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★ 「原告と共に」No38  2022年1月発行 

● コンテンツ

●いよいよ正念場の一年 公正判決要請署名にご協力を!

       

 
みなさま、本年もよろしくお願いします。昨年はコロナ禍の下でしたが、京都訴訟の控訴審(大阪高裁)は4回の口頭弁論が行なわれました。裁判所からは原告側の主張を次回(3月11日)までに出し切るように求められるなど、控訴審もいよいよ終盤を迎えています。

 全国的には、東電と国を相手取って起こしている集団訴訟のうち、千葉訴訟(東京高裁)、群馬訴訟(東京高裁)、えひめ訴訟(高松高裁)の3つで高裁判決が出され、うち2つが国の責任を認める判決で、一昨年の生業訴訟(仙台高裁)の判決を含め全体として原告側が押している状況です。そのあとに京都訴訟、かながわ訴訟、東京訴訟の3訴訟が続いています。

 また昨年7月14日には、広島高裁で「黒い雨」訴訟判決が出され、原告側の全面勝訴となりました。同判決は、◇黒い雨に直接打たれていなくても、呼吸や飲食を通じて内部被ばくし、健康被害を受ける可能性があった、◇内部被ばくは長期にわたって健康被害をもたらす、◇現に疾病を発症しているかどうかを問題にすべきではない、としました。司法の場で内部被ばくの危険性が認定されたのは画期的でした。

 年が明けて、ひょうご訴訟(神戸地裁)では、1月20日を皮切りに本人尋問が始まり、11月まで(全7回)続きます。ぜひ、応援してください。

 また、2月9日には東電刑事裁判の控訴審(東京高裁)の第2回期日が行なわれます。ここでの焦点は検察官役の指定弁護士が求めている現場検証と証人尋問を裁判所が採用するかどうかです。海渡雄一弁護士によると、民事事件と異なり刑事事件の控訴審では追加の証拠調べは原則として行なわれないそうで、福島原発刑事訴訟支援団では1月21日に現場検証と証人採用を求める集会と署名提出を行ないました。

 刑事裁判が行なわれることになって、検察庁の手元にあった多くの東電内部資料が表に出てきました。この刑事裁判における証拠を、京都訴訟を含む多くの賠償訴訟の原告側が使っています。東電刑事裁判の動向や支援団の取り組みにもご注目ください。

 最後に、京都訴訟では現在、「公正な判決を求める署名」に取り組んでいます。署名用紙は、支援する会のウェブサイトからダウンロードできますし、メールやはがきで「署名用紙を送ってほしい」旨、連絡いただければお送りします。ぜひ、ご協力ください。

*控訴審の日程*
 第13回期日…3月11日(金)14時30分開廷
 (大阪高裁 本庁舎201号法廷の予定)
 この日は、11年目の3.11にあたるため、中之島図書館の3階にある多目的スペース2を1日借りて、午前中は写真・資料の展示やお話し会、映像上映などを企画しています。また、午後からは開廷に合わせて模擬法廷、閉廷後は報告集会を行ないます。コロナの感染状況を見ながら、可能ならばご参加ください。

 第14回期日…6月8日(水)

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●年頭の挨拶

◆支援する会のみなさまへ   原告団共同代表 福島敦子さん

     

 原発事故発災から11年目の年が明けました。旧年中の支援する会のみなさまの並々ならぬご支援に感謝し、寒中見舞い申し上げます。
 今年は、「壬寅」(みずのえとら)にあたります。「壬寅」は厳しい冬を越えて、芽吹き始め、新しい成長の礎となるイメージです。
 原発事故が起こってから今日まで、京都に避難した原告たちにはたくさんの労苦がありました。長年にわたる家族との意見の相違。慣れない土地での新しい学生生活、転職からのスタート。帰省のたびに、あの日より活気に満ちた街中で置いていかれているような思いにかられたり、やっと住み慣れてきた避難者用住宅を追い出され、心通わせ始めたご近所さんと離れたり。
 一昨年からは新型コロナウイルス感染症の流行による新たな情勢も加わり、経済的にも追い込まれ、日々疲弊しています。病気を何度も患い、心折れそうな日々を過ごしています。
 原告はいま、個別立証に向けた陳述書の作成を、弁護士先生とともに丁寧に行っています。また、昨秋あたりから公正判決署名を展開しています。
 避難の権利が守られ完全勝利判決が下されるよう、しっかりと取り組みを進めてまいります。それが、すべての原発避難者・被害者の全面解決交渉へとつながっていくことを願っています。
 本年もよろしくお願い申し上げます。

