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★ 原告準備書面(16) ―津波補論― 
 第4 津波災害予測図 
平成27年6月26日

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第4 津波災害予測図
 1 「津波災害予測マニュアル」の策定
 2 国土庁の津波浸水予測
 3 福島第一原子力発電所立地領域の津波浸水予測
 4 結論



第4 津波災害予測図


 1 「津波災害予測マニュアル」の策定

 平成9年3月、国土庁、消防庁、気象庁、及び、財団法人日本気象協会は、「地域防災計画における津波対策評価の手引き」(7省庁手引き)の別冊として「津波災害予測マニュアル」を策定した。
 このマニュアルは、7省庁手引きによる津波高の試算方法を前提として、津波防災のために、海岸毎に津波の浸水予測値を算出した津波浸水予測を行うための手引きである。平成10年3月26日、国土庁、消防庁、及び、気象庁は、地方公共団体に対し、同マニュアルを通知し、各地域において津波防災対策の強化が推進されるよう促した(甲B49:「『地域防災計画における津波対策強化の手引き』及び『津波災害予測マニュアル』の策定について」)。
 なお、同マニュアルの調査委員には、「津波評価技術」(平成14年)、の策定の際の主査である東北大学工学部首藤伸夫教授、「長期評価」(平成14年)策定時の地震調査委員会委員、阿部勝征教授、佐竹健治教授らも名を連ねている (甲B6)


 2 国土庁の津波浸水予測

 平成11年、国土庁は、「津波災害予測マニュアル」(甲B50)をもとに、「津波浸水予測図」を作成した。これは、全国で412領域を設定し、各領域において設計津波高2、4、6、8mとなるよう津波波形の設定を行い、各領域の浸水域を試算したものである。
 ここで、「津波災害予測マニュアル」はT.P.(Tokyo Peil:東京湾平均海面。全国の標高の基準となる海水面の高さ。「東京湾中等潮位」とも呼ばれる。)を基準とするため、これをO.P.に換算[7]すると、2.7m、4.7m、6.7m、8.7mである。
 「津波浸水予測図」は津波防災対策に資することを目的として作成されたものであり、国土庁防災局震災対策課は、これを「地方公共団体その他防災機関へ提供する予定である。これを利用することにより、津波に関する防災計画を検討する際の貴重な資料となることが期待される」と述べている。したがって「津波浸水予測図」国土庁の内部資料ではなく外部にも公開しており、その内容について、被告国はもとより、被告東電も知り得た又は知っていた(甲B51:「津波浸水予測図の作成とその活用」)。

[7] O.P.±0.0m=東京湾平均海面(T.P.)-0.727m

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 3 福島第一原子力発電所立地領域の津波浸水予測

 上記津波浸水予測図の福島第一原発が立地する領域(双葉町南部、大熊町)における、津波高O.P.+8.7メートルを仮定した場合の浸水状況は[図1]【図省略】(甲B52)のとおりである。[図2]【図省略】の左上の図は[図1]を拡大したものである。[図3]【図省略】は[図1]と[甲A2-10(政府事故調中間報告資料編)]を重ねあわせたものである。
 図1、図3は、設計津波高O.P.+8.7メートルの津波により1号機乃至4号機の敷地のほぼ全域が浸水することを示している。また、設計津波高O.P.+6.7メートルの津波でも、敷地が広く浸水することが示されている[8][図2:右上の図参照、図4参照【図省略】 甲B53乃至55]

[8] 比較のために、設計津波2m(甲B55)、4m(甲B54)、及び6m(甲B53)の場合の浸水域を図2に示す。


 4 結論

 国土庁作成の津波浸水予測図から、設計津波高8.7メートルの津波によって福島第一原発の1.4号機の敷地は浸水することがわかる。また、津波浸水予測図は、設計津波高6.7メートルの津波であっても敷地の大部分が浸水するとの結果を示している。
 被告国は「津波災害予測マニュアル」「津波浸水予測図」を公開しており、被告東電は上記資料の示す事実を認識していた。

以上

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