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★ 準備書面(31) ―検察審査会の議決及び被告東電社内文書について― 
 第3 被告東電社内文書について 
平成28年3月22日

目 次(←準備書面(31)の目次に戻ります。)

第3 被告東電社内文書について
 1 はじめに
 2 平成20年2月16日中越沖地震対応対策打合せ
 3 平成20年3月20日中越沖地震対応対策打合せ
 4 「福島第一/第二原子力発電所『発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針』の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)QA集Rev9−1版」
 5 新潟県中越沖地震を踏まえた福島第一・第二原子力発電所の津波評価委託
 6 耐震バックチェック説明会
 7 平成21年9月10日中越沖地震対応対策打合せ
 8 小括



第3 被告東電社内文書について


 1 はじめに

 被告東電は同社の元取締役らを相手取った株主代表訴訟(以下「代表訴訟」という。)において補助参加人として平成20年3月計算がなされた前後の社内文書を証拠として提出した(以下「東電社内文書」という。)。
 これらの書証はその重要性から本件訴訟と同種の各地訴訟において文書送付嘱託を申し立てられ,かつ,それらの文書送付嘱託について被告東電が強い反対意見を述べたにもかかわらず,採用をされていた。
 ところが,文書送付嘱託を採用した各地の裁判所において文書の提出を求められているにもかかわらず,被告東電は任意の提出を拒んできた。
 その理由たるや,文書送付嘱託を求められた文書については提出すべき法的義務がない等というものであり,制裁規定がないことを勘案しても,法廷軽視も甚だしい態度というべきものであった。
 今回,上記代表訴訟事件について,本件訴訟原告が民事訴訟法91条3項に基づいて謄写請求を行い,東電社内文書を入手した。
 東電社内文書により,本件議決に至るより具体的な事情が明らかになった。


 2 平成20年2月16日中越沖地震対応対策打合せ

  (1)審議内容

 平成20年2月16日に開催された中越沖地震対応打合せにおいて「Ssに基づく耐震安全性評価の打ち出し方について」が,原子力設備管理課から議題として上程された(甲B72の3の1)。

  (2)Ssに基づく耐震安全性評価の打ち出しについて(甲B72の3の)

 上記議題に関して,「Ssに基づく耐震安全性評価の打ち出し方について」と題する全文18ページからなる資料が配付された(以下「2月16日資料」という。甲B72の3の2)。
 2月16日資料の12ページ及び13ページには,「地震随伴事象である『津波』への確実な対応」が記載されている。
 すなわち,2月16日資料12ページは,「(1)津波高さの想定変更(添付資料参照)」と題して,従来の想定津波高さ(O.P.+15.5メートル)と見直し(案)のそれ(O.P.+7.7メートル以上)が記載されていた。
 この見直し(案)は平成19年11月試算に基づいて記載されたものであるが,備考欄には「詳細評価によってはさらに大きくなる可能性」と注記されていた。
 また,見直し(案)の理由欄には,「海溝沿い震源モデルを考慮」とあり,長期評価の見解に基づくものであることが明らかである。
 そして,備考欄には,「指針改訂に伴う基準地震動Ss策定において海溝沿いモデルを確定論的に取り扱うこととしたため。」(下線部は原告ら代理人)と記載されていた。
 この「海溝沿いモデルを確定論的に取り扱うこととした」との記載は重要である。
 海溝沿いモデルの採用について断定的な表現がなされており,当初方針が社内で決定済みであることを裏付けているからである。
 この点,被告東電は,代表訴訟の補助参加人として,「『+7.7m以上』という記載は,これに基づいて,補助参加人として何らかの経営判断・意思決定を行うようなものではなく,実際にも,平成20年2月16日の中越沖地震対応打合せにおいて,この記載に関連して,補助参加人の会社としての経営判断・意思決定が行われたことはなかった。」と主張する。
 しかし,当初方針は,2月16日資料より以前の平成19年12月までに決定されており,そのことは2月16日資料の記載ぶり(「海溝沿いモデルを確定論的に取り扱うこととした」との記載)からも明らかである。したがって,被告東電の主張は,平成21年2月16日に何らかの決定がなされたわけではないという限りでは正しいが,そのことが当初方針の存在を否定する理由とはならない。平成21年2月16日よりも以前に経営判断・意思決定はなされていたのである。

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 3 平成20年3月20日中越沖地震対応対策打合せ

  (1)審議内容

 平成20年3月20日に開催された中越沖地震対応対策打合せでは,審議事項として福島第一・第二の耐震安全性評価があげられていた(甲B72の4の1)。
 議事録には津波について審議された記載はないものの地震随伴事象(津波)に関する資料として3つの書類が提出された。
 審議事項に記載が無いのは,これらの資料が既に決まっていた被告東電の方針(バックチェックに長期評価を取り込むこと)に沿ったものであり,議論が必要な内容を含まなかったからである。
 以下,(2)ないし(4)は,同日の中越沖地震対応対策打合せにおける配付資料である。

