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★ 「原告と共に」No.44  2023年7月発行 

● コンテンツ

最高裁不当判決を覆そう 大阪高裁の裁判官にも届いたコール


      

 6月17日は、昨年最高裁第二小法廷が先行4訴訟(生業、群馬、千葉、愛媛)について、「想定を超える規模の地震・津波だったので、仮に対策をとっていたとしても事故を防ぐことはできなかった」という粗雑な論理で、国の責任を否定する不当な判決(多数意見)を言い渡してから一周年でした。

 17日が土曜日だったため、16日に4訴訟原告団は最高裁に請願を提出しました。その趣旨は、①後続の事件が最高裁に上がってきた場合は、形式的な上告棄却・上告不受理決定をすることなく、徹底的に審理を行ない、国民の理解を得られる公正な判断をすること、②後続事件を担当する裁判官の出身や経歴に照らし、その判断の公正さに疑いをもたれるようなことがないよう裁判官の公正さを担保する措置を講じることというものでした。

 4訴訟原告団がこの請願を提出した背景には、①6・17最高裁判決(多数意見)についての法律学者による評釈も「国の賠償責任の否定という結論を先行させているきらいがある」、「結論に至る理由(法律論)の見当たらない『理屈なき結論』ともいえるようなものであり、民事訴訟手続上の問題がある」、「速やかに変更されるべき」など疑問を呈するものばかりであること、②多数意見を書き、支持した3人が国や東電と関係のある法律事務所の出身だったり、逆に退官してその法律事務所の顧問におさまったり、判決の公正さを疑わせる人脈が明らかになったという事情があります。

 この6月から8月にかけて、千葉2陣訴訟、新潟訴訟、かながわ訴訟、東京訴訟(いずれも東京高裁)、だまっちゃおれん愛知岐阜訴訟(名古屋高裁)などが結審を迎え、京都訴訟も少し遅れて結審を迎えます。

 京都訴訟では、下級審が最高裁不当判決に追随する流れを断ち切り、大阪高裁に自分の頭で考え、良心に従って判決を書いてもらうために、第18回控訴審期日の6月6日、初めて「100人アピール行動」を提起し、裁判所前で事前集会を行ない、裁判所を一周するパレードを実施しました(2~3面参照)。次回期日(9月26日)には「200人アピール行動」をやります。みんなで一周パレードをして傍聴席を満杯にしましょう。

      


●6/6 100人アピール行動・控訴審第18回期日報告集会

6月6日、京都訴訟第18回控訴審期日のこの日、原告と支援スタッフは11時半に大阪高裁の向かい側(南側)にある西天満若松浜公園に集まりました。12時15分からの100人アピール行動の準備のためです。生憎の小雨の中、テントを張り、中にテーブルを置いて、片面に「原発事故は国の責任です」と書いたメッセージボードを並べました。

 続々集まってくる参加者にそのメッセージボードの何も書いていない面に思い思いの言葉を書いてもらいます。メッセージを書いた人には、そのボードを持って向かい側(裁判所側)の道路に移動してもらいます。

 12時15分、いよいよ集会の始まりです。公園にビールケースを逆さに据えたお立ち台に京都訴訟原告の萩原さんが上がり、「他の裁判所の敷地内で被告代理人の岡内さんにお会いした時に『岡内さん、いつも有難うございます。今日もどうぞ宜しくお願いします。』と挨拶をしました。心の中では原告の仲間になってもらいたかったから」と開会のあいさつをし、そのあと京都の原告が次々に3分間アピールをしました。

       

・「年内結審とも言われており、悔いの残らないよう闘い抜きたい。…国に責任はないという最高裁判決は恥ずかしい判決だと思う。それを覆すために大阪高裁で勝利判決をかちとりたい」(川崎さん)

・「昨年、判決の日に最高裁前に行った。本当に残念な判決だった。…私たちだけの裁判ではない。国民全体にとって大事な裁判なので、ぜひ応援してほしい」(高木さん)

