TOP    裁判資料    会報「原告と共に」   げんこくだより   ブログ   リンク

★ 「原告と共に」No.10 2015年11月発行 

● コンテンツ
全8ページ
クリックするとPDFで読めます。

● 第11回口頭弁論の傍聴に来てください!

 9月29日の第10回口頭弁論は、抽選には至らなかったものの、開廷までに用意された傍聴券は全てなくなりました。

 今回、原告側は4つの準備書面を提出し、準備書面(22)―因果関係論:事故後の事情に基づく避難と避難継続の相当性―について、高木野衣弁護士がプレゼンを行いました(2面に概説を掲載)。

 その後、第3次原告のお二人が意見陳述をされました。緊張されたと思いますが、お二人とも素晴らしい陳述でした(3〜4面に小林雅子さんの意見陳述を掲載)。

 期日報告会では、DVD『謝れ!まやえ!―原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)結成』を上映。原告の宇野さんと共同代表の福島さんからの報告に続いて、日本科学者会議京都支部の宗川吉汪さん(京都工芸繊維大学名誉教授)が「福島原発事故による小児甲状腺がんの67%以上が原発事故によって発症したと推定される」という分析結果をまとめたと報告されました。

 いま政府・福島県は避難者住宅の無償提供を打ち切り、避難者に汚染地域への帰還を強要しています。当会は10月25日に、他団体と共催で、帰還政策を批判する「いのちと避難生活をまもる第4回京都公聴会」を開催しました(4〜6面に報告を掲載)。また現在、「避難用住宅の提供打ち切り撤回と、避難用住宅の長期無償提供を求める署名」、「避難先にとどまる原発事故避難者の住まいの安定を求める署名」に取り組んでいます。ぜひ、ご支援・ご協力をお願いします。

 △ページトップへ

● いのちと避難生活をまもる京都公聴会を開催

 10月25日、キャンパスプラザ京都で「政府・福島県は帰還政策の撤回を!私たちをこれ以上被ばくさせないで!!いのちと避難生活をまもる第4回京都公聴会」を開催しました。13時〜17時という長時間の集会であったにもかかわらず、70名を超える避難者・支援者の参加がありました。

 最初に主催者を代表して、うつくしま☆ふくしまin京都代表であり、原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会事務局長の奥森祥陽さんが報告と提案を行いました。報告の要点は、以下のとおり。
  • 政府・与党は「帰還困難区域」(年間50ミリSvを超える地域)を除く避難指示区域について、「避難する状況にはない」として2017年3月までに避難指示を解除することを閣議決定した。
  • 福島県は災害救助法に基づく「見なし仮設住宅」の無償供与期間を2017年3月までとし、それ以降は「新たな支援策」で対応するとしている。
  • だが、その中身は2年だけ家賃の一部を補助するというものであり、避難者を切り捨てるものだ。
  • ウクライナでは無料の健診や長期保養などが実施されてきたが、事故から30年近く経った今でも「100%健康な子どもはいなくなった」と言われている。
  • 福島県でも甲状腺がんの多発をはじめ、さまざまな健康被害が発生している。
  • 政府と福島県に、被ばくを強要する帰還政策の撤回と避難の継続、移住を希望する被災者への全面的支援策の実施を求めていく。
 今後の取り組みは以下のとおり。
  • 「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の2017年3月末解除方針の撤回を求める。
  • 「避難用住宅の提供打ち切り撤回と避難用住宅の長期無償提供を求める署名」(全国7当事者団体呼びかけ)、「避難先にとどまる原発事故避難者の住まいの安定を求める署名」(キビタキの会呼びかけ)に取り組み、政府・福島県交渉を行う。
  • 各地で避難者懇談会・聞き取り活動を行い、政府・福島県・避難先自治体への要請書を確立する。
  • 福島県以外からの避難者の聞き取りを行い、県交渉を開始する。
  • 「放射能健康診断100万人署名」を取り組み、政府・福島県・近隣県への交渉を行う。
 そのあと、公聴会への参加招請に応えて参加された民主党の京都府議会議員の田中健志さん、共産党の京都市議会議員団長の山中渡さんから挨拶をいただきました。

