする。ただし,定額を上回る実額の立証が可能な場合は,実額を損害額とする。

  (2)根拠(甲D共146,甲D共147,甲D共148)

 避難指示区域内の避難者を対象とする直接請求において,被告東京電力自身が上記の考え方に基づいて賠償を行っている(甲D共146,甲D共147)。自主的避難者を対象とするADRにおいても,基本的に,上記考え方に準拠した運用がなされている(甲D共148)。


 2 生活費増加費用

  (1)基本的な考え方

 「家財道具購入費」,「避難継続中の毎月の生活費増加分」,「避難継続中の避難雑費」を損害項目として,それぞれ定額を損害額とする。ただし,定額を上回る実額の立証が可能な場合は,実額を損害額とする。
 上記損害項目は,自主的避難者を対象とするADRの運用にならったものである。「避難継続中の毎月の生活費増加分」とは,家族の一部が避難し,生活拠点が複数になるために生じる生活費の増加分を填補するものである。「避難継続中の避難雑費」とは,避難している家族の中に妊婦または子供が含まれている場合の生活費増加費用を填補するものである。

  (2)根拠(甲D共148)

 ADRにおける運用は,以下のとおりである。

  ア 家財道具購入費
 家族全員で避難をしている場合は定額で15万円,家族の一部で避難をしている場合は定額で30万円を賠償する。

  イ 避難継続中の毎月の生活費増加分
 家族分離後,少ない人数で生活するグループの人数が1人の場合は月額3万円,2人の場合は月額4万円,3人の場合は月額5万円を賠償する。

  ウ 避難継続中の避難雑費
 避難している家族の中に妊婦または子供が含まれる場合,平成24年以降,月額で妊婦・子供1人あたり2万円を賠償する。


 3 動産

  (1)基本的な考え方

 避難後の住居が避難前の住居に比べて狭小である等の理由により,避難前の家財の大半を避難前の住居に残置してきたような事情がある場合,世帯構成に応じて算出される定額を損害額とする。

  (2)根拠(甲D共149)

 避難指示区域内の避難者に対しては,被告東京電力は,区域の区分に応じて,世帯構成に基づき一定の金額を賠償している。たとえば,避難指示解除準備区域内の避難者に対しては,下記の基準に基づいて損害賠償がなされている(甲D共149)。



単身世帯の場合
  学生以外 学生
金 額 245万円 30万円
複数世帯の場合
  世帯基礎額 加算額
大人1名 子供1名
金 額 355万円 45万円 30万円
 避難後の住居が避難前の住居に比べて狭小である等の理由により,避難前の家財の大半を避難前の住居に残置してきたような事情がある場合,家財道具の喪失という事情において,避難指示区域内であるか,区域外であるかによって異なるところがない。よって,上記事情がある場合は,上記基準により算出される額を損害額とした。

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第2 逸失利益


 1 就労不能損害

  (1)基本的な考え方

 避難前の収入をもとに損害額を算出する。避難後の収入は控除しない。

  (2)根拠(甲D共150)

 避難者が,遠方の避難先において行う営業又は就労は,将来の生活再建の見通しを立てなければならない,或いは将来の生活再建の見通しも立たない状況の下で,勤労に当てることができる時間の全部又は就労に当てることができずまた,重い精神的負担を伴うものであるのが通常である。
 政府指示による避難者を対象としたものであるが,平成24年4月19日付原子力損害賠償紛争解決センター総括基準(甲D共150)は,上記の考え方のもと,避難先における営業・就労によって得た利益や給与等に関しては,その額が多額である等の場合を除き,営業損害や就労不能損害から控除しないものとしている。

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第3 精神的損害


 1 避難に伴う慰謝料

  (1)基本的な考え方

 原発事故発生以降,原告1名につき月額35万円とする。

  (2)根拠

 上記金額(月額35万円)は,交通事故における入院慰謝料(むちうち症で他覚症状がない場合における,入院慰謝料1月分。甲D共151)を念頭に置いたものである。これは,原発事故により避難を余儀なくされることで生活基盤を奪われ,避難先で不自由な生活を強いられている原告らの精神的苦痛は,入院によって不自由な生活を強いられている入院患者が受ける精神的苦痛と同程度と考えられるためである。
 また,避難の有無にかかわらず,原発事故発生時を始期としたのは,避難により生活の拠点を奪われることを余儀なくされた者と,被曝のリスクや恐怖に晒されながら避難を選択しなかった者とで,その精神的苦痛の程度に異なるところがないためである。


 2 コミュニティ侵害に基づく慰謝料

  (1)基本的な考え方

 原告1名につき,2000万円とする。

  (2)根拠

 原発事故発生により,これまでの生活を失い,コミュニティを喪失した原告らの精神的苦痛は筆舌に尽くしがたく,また金銭に評価することも困難であるが,これを敢えて評価すれば,金2000万円を下らない。
 よって,コニュニティ侵害に基づく慰謝料として,上記金額を損害額とする。

以上

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