・「4~5月に福島市に帰省してきた。川俣町の山の中で採れたコシアブラを兄が持って来て、天ぷらにしてみんなで食べた。こちらに戻ってから、測定所で測ってもらったところ、かなり高い数値が出た。向こうにいる家族はそういう風に普通に暮らしている」(堀江さん)

・「昨年の最高裁判決の時、東京に行った。何をしても事故は起きる。だから国に責任はないというふざけた判決だった。大阪高裁の裁判官は、自分の頭で考え、良心に従って判決を書いてください。三権分立がちゃんと機能していることを示してほしい」(小林さん)

・「原発が爆発して、誰が責任を取ったでしょう。原発事故は国の責任です。『ごめんなさい、間違ってました』と言わせなければいけない。そのために私たちはこのような裁判に訴えることにした。皆さんも自分のことだと思って、一緒に考えてほしい」(小山さん)

 福島さんは、「歌をうたいます」と言って、小林旭の「自動車ショー歌」の替え歌をうたい、場を盛り上げましたが、「歌詞の意味がよくわからん」という声も聞こえました。

 そのあと他訴訟の原告さんや参加者の方からアピールを受けました。
 13時15分からは、別項のようなコールをしながら裁判所のまわりを一周するパレードを行ないました。正確な数はわかりませんが、80名くらいだったのではないかと思います。

     

 報告集会での川中弁護団長の報告によると、進行協議をしている時に外からみんなのコールが聞こえてきたそうで、川中団長は「心の底から勇気が湧いて来る一幕だった」とおっしゃっていました。
 大阪高裁周辺でのコールしながらのパレードは初めてでしたが、「たくさんの皆さんと一緒にアピールできて良かった」「国の責任!何度も叫べてすっきりしました」「良い企画でした。楽しませていただきました」「アピールデモは、応援者としても原告と一体感を高めるよい企画だと思います」「みんなの声がビルに反響して迫力あり、元気がでました」などの感想があり、みんなで楽しみながらアピールできたのではないかと思います。

 今回も抽選はなく先着順でしたが、パレードに参加せず直接法廷に来られた方もいて、傍聴席はほぼ満席状態になりました。

 法廷では、初めに双方の準備書面についての確認が行なわれますが、その際田辺弁護団事務局長から国の代理人に対して、2つの件について質問し、被告からポイントを取るという場面がありました。

 1つは、国は東電の「世帯構成員間の充当」(例えば、子どもに支払い過ぎている分を父親に支払ったものとして扱う)の主張を援用するのかどうか。

 もう1つは、IAEA(国際原子力機関)のセーフティガイドには水密化のことが書いてあるが、セーフティガイドの作成に日本政府も関与しているという事実関係を認めるかどうか。国側は返事をあいまいにして言質を取られまいとしましたが、最後は裁判官が「援用しない」「事実関係を認める」ということでいいですねと念を押し、国側はしぶしぶ認めたのです。特に後者は最高裁判決(多数意見)が国に責任なしの「根拠」にしている「当時、水密化は検討されていなかった」という事実認識を覆すものであり、極めて重要です。
  
     

 そのあと原告側の3本のプレゼン―①判例評釈に基づく最高裁判例批判(森田基彦弁護士)、②中間指針第5次追補の内容について(白土哲也弁護士)、③本行意見書への反論に対する再反論(高木野衣弁護士)―が行なわれました。その内容にはついては、4~5面に掲載しています。
 
 前回の進行協議では、今回原告本人尋問と専門家証人尋問の採否(採用するかどうか)が決まるはずでしたが、左陪席が交代した影響で、採否は次回(9月26日)に持ち越され、次々回についても日程(12月12日)が決まりました。これで9月結審はなくなりましたが、12月結審の可能性はまだ残っています。
引き続き、ご支援ください。