  (2)福島第一/第二原子力発電所における地質調査及び地震随伴事象に関するスタンス

 この資料には「地震随伴事象(津波評価,基礎地盤及び周辺斜面の安定性)については,現在解析・評価を行っているところであり,最終報告において結果を示す予定。」との記載がある(甲B72の4の2)。
 これは平成21年6月に予定されていた最終報告までに長期評価に基づいて安全性を評価し,それと同時に対応を行うことを意味している。
 現にこの平成20年3月20日中越沖地震対応対策打合せまでに平成19年11月試算の結果が明らかになっていたが,その二日前には平成20年3月計算が東電設計から提出されていた。
 この計算結果が平成20年3月20日中越沖地震対応対策打合せに提出されなかった理由は,恐らく提出が打合せの直前になったことから同打合せに出席する役員等への説明をするための精査等が間に合わなかったためであると考えられる。

  (3)福島第一原子力発電所/福島第二原子力発電所「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)

 平成20年3月20日の前記打合せにはバックチェックの中間報告書が資料として配付されていた。その内容の概略は,下記の通りである(甲B72の4の3)。
 前述したとおり,平成18年9月19日に安全委が新指針を公表し,翌20日,保安院は改訂された新指針に照らした耐震安全性の評価,すなわちバックチェックを行うよう被告東電らに求めた。
 その後,平成19年7月には新潟県中越沖地震があり,経済産業大臣より,新潟県中越沖地震から得られる知見を耐震安全性の評価に適切に反映し,早期に評価を完了する旨の指示がなされた。
 これを受けて,被告東電は平成19年8月20日,耐震安全性評価の見直し計画書を提出し,平成20年3月を目処に中間報告を行うこととされていた。
 耐震安全性評価は,「A.地質調査の実施・活断層の評価」,「B.基準地震動Ssの策定」,「C.施設等の耐震安全性評価」の流れで行われるのであるが,このうち地震随伴事象に対する評価(津波に対する安全性)は,「C.施設等の耐震安全性評価」で実施されることとされていた。
 このうち,中間評価においては,上記のうち,A,B及びCのうち福島第一原子力発電所5号機における主要施設の評価までが報告対象となっていた。
 津波についてはこの中間報告では報告対象とされなかったが,後記(4)記載のQA集によれば最終報告で示すこととされていた。

  (4)福島第一/第二原子力発電所「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)QA集

 「福島第一/第二原子力発電所『発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針』の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)QA集」(以下「当初QA集」という。)は,津波等の地震随伴事象については「現在解析・評価を行っているところであり,最終報告において結果を示す予定。」とされていた(甲B72の4の4)。
 そして,この時期に長期評価を取り入れた津波高さの評価を行っていたのは,前述の通りである。
また当初QA集は「平成14年に土木学会が発表した手法で安全性確認を行っている。今回のバックチェックでは,その後の知見を反映する。」(下線部は原告代理人)とも記載しているところ,「その後の知見」とは,津波評価技術(平成14年2月)の後に公表された長期評価(平成14年7月)のことであった。
 そして,津波高さについては「現在,解析・評価中であり,結果は最終報告で示す。」としていたが,その最終報告は平成21年6月になされることが予定されており,本来であれば,このときまでに長期評価を取り込んだ安全性確保の措置がとられていたはずであった。

  (5)被告東電の説明

 被告東電は,代表訴訟の補助参加人として,「津波等の地震随伴事象については中間報告ではなく最終報告において取り扱うものとして位置づけられている」と主張する。
 しかし,ここで重要なのは報告の時期ではない(中間報告は平成20年3月,最終報告は平成21年6月が予定されていた)。
 平成20年3月20日の時点において,津波等の地震随伴事象について被告東電が長期評価に基づいて評価する方針(当初方針)をとっていたことこそが大切な事実である。

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 4 「福島第一/第二原子力発電所『発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針』の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)QA集Rev9−1版」

 「福島第一/第二原子力発電所『発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針』の改訂に伴う耐震安全性評価(中間報告)QA集Rev9−1版」(以下「改訂QA集」という。)は,平成20年3月20日の中越沖地震対応打合せの後に,同月31日の中間報告書の提出に向けて修正が加えられたものである(甲B72の5)。
 改訂QA集は「津波評価にあたっては,『原子力発電所の津波評価技術(H14年,土木学会)』以降に地震調査研究推進本部等から発表された最新の知見を踏まえ,『不確かさ』の考慮として発電所の安全性評価にあたって考慮する計画」と長期評価をバックチェックに取り入れることを明確にしていた。
 また,「新たな知見に基づき,さらに評価を進め,必要に応じて対策を講じる所存」ともされ,長期評価によって予想される津波には対策を講じる予定であることも明らかにされた。
 また,津波に対する評価の結果,施設への影響が無視できない場合には,「非常用海水ポンプ電動機が冠水し,故障することを想定した電動機予備品準備,水密化した電動機の開発,建屋の水密化等が考えられる」としていた。
 これらの対策が最終報告(この時点では平成21年6月の予定)までに実施視されていれば,本件事故の発生は回避されていた。


