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★ 「原告と共に」No.8 2015年6月発行 

● コンテンツ
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● 第9回口頭弁論の傍聴に来てください!

 5月26日の第8回口頭弁論には多くの方が傍聴に来ていただいたお蔭で、抽選となり、法廷を満杯にすることができました。

 原告側は、「実際に到来した15mの津波は予見されていなかった」という被告側の主張を批判。10mに満たない津波でも防波堤(10m)を超え、敷地に水が溢れ、事故に至る危険性があった。福島沖でも「M8クラスの地震が発生する可能性がある」との長期評価も出ており、敷地高を超える津波の到来は予見できた、と主張しました。

 期日の2日前に公表されたIAEAの「福島第1原発事故に関する最終報告書」も、東電が最大約15メートルの津波が到達すると試算しながら対策を取らず、原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかったと批判し、安全への過信が事故につながったと指摘しました。

 それ以降6月上旬にかけて、原告を含む避難者たちは、「みなし仮設住宅」の無料提供打ち切り(2017年3月で)方針の撤回を求めて、福島県大阪事務所への要請、福島県への無償住宅の長期延長署名の提出、東京での院内集会への参加、福島県議会各会派への請願などさまざまな行動を展開しました。

 打ち切りが強行されれば、現在の生活を維持できなくなる世帯が少なからず存在します。裁判への支援とともに、住宅をめぐる避難者の闘いへのご支援もよろしくお願いします。

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● 明らかになる東電の不作為

 大手新聞はいまだに報道しませんが、国際的な原発推進機関であるIAEAが、日本政府と東電が大津波の対策を怠り、過酷事故対策でも国際的慣行に従っていなかったことが福島原発事故につながったとする報告書をまとめました。また東電が「津波対策は不可避」とする内部文書を配布していたことが明らかになりました。
大津波の危険対策怠る IAEA報告書全容判明
【ウィーン共同=宇田川謙】国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第1原発事故を総括し、加盟国に配布した最終報告書の全容が24日、判明した。東電や日本政府の規制当局は大津波が第1原発を襲う危険を認識していたにもかかわらず実効的な対策を怠り、IAEAの勧告に基づいた安全評価も不十分だったと厳しく批判した。
 報告書は42カ国の専門家約180人が参加して作成。要約版約240ページが6月のIAEA定例理事会で審議された後、9月の年次総会に詳細な技術報告書と共に提出される予定で、国際的な事故検証は大きな節目を迎える。事故の教訓を生かした提言も含まれており、今後、各国の原発安全対策に活用される。
 再稼働へ向けた動きを進める電力各社に対し、安全対策の徹底を求める声も強まりそうだ。
 報告書では、東電が原発事故の数年前、福島県沖でマグニチュード(M)8・3の地震が起きれば、第1原発を襲う津波の高さが最大約15メートルに及ぶと試算していたが、対策を怠ったと批判。原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかったと指摘した。
 背景には原発は安全との思い込みがあり、IAEAが各国に勧告する安全評価方法を十分実施せず、非常用ディーゼル発電機などの浸水対策を欠いていたとした。(以下、略)
◎最終報告書要旨(抜粋)
【ウィーン共同】国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第1原発事故を総括した最終報告書の要旨は次の通り。
◇(自然災害など)外的な危険要因に対する原発の脆弱性について、体系的で総合的な方法で見直したことがなかった。
◇東電は福島県沖でマグニチュード(M)8・3の地震が発生すれば最大約15メートルの津波が第1原発に達すると試算していたが、対策を取らなかった。原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかった。
◇2007年の訪日調査で「日本には設計基準を超える事故について検討する法的規制がない」と指摘、保安院が安全規制の向上に中心的な役割を果たすよう求めた。
◇第1原発の設計は、津波のような外的危険要因に十分対応していなかった。IAEAの安全基準で勧告された確率論的安全評価(PSA)による審査は十分実施されず、非常用ディーゼル発電機の浸水対策などが欠けていた。
◇事故当時の規制や指針、手続きは重要な分野で国際的な慣行に十分従っていなかった。10年ごとの定期安全レビューでは外的な危険要因の再評価が義務付けられていなかった。過酷事故の管理や安全文化でも国際慣行との違いが目立った。
◇日本では原発が技術的に堅固に設計されており、十分に防護が施されているとの思い込みが何十年にもわたり強められてきた。その結果、電力会社や規制当局、政府の予想の範囲を超え、第1原発事故につながる事態が起きた。
(以下、略)
*なお、同報告書は福島原発事故の影響については、「子どもの甲状腺被ばく線量は低く、甲状腺がんの増加は考えにくい」など、原発推進のために健康被害を小さく見せる点で日本政府と同じ立場に立っています。
東電「津波対策は不可避」 震災2年半前に内部文書
(東京新聞6月19日朝刊)