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●原告側プレゼン要旨

 法廷では、原告側から3本のプレゼンが行なわれました。プレゼン内容を事務局の責任でまとめました。

◆判例評釈に基づく最高裁判例批判(森田基彦弁護士)

  この準備書面(53)では、判決後公刊された複数の判例評釈を引用し、最高裁多数意見の問題点を指摘し、先例拘束性はないことを主張する。

 まず多数意見の内容を分析し、法令の解釈が誤りであることを説明する。
 多数意見は、国賠法1条1項の規制権限不行使の違法について、筑豊じん肺訴訟判決を引用する。それは、「国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である」という、オーソドックスな規範である。しかし【関係法令の定め】と題する項目にて「電気事業法39、40、省令4条1号」をあげるが、そこでは法文を引用するのみで、「法の趣旨や目的、権限の性質」に対しての言及がない。

 対比のため、三浦反対意見を見る。
 三浦反対意見も、規制権限不行使の違法について多数意見と同じ判例を引用するが、三浦反対意見は、【法令の趣旨、目的等】という項目の中で電気事業法のみでなく、原子力基本法、原子炉等規制法、省令を挙げて法令の定められた趣旨から、電気事業法第40条の技術基準適合命令の発動要件を解釈している。

 すなわち、どのタイミングで技術基準適合命令を発しなければ、規制権限の不行使として違法となるかの基準を具体的に解釈する作業を行っている。この作業は、最高裁のみならずすべての法廷における基本的な作業であるといえる。そして、経済産業大臣の電気事業法40条に基づく規制権限の発動要件については、「原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に対する危害を防止すること等をその主要な目的として、できる限り速やかに、最新の 科学的、専門技術的な知見に基づき、極めてまれな災害も未然に防止するために必要な措置が講じられるよう、適時にかつ適切に行使されるべきものであったということができる」としている。これは予防原則に基づく解釈と評されている。

 多数意見は予防原則を採用していない
 多数意見と反対意見を比較すれば、多数意見が法令の解釈を行わないことにより、伊方原発訴訟を先例とする予防原則に基づく解釈を排除したことが明らかになる。
 明治大学清水准教授は、「本判決が予防原則の採用を前提としておらず、そのことが本判決の結論を支えている」と指摘し、「予防原則の採用を否定する上記裁判例の整理は、 伊方原発訴訟最高裁判決の整理とは異なる」と批判している。
 多数意見は、伊方原発訴訟判決に違背している。以上が、最高裁多数意見の規範に対する批判です。
 また、最高裁多数意見が防潮堤や水密化による回避可能性を認めなかった点についても、「そもそも(津波による浸水の可能性に鑑みると)原発のある側面についてだけ防潮堤を設置すること自体合理的なのか、という問題がある」(早稲田大学大塚直教授)、「防潮堤等が設置されるまでの間は…多重防護的な措置を取るべきであることを看過した」、「水密化措置が取られるべきであったし、水密化が確実な津波地策にならないのであれば、運転は許されるべきではなかった」(上智大学桑原勇進教授)などの批判がある。桑原教授に至っては「速やかに変更されるべきである」とまで述べている。
 さらに民事訴訟法の視点からの批判もある。

 多数意見は民事訴訟法321条に抵触
 民訴法321条は、原判決において適法に確定した事実は、上告審を拘束すると定めている。帝京大学の長島光一講師は、今回多数意見が法解釈の誤りを指摘するのではなく事実認定を変更していることは民訴法321条に抵触すると批判する。

 最高裁多数意見はこのように先行する判例と異なる判断を行っているものであり先例としての意義はない。大阪高裁には私達の主張に即した判断を求めたい。


◆中間指針第5次追補の内容について(白土哲也弁護士)

 昨年末、原子力損害賠償紛争審査会は、「東京電力第1、第2原発事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第5次追補」を公表した。これは、7つの集団訴訟において東電の損害賠償にかかる部分が確定したことを受け、精神的損害に対する慰謝料に関して見直しを図ったものとされる。