◆今年こそ、飛躍の年に!  弁護団長 川中宏弁護士

     

 新年おめでとうございます。
 2018年3月15日に京都地裁の判決を受けて、双方が控訴し、闘争の舞台を大阪高等裁判所に移してから、今年の3月ではや4年になります。この間の原告団の方々の苦労、疲弊は並大抵なものではなかっただろうとお察し致しております。

 東電は、自らの課題である廃炉作業は遅遅として進んでいないにもかかわらず、裁判では、厚かましくも原賠審で損害金を払いすぎたとか、原告らの避難が長すぎるだとかのけしからん主張をしてきています。しかし、私たちはこんな御託を決して許しておくわけにはいきません。
加害者東電や国の開き直りを許さないために、私たちは、闘争のエネルギー源である「怒り」、「怨み」を引き続き持続させ、東電を追い詰めて行くことが求められています。そのためには裁判内ばかりでなく、広く世論に訴えて避難の権利を承認させていくことも重要です。今の政府の原発を容認・推進する態度をも改善させなければなりません。

 何もかもで大変ですが、もう一踏ん張り、今年こそ勝利判決を勝ち取るために、さらに一層団結を固めて前進しましょう。

◆次は福島救済を  支援する会共同代表(京都「被爆二世・三世の会」世話人代表) 平 信行さん

    

 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年2021年は核被害の根絶と核被害者救済をめざす運動の上で画期的なことの相次いだ年でした。
その一つは1月22日に核兵器禁止条約が発効したことです。核兵器の非人道性を人々の心情に訴えてきたとりくみから具体的な法規範を手にし、力とする運動へ転換してきました。

 もう一つは広島の「黒い雨」訴訟控訴審で84人の原告全員が勝訴(7月14日)、原告と同じ状況にあった人々も含めて被爆者認定の対象を大きく広げてきたことです。「広島、長崎の原爆放射線の人体に及ぼす影響は初期放射線のみ、爆心地から概ね2.5㌔以内に限定され、残留放射線も内部被ばくもその影響はほとんどない」とされてきた放射線被害の「世界観」に大きな風穴を開ける判決でした。

 某新聞記者さんからの話ですが、被爆者健康手帳を手にした原告団長さんに「良かったですね」と声をかけると、即座に「次は福島を救済して下さい」とおっしゃったそうです。広島・長崎も、福島も、世界の核被害者が、そして世代も超えてつながっていることを確信して、新しい年をがんばっていきましょう。

◆原告のみなさまへ
  悔いを残さない一年をともに   支援する会事務局長 奥森祥陽さん 

     

 寒中お見舞い申し上げます。
 新年にあたり、この一年がどんな年になるのか、考えてみたいと思います。
 今春には一審原告側の主張はほぼ終え、その後、被告(国・東電)側の主張とそれに対する反論、証拠調べに移ります。今年は、控訴審での結審が見えてくる年となります。私たち京都訴訟団にとって極めて重要な年となるのは間違いありません。

 区域外避難者が主体の訴訟では、京都、かながわ、東京が先行しています。京都の高裁判決の内容は、他の区域外避難者の訴訟に大きな影響を与えます。まさに、この一年が正念場と言えます。
 原告の皆さんは、京都で避難生活を継続している方、他の地域に再避難した方、福島県に帰還した方など、様々な状況にあると思います。

 日々の生活に追われ、様々な困難と闘い、裁判と向き合う時間がない方もおられると思います。
 それぞれに大変な状況ですが、「理不尽な事は許せない」「なかった事にはさせない」と自らが原告になり裁判に立ち上がった原点を今一度思い返し、この裁判と向き合っていただきたいと思います。

