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★ 準備書面(20) −中間指針の位置づけについて−
 第1 原子力損害賠償紛争審査会の示す指針の取り扱いに関する 
被告東京電力の主張の誤り 
2015〔平成27〕年9月18日

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第1 原子力損害賠償紛争審査会の示す指針の取り扱いに関する被告東京電力の主張の誤り
 1 原子力損害賠償紛争審査会の定めた指針に関する被告東京電力の主張
 2 被告東京電力の主張の誤り



第1 原子力損害賠償紛争審査会の示す指針の取り扱いに関する被告東京電力の主張の誤り


 1 原子力損害賠償紛争審査会の定めた指針に関する被告東京電力の主張

 被告東京電力は,2014〔平成26〕年8月29日付被告東京電力共通準備書面(1)(精神的損害の賠償の考え方について)において,「中間指針等に基づく精神的損害の賠償の考え方及びその損害額の指針」は「裁判上も十分に尊重されるべきものである」とし,結語において,「(原子力損害賠償紛争)審査会が定めた『原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針』(原賠法18条2項2号)である中間指針等に基づく被害者の精神的損害の賠償の考え方及びこれに基づきさらに上乗せをして被告東京電力が策定した賠償基準には,その内容において十分な合理性・相当性があることは明らか」と主張している。


 2 被告東京電力の主張の誤り

 しかし,このような主張は,原子力損害賠償紛争審査会(以下,「原賠審」という)の定めた中間指針等の趣旨に反し,その位置づけを誤ったものである。
 そもそも,原賠審の示す指針は,後述するように当事者による自主的解決を支援するためのガイドラインとして策定されたものに過ぎない。個別具体的事情に応じた相当因果関係ある損害全ての賠償額を定めたものではなく,その上限を画するものでもない。このことは,原賠審の審議過程において委員らの間で当初から一貫して確認されており,定められた指針自体の中でも繰り返し言明されている。
 原賠審の示す指針は,内容的にも極めて限定的なものとなっており,裁判所の判断を拘束するものでないことはもちろん,裁判によって判断されるべき賠償額の基準となるものでもない。この点,京都大学大学院法学研究科の潮見佳男教授は,「損害賠償に関する実体ルールを適用して裁判により問題を解決する際には,中間指針等で示された内容に縛られるべきものでもない。」とし,また,「中間指針等には,自主的解決支援のためのガイドラインという性格その他の理由から,賠償に限定をかけたと思われる箇所が少なくない。この傾向が見られる場面では,損害賠償に関する実体ルールによればどのような処理が認められるべきかを明らかにする必要がある」と指摘する(甲D共67・潮見佳男「福島原発賠償に関する中間指針等を踏まえた損害賠償法理の構築」(上))。
 中間指針等に基づく精神的損害の賠償の考え方及びその損害額の指針を,裁判上も十分に尊重すべきとする被告東京電力の主張は,このような原賠審の示す指針のそもそもの位置づけを誤ったものである。

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