 まず「過酷避難状況による精神的損害」として避難行動自体に伴う苦痛や過酷さを独立の損害と認めた。「放射線に関する情報が不足する中で、被ばくの不安、今後の展開に関する見通しも示されない不安を抱きつつ、着の身着のまま、取るものも取り敢えずの過酷な状況の中で避難を強いられたこと」を「過酷避難状況」と呼び、これによる精神的苦痛は賠償すべき損害と認められるとした。これは、避難者の実相に沿ったもので、正当と言える。

 次に、「相当線量の地域に一定期間滞在したこと」を「安心できる生活空間を享受する利益」の侵害と捉え、それにより生じる健康不安を基礎とする精神的損害を賠償の対象とした。これも被害の実状に沿うものと評価できる。

 さらに「生活基盤喪失・変容による精神的損害」が新たに認められた。「生活基盤」とは「人的関係や自然環境なども包摂する経済的・社会的・自然的環境全般を意味する」とされ、一審原告が主張してきた「コミュニティ損害」、「ふるさと喪失・変容慰謝料」を認めたもので、正当だと言える。

 しかし、第5次追補は以上の損害項目について、対象範囲を避難指示等の基準とされた年間20ミリ?としており、多くの避難者が対象外とされている。年間20ミリ?は国が強制避難指示を出す目安とした数であり、「安心できる生活空間」は公衆被ばく線量限度である年間1ミリ?とされるべきだ。東京高裁判決(群馬訴訟)は、「ICRPは…避難元が少なくとも年間1ミリ?を超える場合にも、一般人の感覚に照らして合理的であると評価できれば、避難の合理性が認められる」と判断している。

 損害額が低すぎるうえ、避難指示区域の内外で格差が大きすぎる。避難自体や避難後に被る精神的被害は内外にかかわらず、避難を余儀なくされた者に等しく発生する。大きな格差を設ける合理的理由を見出すことはできない。このことは辻内意見書、竹沢他意見書が明らかにしているとおりだ。

 最後に注目したいのは、第5次追補が「損害請求権は個々人につき発生するものであるから、損害の賠償についても個々人になされるべきである」と敢えて明示したことだ。これは、被告東電らが主張する「世帯構成員間の充当」(新弁済の抗弁)を明確に否定するものだ。

 さらに「指針が示す損害額の目安が賠償額の上限ではな」く、指針が示さなかった区域も賠償対象となることも明示された。被告国および東電には厳粛に受け止めて頂きたい。


◆本行意見書への反論に対する再反論(高木野衣弁護士)

 本行忠志・大阪大学医学部名誉教授の意見書に対する東電の反論は、次の6点に対するものだ。①低線量被ばくの危険性を示す文献がある、②放射線感受性に個人差がある、③放射線感受性に年齢差がある、④本件事故直後の被ばくと環境被ばくを併せて考える必要がある、⑤モニタリングポストの値が子どもへの影響を過小評価する、⑥本件事故に起因して甲状腺がんが増加した。