 5 新潟県中越沖地震を踏まえた福島第一・第二原子力発電所の津波評価委託

  (1)津波評価委託の概要

 「新潟県中越沖地震を踏まえた福島第一・第二原子力発電所の津波評価委託」は,被告東電が訴外東電設計株式会社に対して長期評価の考え方に基づいて明治三陸沖津波地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに置いて津波の計算を行ったものである(以下「本件津波評価委託」という。甲B72の2)。
 これは,本件津波委託評価の「第2回打合せ資料」と題されており,平成20年4月18日と日付があり,その頃作成されたものである。
 1ページ目の上端左上には,「調達番号:原設管−H19−018」とあるので,実際の発注自体は平成19年度になされていたことが明らかである。

  (2)本件津波委託評価の意義

 本件津波委託評価の存在は,遅くとも平成19年12月までにはバックチェックについて長期評価取り込みをするとの当初方針が存在したことを裏付けるものである。
 この点,被告東電は,代表訴訟の補助参加人として,本件津波委託評価について次のように述べて手戻りが生じることがないようにしたに過ぎないと弁明している。
「仮に長期評価の見解を踏まえずに耐震バックチェックを実施した後で,保安院から,長期評価の見解を前提とした評価を実施するよう指示されるということになると,改めてそのような追加の評価を実施する作業が必要になってしまうことも想定された。そこで,補助参加人の担当部署は,そのよううな手戻りが生ずることのないように耐震バックチェックにおける報告書の提出に向けた長期評価の見解の取扱いの方向性を社内で検討することとし,かかる社内検討のための参考資料として,これまでに大きな津波を伴う地震が発生した記録のない福島県沖海溝沿い領域に,仮想的な断層モデル(波源モデル)を置いた場合の津波水位の試し計算(明治三陸沖試算)を行うこととした。」
 しかし,これまで述べたとおり,被告東電は当初方針においてバックチェックに長期評価を取り入れることを決定していたのであるから,「手戻り防止」というのは言い訳に過ぎない。

  (3)本件津波委託評価の浸水深の考え方

 本件津波委託評価の浸水深には大きな疑問がある。
 すなわち,本件津波委託評価は敷地南側(O.P.+10メートル)における最大津波高さはO.P.+15.707メートルとなり,浸水深は5.707メートルとしている。
 津波の性質より敷地高と等しい高さの津波が到来すれば敷地が溢水するところ(原告ら準備書面(13)第2,2項参照),上記記載は津波高さから敷地高さを単純に控除した数値を推定浸水深としており,本件津波委託評価は,その津波の性質を念頭においた計算までは行っていないことを推認させる。
 なぜなら,津波の性質に照らせば,敷地南側で津波高さはO.P.+15.707メートルとなれば,敷地内の浸水深は5.707メートルをはるかに超えることが強く予想されるからである。
 したがって被告東電が敷地(O.P.+10メートル)に高さ10メートルの防潮堤を検討していたのは,津波の性質に鑑みれば当然のことであった。

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 6 耐震バックチェック説明会

  (1)議事メモ

 平成20年9月10日,福島第一原子力発電所からの要望に応じて,被告東電の担当部署は,同発電所の職員らに対し,耐震バックチェックの状況について説明を行うための説明会を開催した(以下「本件説明会」という。)。
 「津波に対する検討状況」も議事事項として議事録に記載されているが,これについては「機微情報のため資料は回収,議事メモには記載しない」と秘匿が意図されていた(甲B72の7の1)。

  (2)本件説明会での質問・意見

 「評価基準は終局耐力か?」との質問に対し,「IVASOSSでも耐えられる,と言わないと運転停止させられかねない。バックチェックというよりバックフィットに近いが,仕方がない」との回答がなされていた。
 すなわち,被告東電は,バックチェックについて,安全性評価の結果,新指針に適合しなければ原子炉の運転を止められる,すなわち,報告の際には対応策が講じられている必要性があると認識していた。