 法廷に来て被告の姿を見届けて下さい。裁判官へのメッセージを添えた署名をして下さい。家族分だけでもいいので署名を集めて下さい。

 原告一人ひとりが悔いを残さないために、この一年裁判に集中しましょう。子どもたちの未来のために、被害者が完全に救済される高裁判決をかちとりましょう。
 悔いを残さない一年を!ともに闘いましょう。

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●裁判官への一言メッセージ

 現在取り組んでいる「公正な判決を求める署名」には5名連記の用紙と1人用の用紙があり、1人用には「裁判官への一言メッセージ」を書く欄があります。全国から集まってきている中から、いくつか紹介します。

◆原告らの平穏な日々を取り戻す為の公正な判決を求めます。(北海道名寄市・Tさん)
◆将来、原発のない社会で子どもたちが安心して育っていくことができるように願っています。そのような社会実現のためには、現在の原発被害者に対するきちんとした対応が求められます。原発被害者の思いを十分に汲み取って公正は裁判をしていただきますようお願いします。(東京都東久留米市・Tさん)
◆ふるさとや仕事、友人と離れ、避難をした原発事故被害者の真相は様々です。 1人1人の原告に向き合い、被害の深さに想像力を持って判断してください。(京都市西京区・Hさん)
◆放射線被ばくを避けたいと思うのは、すべての人の思いです。それゆえ、避難した人たちの命と生活を守るため、地球上のすべての人のこれからの命・生活を守るため、 後世に恥じない公正の判決を求めます。(大阪府豊中市・Nさん)
◆この10年間に亡くなられた原告さんもおられ、胸が痛いです。 生きておられても、苦労や困難が重なってきていること、一端ですが、お話を聞いています。 どうぞ、一人ひとりの話を聞いて、避難者の権利を認める判決を出してください。(大阪市港区・Kさん)
◆私の家族は、福島の原発事故が起きたため、埼玉県から大阪に移住しました。 埼玉の自宅や実家の家の土のセシウムを測定しましたが、160ベクレル、210ベクレル/㎏という数値が出て、又健康被害も出た為です。 帰りたくとも帰れず、たくさんのものを失いました。訴訟に加わりたくても諸事情で加われなかった人が大勢いることをどうかご理解ください。私はその一人です。 被害は埋もれたままですが、公正な 裁判を望みます。(大阪府箕面市・Iさん)
◆もしこれが自分の家族だったらと思う気持ちで、しっかり現実を見て相手の話を聞き、理解してほしいのです。最後の最後迄、司法の良心を信じさせてください。(福岡県北九州市八幡東区・Mさん)
◆10年経っても事故の収束の目途が聞けません。被害を受けた方々の訴えはとても他人事とは思えません。私にも子も孫もいます。次世代の者のためにも自己の原因と責任を明らかにするべきだと思います。裁判官の皆様、どうぞ、実状と実態に向き合って司法の力を発揮して下さい。お願いします。(福岡県北九州市八幡西区・Nさん)
◆原告の人々は、これまで一生懸命に生きてきた方々です。人が人らしく生きていけるように当たり前の権利を認めてください。(長崎県松浦市・Nさん)
◆我々大人の最大の責任は、「子や孫の次世代に何を残すか!」だと思います。負の遺産ではなく持続可能な地球の自然環境を残すために懸命のご判決をお願いします。(長崎県平戸市・Nさん)

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●控訴審第12回期日報告

12月16日、原発賠償京都訴訟の控訴審第回口頭弁論が開かれました。
 その日は12時半から淀屋橋南詰で、5名の原告と支援者10数名が参加して、チラシを配り、マイクで訴え、署名を呼びかけました。通行する人たちはみな急ぎ足で通り過ぎ、チラシを受け取る人も少なかったですが、それでも何人かの方はチラシを受け取ってくれ、中には立ち止まって署名してくれる人もいました。
 13時で街宣行動を終え、そのあと原告5名と支援者3人とで大阪高裁の民事第部書記官室に署名を提出しに行きました。提出した署名は35の団体署名と2031筆の個人署名です。
 そのあと裁判所の正面玄関前に行き、傍聴整理券を求めて並ぶ列に合流しました。今回は傍聴席39に対して45名が並び、抽選となりました。