 第1部は、「子ども脱被ばく裁判」弁護団長の井戸謙一弁護士による「政府の帰還政策批判と子ども脱被ばく裁判の意義」と題した講演でした。その要点は、以下のとおり。
  • 公衆の法定被ばく限度は年1ミリSVだが、これは原爆症認定の基準にもなっている。1ミリSVというのは爆心地からわずか3キロ強の所にいた人が受ける被ばく線量だということだ。
  • 福島県以外では年1ミリSVを超える放射線量が検出された場所が立ち入り禁止となっており、福島県民だけがその他の国民とは異なる基準(年20ミリSV)が適用されている。
  • 年1ミリSV自体が、それ以下なら無害というわけではなく、我慢すべき量でしかない。
  • 原発事故以降、政府・行政は情報を隠蔽し、安定ヨウ素剤を投与せず、山下俊一氏を使って安全宣伝を繰り広げ、校舎利用基準をなし崩し的に20ミリSVに引き上げた。
  • そして今、帰還政策が推進されているが、これは東京オリンピックまでには帰還困難区域以外は元通りにするという政策だ。
  • 福島では、突然死が増え、がんの進行が早くなり、白内障など急激に目が悪くなる人が増えている。WHO(世界保健機構)も、全固形がんや乳がん、白血病の増加を予測している。福島県浜通り・中通り一帯の土壌が放射線管理区域並みに汚染(4万ベクレル/平方m)されている。
  • こうした中で、福島県をはじめ全国で裁判が闘われている。「子ども脱被ばく裁判」のうちの子ども人権裁判は、子どもが「安全な環境(追加実効線量が年0.3ミリSV以下の環境)で教育を受ける権利があることの確認」を求めるものだ。
  • 一部専門家という人たちが「年100ミリSV以下なら健康被害はない」と言うが、もともとは「累積100ミリSV」だったものを「年100ミリSV」にすり替えた。年20ミリSVでも5年以上経てば「累積100ミリSV」を超える。
  • 海外の調査研究では10ミリSVWでがん死が3%増えるということが分かってきている。声を上げないと被害はなかったことにされてしまう。
 そのあと、大飯原発差止訴訟 (京都地裁)を争っている京都脱原発原告団の吉田明生事務局長から、第4次原告への参加の訴えがありました。

 第2部の初めに、放射能健康診断100万人署名運動実行委員会の三浦さんから、南相馬市、川俣町などを激励訪問した際に撮影したビデオを上映して、現地の汚染実態や放射能健診署名活動を通じた市民の反応などの報告がありました。