 ここでは時間の関係で、①の部分に限る。東電は、「国際的にも合意された科学的知見によれば、100ミリ?以下の低線量域では、非被ばく者群との間に有意差が認められず、がんの増加は明らかにされていない」と主張する。これと同じような見解は、「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」(座長:長滝重信・長崎大学名誉教授)の報告書(2011年)にも記載されている。
 だが、2011年以降に低線量被ばくによるがんの増加を示す多くの論文が公表されている。さらに2018年に米国放射線防護審議会が公表したコメンタリー№によれば、被ばく後のがんリスクに関する主要な29の研究のうち20の研究(69%)がLNTモデル(しきい値なし直線仮設)を支持した。LNTモデルを支持しなかった9つの研究について、コメンタリー№27は「線量応答が完全にないか、線量応答を解析していないか、とても信頼できないデータか、であった」としており、その意義を重く見ていない。
 東電は、がんの増加が明らかにされていない根拠の1つに、インドのケララ地方(自然放射線が高い地域)の住民調査に関する論文をあげている。しかし、この論文について京都地裁で証言した崎山比早子証人は、この論文が①低年齢層と高齢者を調査対象の集団から除外しており、②集団のサイズが小さく、調査期間が短いため統計検出力に問題があり、信用性に乏しいと指摘している。コメンタリー№27も、この論文は「解釈に注意が必要である」として、いくつかの問題点を指摘している。
 東京電力は、「避難の基準とされている年間20ミリ?」について「放射線以外の発がん要因(喫煙、肥満、野菜不足等)によるリスクに比しても低く…」と主張する。年間20ミリ?で80年生きると累計で1600ミリ?に達する。これは決して低線量被ばくではない。
 先のワーキンググループの報告書には、「日本人の約30%ががんで死亡している。…長期間にわたり100ミリ?を被ばくすると、生涯のがん死亡のリスクが約0.5%増加する」と記載されている。だからリスクは小さいと言えるのか。
政府の環境基準の考え方によると、「国内外で検討・評価・活用されている10のマイナス5乗の生涯リスクレベルを参考に」すべきという。これは、生涯を通じて10万人に1人が死亡する程度ということになる。
 ワーキンググループ報告書によれば、日本人10万人につき3万人ががんで死亡する。そして、長期間にわたって100ミリ?の低線量被ばくをした場合、3万人の0.5%、150人増加することになる。これは、10万人に1人という許容できるリスクレベルより2桁も大きい。このようなリスクは社会的には許容されない。

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●原告団は頑張っています


◆ラストスパートやり切りたい!

 原告・川﨑安弥子

 提訴して10年。いよいよ控訴審もラストスパートとなりました。
これまで、「原・弁・支三位一体」の取り組みを積み重ねさせていただくことができましたことに心より感謝申し上げます。
 年内にも結審か、という今、さらに充実した取り組みを活発にしていきたいと原告同士、ことあるごとに話し合いを深めているところです。あれもこれもと勝つためにはやらなければならないことが山のようにあり、気が滅入りそうになることもあるのですが、そんな時、口をそろえたかのように出てくる言葉が、「もう楽しくやるべ」。振り返ると、出口の見えない避難生活の中で何度口にし、聞いてきた言葉だろうと思います。「楽しくやるべ!」をモットーに、街宣・署名行動に取り組んでいこう、となりました。

 そこでまず出来上がったのが「裁判官に向けてのコール」。
 今後、「集まれ大阪高裁 100人アピール行動」をする際には、「自分たちで考えたコールをしよう、しかも元気が出るコールを!」と、原告と支援する会のスタッフと一緒に「あーだこーだ」言いながら考え抜いて出来上がりました。

 原発事故は 国の責任/被害事実と向き合った 公正判決求めます/忖度判決 お断り/勇気をもって判断を /原発問題 人権問題/私の人権守るのは あなたの人権守ること/緊急事態は続いてる/避難区域の内と外 どちらも国内避難民/被ばくの強要 お断り/被ばくから 逃れる権利 認めてよ /ほーしゃのうをばらまいた/責任取って 原発やめよう/

 6・6裁判所1周パレードでは、これまで訴えてきたこれらの文言をコールとして大きな声で発したら、本当に元気が出ました!穴を掘って「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶより、裁判所に向かって思い切り声を合わせてコールする方がいいですね!弁護団の先生からも進行協議の際にコールが聞こえてきたと伺い、ますますやりがいを感じているところです。裁判官にも届いているということですから。
 200人、300人アピール行動でもぜひご一緒にコールしてください!元気に乗り越えていきたいです!