 東京電力福島第1原発事故で、東電が2008年、同原発について 「津波対策は不可避」と記した内部文書を作成し、社内会議で配っていたことが分かった。東京地裁で18日開かれた原発事故をめぐる株主代表訴訟の口頭弁論後、株主側の弁護団が明らかにした。これまで東電は「大津波を予測できなかった」と主張してきたが、事故の2年半前に対策の必要性を認識しながら、先送りした実態が浮かんだ。
 文書は、東電本店が作成し、08年9月10日に福島第1原発で開かれた会議で配られた。会議では国の耐震安全性評価への対応を本店の担当部署と福島第1原発幹部が協議し、当時、同原発所長だった小森明生(あきお)元常務も出席していた。機密性が高い情報として、文書は会議後に回収された。
 弁護団によると、文書には、福島第一原発沖合を含む海域で、マグニチュード(M)8クラスの地震津波発生の可能性があるとした政府の地震調査研究推進本部(推本)の予測を「完全に否定することが難しい」と記載。「現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され、津波対策は不可避」と記していた。
 東電は推本の予測に基づき08年3月、最大15・7メートルの津波を独自に試算していたが、「試行的な計算の域を出ず、具体的な対策に用いられるものではない」と説明してきた。
 閉廷後の記者会見で弁護団の海渡雄一弁護士は「これまでの説明と違い、08年の段階で東電は津波対策が不可避だとはっきり認識していたことを示している」と指摘。東電側は訴訟の準備書面で、文書について 「将来的に何らかの津波対策が必要になる可能性は否定できないため記載した。津波対策として特定の内容を前提としたものではない」と主張している。
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● 報告 ひだんれんが設立される!

 5月24日、福島県二本松市において「ひだんれん」(原発事故被害者団体連絡会)の設立集会が開かれ、京都原告団も参加を決め、代表団を派遣しました。そのうちの一人で、当旦月都原告団として蓼言した菅野千景さんに集会の様子を報告してもらいました。

  ひだんれん設立集会に参加して 管野千景さん

 手をつなごう!立ち上がろう!」 集まった皆さんでつないだ手はあたたかく、皆一緒だぞ!諦めねぞ!負げねぞ!という力が伝わってきました。

 5月24日福島県二本松市で、「ひだんれん」設立集会が開かれました。この日の二本松はとても暑かったですが、日本全国から避難している人々など約300人が集まりました。京都原告団からは、宇野朗子さん、鈴木絹江さん、福島からかけつけて下さったOさん、菅野と4名が参加しました。

 原発事故から五年目の夏を迎えますが、これほどの事故を起こしたというのに事故の真相ははっきりしておらず、正確に言うなら原発事故は危険な放射能により検証すらできません。そしてそのような危険な原子力発電に携わる東電からも国からも、誰一人事故の責任は問われず、それどころか東電は数千億円という利益を上げ、原発の再稼働がどんどん進められようとしています。

 決して元通りにはできないのに除染と言っては放射能に汚されてしまった土や樹木を集めて積み上げ、避難区域も解除しまだまだ人々の暮らすことのできる環境が整わないのに無理やり帰そうとしています。

 避難している人々の住宅の支援を打ち切り、更に苦しめようとしている。この事故を小さいものにし、無かった事にしたいから。それはどうして?東京オリンピック、原発の輸出、原子カムラの仲間達がもっと儲けたい、事故を起こしたけれどこんなに早く事故処理ができる世界の誇る高い技術と言いたい、だから大切な子ども達とおとなの健康被害もすべて関係が無いとしたいから…。愚かな私が思い感じるのはこれぐらいですが、どちらにせよはっきりしていることは血も心も通っていないということです。

 集会は、長谷川健一さんの挨拶に始まり、京都造形大教授の秋山豊寛さんの講演、各参加団体の活動報告、安田行雄弁護士、作家の広瀬隆さん、海渡雄一弁護士の挨拶がありました。

 被害にあった皆さんのお話はそれぞれの苦しみ悲しみと意気込みが感じられ胸が熱くなりました。皆さんが今までにどれだけの涙を流し、ささやかな幸せを取り戻したい、子どもの未来を守ってあげたいと、変えられてしまった慣れない暮らしの中で声をあげてきたことか。

 最後に武藤類子さんが「ひだんれん設立宣言」を読み上げました。「…私たちは手をつなぎ、立ち上がります。そしてすべての被害者の結集を呼び掛けます。」

 こうして13団体2万3千人が手をつなぎ、立ち上がりました。


「手をつなごう!立ち上がろう!」
原発事故被害者団体連絡会設立宣言
(抜粋)

 私たち原発事故による被害者は、互いの困難を分かち合い、二度と同じ悲劇を繰り返さないために、国と東電に対し、被害者の責任として本当の救済を求め、次の目標を掲げます。
  • 被害者への謝罪
  • 被害の完全賠償、暮らしと生業の回復
  • 被害者の詳細な健康診断と医療保障、被曝低減策の実施
  • 事故の責任追及
 ひとりひとりはささやかな存在であっても、つながることが力となります。
 互いの困難を聞きあうことで、苦悩を分かち合うことができます。互いを励ますことで、勇気が溢れてきます。
 私たちは、諦めることをしません。口をつぐむことをしません。分断され、バラバラになることをしません。
 私たちは手をつなぎ、立ちあがります。そして、すべての被害者の結集を呼びかけます。

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原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
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