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★ 「原告と共に」No.1 2014年4月発行 

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● 認めろ!避難の権利 守れ!子どもの未来 原発賠償京都訴訟 始まる

 福島などから京都に避難している33世帯91人の方が、国と東京電力を相手取り損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が、2月7日京都地裁で始まりました。
当日は、傍聴席(88席)を上回る多くの支援者の方が傍聴に駆けつけ、社会的にも大きくアピールすることができました。

 3月7日には、20世帯53名の方が第2次集団提訴を行い、51世帯144名の原告団となりました。原発事故から3年目の3月11日までに、全国17裁判所に6,675人が提訴し、国と東京電力の責任を追及する闘いは大きなうねりとなっています。

 この裁判の意義は、第1に原発事故による放射能汚染による健康被害、とりわけ子どもの命と健康、未来を守るために、「避難という選択をしたのは正しかった」ことを社会的に明らかにし、すべての損害を東京電力と国に賠償させることです。

 第2は、東京電力や国の加害責任を追及することです。東京電力は大地震と津波は想定外の事態であり、原発事故は自然災害によるものとして自らの責任を回避し続けています。安全神話をふりまき、必要な安全対策を意図的に先送りしたり、不作為であったことの責任を追及することです。

 第3は、東京電力と国は、原発事故の発生以来、市民に正しい情報を伝えず、真相を明らかにしていません。この裁判は、福島原発と放射能汚染の状況について、原発事故当時はどうであったのか、そして現在はどうなのか、そして未来はどうなるのか、その真相を余すところなく明らかにさせることにあります。

 第4は、この裁判を通じて、原発事故被災者、避難移住者に対する放射能健診、医療、健康管理、総合相談事業、生活の保障・援助、住宅提供、自立生活の促進、雇用対策などの恒久対策を、国と加害企業である東京電力に実施させていくことです。

 さらには、訴状では十分には触れられていませんが、「国内強制移動に関する指導原則」や国連「健康に対する権利」特別報告者アナンド・グローバー氏の日本政府への勧告など、国際基準に基づいて、国の責任を追及していくことがきわめて重要です。

 私たちは、原告の思いと裁判への立ち上がりに応えて、昨年10月20日に京都原告団を支援する会を結成しました。

 支援する会ではこの間、原告団を財政的に支えるべく、会員拡大に取り組んできました。現在、一般会員は200名を超え、20世帯を超える原告の方にも会員になっていただいています。また、原告同士の交流を深めるために「原告昼食交流会」(2月1日)を開催し、裁判の意義を広げていくために「原告のお話会」を京都市伏見区(1月25日)と宇治市(2月2日)の2か所で開催してきました。さらに、お話会に参加し話をしていただいた原告や弁護団主催の訴状勉強会(昨年12月7日) に参加された原告の方々に、「交通費」を支給し、ささやかながら原告の活動を財政的に支援してきています。

 今後も、原告団の闘いを支え、勝利するまでともに歩んでいきます。
 みなさん、支援する会に加入してください。年会費は一口1,000円、複数口も大歓迎です。知人、友人などまわりの方に支援する会のことを広めてください。

 2月7日の第1回口頭弁論では、原告共同代表の福島敦子さんと萩原ゆきみさんが意見陳述し、傍聴席から大きな拍手が起こりました。川中宏弁護団長が意見陳述した後、三上侑貴弁護士と森田基彦弁護士が原発事故後の放射能汚染の広がりなど原告ら避難指示区域外の人たちが避難せざるを得なかった背景、および東電と国が地震、津波、過酷事故への対策を怠ったために原発事故が起こり原告らが損害を受けたという因果関係について、プロジェクターを使ってプレゼンを行いました。

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● (意見陳述)弁護団長 川中宏弁護士

 裁判の初めに弁護団を代表して一言述べさせていただきます。

 この裁判を提起した33所帯、91人の方々はもともと京都の人たちではなく、遠く福島県や茨城県から、京都に避難してきた人たちであります。3年前までは、原告らのうちの誰が、まさか箱根の山を越えて京都に移り住んで、京都地方裁判所に損害賠償の裁判を起こすことになろうなどと考えた人がいるでしょうか。誰もおりません。原告らは、いずれも3年前に発生した被告東京電力の原発事故によって、人生を狂わされ、住み慣れた故郷を離れ、家族、友人とも別れて、見知らぬ京都で日々辛酸を嘗める生活を余儀なくされている人たちなのです。

 福島第1原発の爆発により空中に放出された放射線量は、広島に落とされた原子爆弾の約20個分に相当すると児玉龍彦という東大教授は国会でも証言し、また本にも書いておられます。改めてその凄さに驚くわけですが、当時を思い返してみると、枝野幸夫官房長官は記者会見で 「この線量は直ちに健康に被害を与えるものではない。安心して下さい」を繰り返しておりました。そのことを信じて、爆発事故が起こってからでも避難もせず従前同様の生活をしていて、高濃度の放射性物質を摂取してしまった方が福島県にはたくさんおられます。