 最終盤、法廷外での活動の目的は、「世論喚起」であると思っています。それは、昨年の6・17最高裁判決が出た今となっては、「最高裁判決を正すための」世論喚起であろうと思います。忖度判決であることはもちろん、違法判決ですらあるというこの現実を、広く国民に周知するという取り組みを街宣・署名行動を通じて行っていきたいと思っています。しかも、参加することで元気が出る活動にしたいのです。そのためのあれやこれやのアイデアも出し合っているところです。次回、次々回と進化させていけるよう頑張って参りますので、どうか勝訴を手にするその日までお付き合いください!よろしくお願い申し上げます。


◆3日連続裁判傍聴記

 原告・小林雅子

 6月19日から3日連続、京都原告団を代表して裁判の傍聴をしてきました。
初日19日は、「住まいの権利裁判」(東京地裁)です。この裁判は、関東の国家公務員宿舎に避難した世帯に、福島県から家賃2倍請求、同意なしに親族の住所を調べて親族に手紙を送る、親族宅に押し掛けるなどの理不尽な行為を受けた避難者たちが、精神的苦痛を受けたとして福島県に対して損害賠償を請求している裁判です。
 原告さんは、プライバシーの問題もあって入廷行進には参加されず、原告席にも一人も座っていませんでした(報告集会に参加された原告さんの内、お一人が傍聴席に座って参加されていたようです)。被告福島県の代理人はたった一人、原発賠償訴訟のように弁護士がずらりということもなく、弁護士の後ろに控えているのかと思っていた福島県の職員は誰もいませんでした。「私達の裁判とは、雰囲気が違うな」というのが、傍聴の第一印象です。
 報告集会の時に渡された被告福島県の準備書面の内容は薄く、曖昧な内容で、一体どういう経緯で住宅無償提供が中止されたのかということはわからず、詭弁とこじつけそのものでした。
2日目は、福島原発被害東京訴訟(東京高裁)です。本来であれば、この日が結審のはずでしたが、責任論について新たな主張があったと被告国が主張した(原告側は従前の主張と同じと反論)ため、結審にはなりませんでした。

 法廷では、原告弁護団の意見陳述と原発事故当時小学生だったM君の意見陳述がありました。避難した小学校で、初めは優しかった級友たちが、避難者に仮払い金100万円が支払われたというニュースの後、態度が一変、壮絶ないじめにあったことを涙を流しながら陳述するM君の姿に私も辛くなり、涙を抑えることが出来ませんでした。
 報告集会では、結審が延びたことについて、弁護士の先生が「国側が焦っている」とおっしゃっていました。ということは、原告側が優勢ということですし、新たに意見を主張できるチャンスでもあるわけです。次回の期日はどういう展開になるのかちょっと楽しみです。

 3日目は千葉訴訟第2陣(東京高裁)です。裁判所前集会で発言を求められました。千葉訴訟は本当に結審だということなので、6月6日の大阪高裁1周パレードの際のコールを東京高裁に向かって叫びました。私がコールし、関西訴訟の森松さんがレスポンスリーダーをしてくださり、裁判所に集まった皆さんとコール&レスポンスをしました。
  裁判では、福島市から避難された原告Kさんの意見陳述と、5人の弁護士さんがそれぞれの立場から意見陳述をされました。
 Kさんの意見陳述は、同じ福島市からの避難ということもあり、当時の記憶が蘇って来ました。Kさんは、〝最高裁判決に対して思うこと〟として「あの場所に原発を誘致したのは国。国に法的責任が無いとしたのはおかしい。裁判所は、国に忖度したとしか思えない。福島では、甲状腺癌が増えている。あのまま、福島に住んでいたら甲状腺癌になっていたかもしれない、誰が責任を取るのか。裁判所の皆さん、同じ立場に立たされたらどうしますか?子どもと住むことが出来ますか?今となっては、元に戻ることはなく、せめて補償くらいはしっかりとしてほしい」と、意見陳述の最後を締めくくりました。