 法廷では、原告側が①準備書面(42)高松高裁判決の妥当性―責任論に関して(森田基彦弁護士)、②準備書面(43)国際人権法に関する総括書面(高木野衣弁護士)、③準備書面(44)低線量被ばくの危険性―本行補充意見書(鈴木順子弁護士)の3つのプレゼンが行なわれました。
 *このプレゼンの要点については、6面で報告させてもらっています。
 今後の期日については、3月11日(金)、6月8日(水)、開廷時刻はいずれも14時30分です。

 閉廷後、中央公会堂で報告集会が持たれ、会場で48名、ZOOMで30名が参加しました。報告集会は長時間におよび、多岐にわたる内容が報告されましたが、そのすべてを紹介すると膨大になりすぎるため、ここでは京都訴訟に関連する発言にしぼって、その要点を紹介します。

〈あいさつ〉
◆川中宏弁護団長
 控訴審も長くなっているが、国と東電を確実に追い詰めている。東電は自分たちの責任を忘れて、避難者はわずかだとか、いつまでも避難を続けていると故郷の人たちは迷惑に思っているなど、とんでもないことを主張し出している。次の期日は11年目の3.11に決まった。
来年はさらに追い詰めて行きたい。

◆橋本宏一・支援する会共同代表
 弁護団のプレゼンを聞いて、この裁判の意味、原告の思いという原点に自分が立ち返ったような気がした。鈴木順子弁護士の100人に1人の確率で害が発生するとして、その1人は私かも知れない、100人に1人だから無視してもいいのかという言葉に胸を打たれた。その1人は私かも知れないという想像力がこの裁判を闘う力ではないだろうか。
 裁判官にも、想像力を働かせて、避難した原告の思いや事情を汲み取って判決を書いてもらいたい。皆さんも、ぜひ傍聴して感じたことなどを(1人用署名の)メッセージ欄に書いて、裁判官に届けてほしい。
     

〈弁護団から〉
◆田辺保雄・弁護団事務局長
 提訴してから8年目になるが、控訴審も大詰めに来ている。
 ICRPの勧告に従っておれば大丈夫だという政府のシナリオに裁判所もすっかり騙されている。ICRPは専門家集団ではあるが、核開発のお墨付きを与えるために活動して来ているのが実態で、原発事故のリスクを福島県とその近辺に全部押し付けてしまうのがICRPの考え方だ。
そのことを裁判所に伝えて行く必要がある。今日の国際人権法のプレゼンもそのためだった。

◆森田基彦弁護士
 今回は高松高裁判決を引用する書類を作成した。この判決は理論的にもすっきりしているし、原告側の資料の弱さを補うという意味でもいい判断を示している点で、参考にしてほしい判決だ。
 同判決は防潮堤を正面から認めており、責任論に関してはこれでほぼ固まったのではないかと弁護団の全国会議でも言われている。
 今後は、防潮堤に関して補充したいのと他の裁判などで出てきている証拠を使って東電の過失を追及できないかと考えている。

◆高木野衣弁護士
 今日のプレゼンで、国連特別報告者のグローバーさんやトゥンジャクさんに代表される国際社会の眼から見ると、年間1㍉?という基準が非常に重要だということが理解してもらえたのではないか。
 そして健康に対する権利というと、健康であるのかないのかに目を奪われがちだが、健康を守るために避難する権利を基礎づけることを主張したものだった。
 1㍉?という基準があったのにそれを20㍉?に高めてしまった、これは社会権規約の後退禁止原則に反しているし、他が1㍉?なのに福島だけ20㍉?と基準を変えてよいのか(差別的取り扱い)という問題もある。そういう面にも裁判所は目を向けてほしいという思いで提出した。

〈署名提出報告〉
◆支援事務局・上野
 先ほど映像で観てもらったが、今日12時半から淀屋橋南詰で署名活動をして、そのあと裁判所に対して1回目の署名提出を行なった。内訳は、35団体の団体署名と2031筆の個人署名。
 佐賀の玄海原発差し止め訴訟の原告団から1人用の署名を4千枚送ってほしいという連絡があり、送ったものがぼちぼち返って来ている。せっかく書いて頂いたものをそのまま提出するのはもったいないので、次の会報に載せていこうかと考えている。また、関西よつ葉連絡会に5名連記の署名用紙を3万5千枚送っている。次の期日には、今日を大幅に上回る数の署名を提出したい。