 枝野官房長官の発言は外部被爆に限って言えばまちがいでなかったかもしれません。しかし、内部被曝、すなわち低線量の放射性物質が人間の内部に摂取され蓄積されると、それが細胞を攻撃し、遺伝子を傷つけ、20年後、あるいは30年後かも知れないが、ガンなどを発症させる危険性があることを全然考慮していなかった点では明らかに間違っております。テレビなどを通じて多くの人々を危険にさらした点では犯罪的だったと言っても過言ではないと私は思います。

 本件で原告らが問題にするのは内部被曝による健康被害の危険性です。訴状では、「晩発生の症状」と表現しておりますが、いまは何にも障害が現れてなくても、何年先、何十年か先にはガンなどを発症させる危険性があるわけです。それが放射性物質による内部被曝の本質なのです。そしてその本質的危険性は、細胞分裂を活発に繰り返して成長していく子どもの場合には、大人の数倍に及ぶと言われております。

 原告らはこういう被害を避けるために、自分を含め家族の、とりわけ子どもの健康を守るために避難を余儀なくされているのであります。そのことによるすべての損害は当然被告東電と国が償うべきである、これが原告らの基本的立場です。

 次に、原告らの出身地では、福島第1原発から20キロ圏内にある南相馬市、富岡町は言うに及ばず、福島市でも郡山市でもいわき市でも、原発事故発生後3年経ったいまもまだ放射線量が高く、従って平成26年になってからもなお除染作業が継続的に実施されております。関西に住んでいる私たちはそういう情報に接する機会があまりないためについ忘れがちですが、避難元の地域は3年経ったいまなお放射線物質による深刻な汚染が続いているのです。

 除染をしても放射性物質をゼロにはできません。除染事業を実際に進めている各自治体はせめて50パーセントに減らしたいと言う目標を持っていますが、現実には80パーセントになっただけという報告もなされております。

 その上にまだ問題があります。住宅地を除染した際の汚染土壌や枯葉などの汚染廃棄物がどこに処分されているのか。どこにも持って行きようがないので、ビニールの袋に詰めてその除染した家の庭に埋めているのです。学校の校庭、公園ではその校庭や公園内にビニールシートを被せておいたままにしておりますし、道路などの場合は道路脇においたままにしております。その脇を子どもたちや住民たちが通行しているのです。これでは除染に全然なっていないと言うべきなのではないでしょうか。

 しかし、これが放射性物質に汚染された地域の現実なのです。放射線量を少しでも減らす方策は除染しかない。従って除染をやる。それでも効果はあまりあがらないのです。

 さらにまた汚染水の問題があります。安倍首相は、昨年のIOC総会で、「状況は完全にコントロールされている」 と言い放ちましたが、とんでもない虚言でして、真実は毎日300トン(ドラム缶1500本に相当します) の汚染水が海に流出しているのに、これを防ぐ有効な方法が見つかっていないという状況なのです。

 このように放射能に汚染されてしまったふるさとには、残念ながら帰りたくても帰れないと原告らが思うのは当然ではないでしょうか。即ちいまなお原告らの避難の社会的相当性は継続しているのです。

 こう言えば、福島には避難せずに生活し続けているたくさんの人がいるのをどう考えるのかという反論があり得るかも知れません。しかしながら、福島に現に残り住み続けている人たちの誰一人として、福島が安全で安心できるなどと思っている人はおりせん。出来れば避難したいと思いながら、いろいろなしがらみ、商売のこと、避難先での生活上の不安などから、避難を実行できず、子どもを外で遊ばせないなど自衛の手段を取りながら、相当のストレスを感じつつやむを得ず福島で生活を続けているのです。

 個人的なことを申し上げて恐縮ですが、私自身は福島県いわき市の出身で、田舎には4人のきょうだいたちとその縁につながる甥、姪たち、さらにその子どもたちや小・中学校の同級生たちが住み続けております。友人の一人はこう言いました。「70を過ぎて今さら避難なんか出来ねべえ。孫は何とかしてやりたいと思うけど、それも叶わないし、内部被曝しても病気になると決まったわけじゃないンだから、それに輝けるしかねえべよ」。

 人それぞれの生き方がありますから、こういう選択についてわたくしがとやかく申し上げることはありません。こういう考え方、生き方も一つの生き方でしょう。しかし、ここで明確に言えることは、こういう人たちがいることをもって原告らの生き方、選択が否定されては決してならないということです。原告らが避難しているのは、みずからの運命を切り開いて健康に生き、人間としての尊厳を貫くためであります。

 そのことに共感し、理解を示してこそ司法の存在意義と役割があるのだと私たちは思います。そして、熱く期待もしております。

 そういう審理を切に要望致しまして、陳述を終わります。

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