 弁護団の意見陳述の最後に滝沢事務局長が、「6・17判決多数意見に忖度する事なく、人権の砦として国家賠償の責任を認めて欲しい」と訴えました。
 千葉訴訟の判決日は、12月22日(金)午後3時です。絶対に勝って、国に責任を認めさせ、千葉訴訟の皆さんが、よいクリスマスとお正月を迎えられるよう祈ります。千葉訴訟の勝訴は、私たち京都訴訟にとっても、よいクリスマスとお正月ですからね。

 最後に、住まいの権利裁判、東京訴訟、千葉第2陣訴訟すべての裁判が勝利し(もちろん京都訴訟と全国の原発被害の訴訟団も)、私達の踏みにじられた人権の回復と、加害者である国、東電、福島県が原告に心から謝罪し、賠償をすることを強く願います。

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●原発事故の国の責任を否定した最高裁6・17判決っておかしくない?

Q. どうして最高裁6.17判決は国の損害賠償責任を認めなかったのですか?

A. 最高裁は、仮に国が東電に安全対策を要求し、東電がそれに応じたとしても、3.11の地震・津波は防潮堤を超えて襲来し原発を浸水してしまっただろうから、事故を回避することができなかったので国に責任はないと判断しました。しかし、最高裁は、そのように判断した理由をほとんど説明していません。国の責任を否定する結論ありきの判断です。ただ一人、三浦最高裁判事は、国の責任を認める少数意見を書きましたが、その論旨は説得的です。

Q. 本当に福島第一原発事故は回避できなかった事故なのでしょうか?

A. 全国各地の地裁・高裁の判決の中でも、国は事故を予見することができ、浸水を防ぐための防潮堤や水密化といった事故対策をすべきであったこと、対策をとっていれば事故を回避できた可能性は相当高いことを指摘するものが多数あります。政府、国会、東電等各事故調査委員会の報告書でも「防げなかった事故」と結論付けるものはありません。「防げなかった事故」とする最高裁の判断は常識に反しているのではないでしょうか。
  やるべきことをやっていなかった国の責任を否定した最高裁6.17判決は、被害者はもとより国民にも到底受け容れられる内容ではありません。

Q. 最高裁が判決を出したのだからもうその結論を覆すことはできないのでしょうか?

A. 最高裁判決であっても、別の事件について最高裁の判断と同じ判断をしなければならないというものではありません。裁判官は独立して裁判を行うこととされているので、同種事件について別の訴訟で地裁・高裁判決において確定した事実関係に基づく判断として、最高裁が一度出された結論とは異なる結論を出すことは可能です。

Q. 最高裁の判断だから正しいといえるのでしょうか?

A. 最高裁は、日本の司法制度における最終的な判断
を示す裁判所ですが、原判決が適法に確定した事実に拘束されるというルールがあります(民事訴訟法321条1項)。最高裁自らが原判決と異なる事実を認定することは許されていません。ところが最高裁は、原発事故を回避する方法があったとした仙台高裁、東京高裁、髙松高裁の確定した事実認定をことさら無視して、最高裁自らが原発事故を回避する方法はなかったとの事実を認定しこれに基づいて国の責任はないとの判断を示しました。原判決の事実認定に拘束されるという民事訴訟法に違反した最高裁判決は正しいものとはいえません。

Q. 国が責任を取らなくても電力会社が責任を取れば、被害は回復されるのでは?

A. お金だけの問題でいえば、被害者の被害は回復される部分はあります。しかし、法律上の責任がないとなれば、国は被害者の被害回復全体について真摯に向き合うことをしません。原発事故の責任は、地域社会の再建や、医療体制の確立、子どもたちへのケアなど、多岐にわたる政治的課題を果たすことを含みます。国に責任があるとの裁判所の判断は、そのための基盤として必要なのです。


(了解を得て、ノーモアフクシマ・いわき市民訴訟原告団のパンフレットから転載しました。)
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