  (3)福島第一原子力発電所津波評価の概要

 本件説明会に資料として配付されたのが,「福島第一原子力発電所津波評価の概要(地震調査研究推進本部の知見の取扱)」と題する資料である(以下「津波評価概要」という。甲B72の7の2)。
 津波評価概要は資料の右上に「会議後回収」と大きく印字され,その内容を外部に秘匿することが意図されていた。
 また,津波評価概要の冒頭に記載されている「1.これまでの経緯」には次のような知見が整理されていた。
  • 地震調査研究推進本部の報告として,「三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート間大地震(津波地震),三陸沖北部から房総沖の海溝寄りのプレート内地震(正断層型)の震源域について領域内どこでも発生する可能性がある。」(下線部は原文のまま)とされた。
  • 「専門家に海溝沿いの地震発生の可能性についてアンケートを実施」「地震学者の平均はどこでも起きる方が高い。」
  • 「●●教授(H20/2/26)福島県海溝沿いで大地震が発生することは否定できず,波源として考慮するべきであるとの見解」(原告代理人註:●●はマスキングされているが今村文彦教授のことである)
  • 「○津波の波源不確かさを考慮すべきとする指針の精神,専門家の意見を踏まえ福島沖の海溝沿いを波源とする津波の検討を実施中」
 また同じく津波評価概要の「2.福島第一原子力発電所の計算結果」の「今後の予定」には,次のように記載されていた。
  • 「地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると,現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され,津波対策は不可避。」
 本件説明会は,当初方針が変更された後に開催されたものであるが,被告東電が当初方針の変更にかかわらず,やはり将来的には長期評価に基づく津波対策を講じざるを得ない状況であることを強く認識していたことを示すものである。
「津波対策は不可避」とまで強い調子で記載されていることからも,敷地を越える津波が到来する具体的な危険があるとの認識が,被告東電内で共有されていたことが明らかである。
 この点,上記について被告東電は代表訴訟の補助参加人として「将来的に一定の津波対策を実施する場合には,本件発電所の職員らにも一定の作業負担がかかるなど,様々な影響が及ぶ可能性があることから,その旨を前もって伝えておくために記載されたものである。すなわち,この記載は,他の領域で発生した地震(明治三陸沖地震)の断層モデル(波源モデル)を仮想的に福島県沖海溝沿い領域に置いて行った試行的な計算の域を出ないものである明治三陸試計算の結果が示すような津波が,現実的に襲来する危険性が存在するということを意味するものではなく,そもそも津波対策として特定の内容を前提としたものでもなかった。」と主張する。
 しかし,長期評価に基づく津波対策をせざるを得ない状況にあったことは,上記で指摘した各記載により明らかである。何よりも,被告東電が,資料を会議後に回収してまで外部的に当該情報を秘匿しようとした事実から,いかに被告東電が福島第一原子力発電所への津波襲来を具体的に懸念していたかが理解される。

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 7 平成21年9月10日中越沖地震対応対策打合せ

  (1)審議内容

 平成21年9月10日,中越沖地震対応対策打合せが開催され,「1F・2Fのバックチェックの状況」が議題とされていた(甲B72の6の1)。
 勝俣会長からの「最終報告とは工事まで終了しているということか」との質問に対し,「バックチェックルール上,工事は後で良いことになっているが,最近そうではないという流れもある」と回答されている。
 また被告東電の副社長だった武黒本部長の発言として「もともとは,最終報告前に工事まですべて終了させる予定で国とも合意していたが,中越沖地震の影響でSsの大きくなり,工事物量も増えそれができなくなってきた。」とも記載されている。
 以上から,本来,バックチェックは最終報告までに対応するための工事完了までが予定されていたことが明らかである。
 また被告東電の原子力設備管理課長から「もっと大きな14m程度の津波が来る可能性があるという人もいて,前提条件となる津波をどう考えるかそこから整理する必要がある。」との指摘がなされていた。
 この平成21年9月という時期は,当初方針が変更されてから1年以上を経過していたのであるが,それでもなお,社内に長期評価に基づく津波想定が必要との意見が社内にあったことを意味するものである。

  (2)福島サイト耐震安全性評価に関する状況

 「福島サイト耐震安全性評価に関する状況」は,上記打合せの資料として提出されたものである(以下「平成21年資料」という。甲B72の6の2)。
 平成21年資料の1ページには「耐震安全性評価に関するこれまでの経緯」が整理されているが,これによれば,平成19年8月20日まではバックチェックについての福島第一原子力発電所の最終報告期限は平成21年6月であったことが分かる。
 また,平成21年資料の6ページには「耐震安全性評価報告書の構成(一般的構成)」が記載されているが,その一番下にある項目「地震随伴事象(津波)」には欄外に手書きで「問題あり」と記入されている。平成21年資料が作成された当時にも津波の安全性評価については被告東電社内で議論があったことを推認させる。


 8 小括

 被告東電は,平成20年3月には長期評価に基づいて福島第一原子力発電所の敷地高さを超える津波が具体的に想定されることを認識しており,かつ,平成21年6月に予定されるバックチェック最終報告までに対策をも講じる予定であった。
 また当初方針の変更後も社内的には,敷地高さを超える津波が到来する具体的な危険についての認識が共有されていた。

以上

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