 そのあと医療問題研究会の高松勇医師(内科医)による「福島で進行する低線量・内部被ばく、甲状腺がんの異常多発とこれからの広範な障害の増加を考える」と題した講演でした。その要点は、以下のとおり。
  • 放射線量が4万ベクレル/平方mを超える汚染地帯が広範に存在するが、チェルノブイリ事故で同レベルに汚染された全地域でさまざまな病気の総罹患率が上った。
  • 福島では第1巡目甲状腺スクリーニング(先行検査)で112人(約30万人が受診)、第2巡目甲状腺スクリーニング(本格検査)で25人(約17万人が受診)、計137人の甲状腺が見つかっている。甲状腺がんは年齢とともに増えていく傾向があり、14歳以下ではほとんど見られない(発症する人は10万人に0・2人以下)。
  • 全国の甲状腺がん発生率と比較するためには、発見率を平均有病期間で割る必要がある。そうした補正を加えて比較しても、低い地域で20倍、高い地域では50倍の異常多発だ。
  • 各年次ごとの発見率をチェルノブイリでの発見率と比較しても、チェルノブイリの汚染地域に匹敵する数値だ。これがスクリーニング効果でないことは、チェルノブイリ事故で汚染されなかった地域での集団検診では7万人のうち1人しか発見されなかったことで明らかだ。
  • 「過剰診断ではないか」と疑う声もあったが、手術した54例は「手術を要するほどの臨床がん」であったことが判明している。
  • 本格検査の結果でも、放射線量が高かった地域では全国発生率と比較して20倍から50倍の異常多発となっている。
  • WHOも「原発事故健康リスク評価」(13年2月)の中で、1歳の年齢グループについて15年間の甲状腺がん罹患リスクを推計しており、浪江町の男児7・4倍、女児9・0倍、飯舘村の男児4・6倍、女児6・0倍の増加を見込んでいる。◇こうした健康被害は福島県にとどまらない。北茨城市でも3人の甲状腺がん患者が見つかったが、文句なしの異常多発だ。
  • 健康被害は甲状腺がんだけではない。福島近隣7県では死産や新生児の死亡が増えているし、近隣4県では急性心臓死が増えている。チェルノブイリ事故では幅広い健康被害が生じ、今も続いている。
  • 被ばく軽減策としての避難、保養、食の安全が必要。帰還政策は撤回されるべきだ。今後の健康被害の拡大に備えて、健診・医療体制の整備が求められる。
 第3部は、避難者からの訴え(公聴会)でした。
  • 郡山市からの避難者で原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんは、内閣総理大臣と福島県知事宛に書いた手紙を朗読するという形で発言。「福島が元の状態に戻るなら、今すぐにでも戻って生活したい」との避難者の思いを語りながら、避難という選択肢を選んだ者を支援する制度がない現状を告発。「命と健康を守る行為こそ原則」と強調しました。
  • 福島市から避難した齋藤夕香さんは、避難生活に追われながらも、福島に残っている子どもたちを保養に出させたいと保養事業をやり、若い人に伝えなくてはと大学に出かけて行って話をしていると報告。
  • 福島市から避難した小林雅子さんは、福島での安全キャンベーンを紹介し、福島では情報が遮断され声を出しにくい状況なので、声を上げられる所から声をあげて行きたいと思いを語りました。
  • 福島市から避難した宇野朗子さんは、帰還政策は「被ばくか貧困か」を選ばせようとする非人道的なものと批判し、全国の避難者がつながっていこうと10月29日に「避難の権利」を求める全国避難の会を結成すると報告。
  • いわき市から避難した高木久美子さんは、「残っても地獄、避難しても地獄だ」と悩んだが、避難できたのは無償住宅があったからで、打ち切り撤回するために知恵を貸してくださいと訴えました。
 来場していた避難者も発言。
  • 田村市から避難した鈴木絹江さんは、リスクを抱えている人(原発作業員、障害のある人)の実態調査をやってもらえる先生、会計から見た帰還政策を明らかにしてくれる先生がおられたら教えてほしいと情報提供を呼びかけ。
  • 南相馬市から避難した青田勝彦さんは、昔から反原発闘争をやってきて、今も滋賀県で運転差し止め訴訟に参加している。声を絶やさず上げ続けることが大事だと訴えました。
  • 原発賠償京都訴訟原告団共同代表の福島敦子さん(南相馬市から避難)は、避難者は「被ばくか貧困か自殺か」を迫られている、ぜひ裁判を傍聴Lに来てくださいと支援を訴えました。
 まとめの発言に立った奥森さんは、「『一人も路頭に迷わせない』を合言葉に、絶対に譲らずに取り組む」と決意を述べ、来場者の支援を訴えて全日程を終えました。

 △ページトップへ

原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
  〒612-0066 京都市伏見区桃山羽柴長吉中町55−1 コーポ桃山105号 市民測定所内
   Tel:090-1907-9210(上野)  Fax:0774-21-1798
   E-mail:shien_kyoto@yahoo.co.jp  Blog:http://shienkyoto.exblog.jp/
Copyright (C) 2017 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会 All Rights Reserved. すべてのコンテンツの無断使用・転載を禁じます。