    

〈参加原告から〉
◇いま追加の陳述書を書いている。東電は、領収書が添付されていないので支払いは認められないなどと言っている。避難当時は体調が悪く、ちゃんと計算もできないと思ったので、ADRは申請しなかった。ADRでは領収書がなくても認められたということや、集団訴訟なのでそんな面倒な計算は自分でやらなくていいと聞いたので、裁判を続けてきた。でも、ここに来て、根拠がないものはどうのこうのと言われて、なんとも言えない心況になった。一方、避難当初は出会う人を見るのもつらかったが、今では心から笑うこともできるようになった。皆さんのお蔭だ。

◇今日、署名活動に参加して、チラシを受け取ってもらえないと思っていたが、受け取ってくれる人もいた。仲間と「やっぱり、飴ちゃんをくっつけた方がいいね」という話をした。
 今は人と比べるんじゃなくて、自分との闘いなんだと思って生活している。避難者の支援の仕事をしていて、みんないろんな事情を抱えながら前を向いている人が沢山いる。そういう人のためにも頑張らなきゃと思って、今日も参加した。

◇各地で集団訴訟が進み、4つの控訴審判決が出て最高裁に移行している。
 区域外避難者については、賠償額はかながわ訴訟が一番高く、避難が認められた期間の長さでは京都訴訟が一番長い。それでも私たちは不服だ。だから、この裁判で言い尽くしたかどうかを考えながら、あと1年少し頑張って行きたい。

◇今日は淀屋橋で街頭宣伝と署名をやった。マイクを持って「私たちの裁判の勝利が皆さんの権利を守ることにつながる」と叫んでいたが、なかなか届かなったのかな。1人でもいいから、自分の思いが届けばいいなと思った。特に区域外避難者に対する世間の風当たりは冷たくて、声を上げたらバッシングされたりする。バッシングする人も、私たちの立場に置かれたらどうするかを考えてもらいたい。

◇私も署名活動に参加した。中には、自転車を降りて署名してくれる人もいた。そのあと裁判所に署名提出に行った時に、東電の代理人が居て、目が合ったとたん、ぎょっとしたような顔をしたので、「結構、私たち、追い詰めてるのかな」と思った。
法廷の原告席に高校3年生が参加していて、「小学生だった子がこんな娘さんに成長したんだ」と感慨深く、私たちの代でできるところまで頑張らなくちゃという思いを強くした。

◇私も淀屋橋での署名活動に参加して、ここではチラシを受け取ってくれる人も署名をしてくれる人もいないと思ってやっていたが、今風の「あざ~す」みたいな喋り方の若いお兄さんが署名をしてくれて、最後に「頑張ってください」と声をかけてくれたので、嬉しく感じて、あきらめずに頑張っていかないといけないと思った。

◇(ZOOMで)現在、田辺先生と国内避難民の権利に関する国連特別報告者の訪日を実現する活動をやっているが、先週の金曜日に臨時国会で特別報告者の訪日要請はどうなっているのかという代表質問が実現した。岸田首相は「今なお避難されている方は避難生活の長期化による状況が多様化しており、それぞれの状況に応じた丁寧な支援を行なっていかなければならない」と答弁した。その言葉どおりにしてもらうために頑張っていきたい。

◇(ZOOMで)私は家族の事情で福島県の実家に帰っているので、こうしてオンラインで皆さんと繋がっているのが心の支えになっている。
今日は福島から魂を飛ばしているが、かなり相手を追い詰めているということなので、これからも魂を飛ばし続けて皆さんと一緒に頑張っていきたい。

 このあと、ZOOMで参加された千葉訴訟原告の瀬尾さん、子ども脱被ばく裁判原告団長の今野さん、会場参加のジャーナリスト守田敏也さんなど多くの方が発言されました。

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●一審原告側プレゼン要旨

 12月16日の控訴審第12回口頭弁論期日での原告側のプレゼン要旨をまとめました(文責は事務局)。

◆高松高裁判決―責任論―の妥当性(森田基彦弁護士)

    

・高松高裁判決は、仙台高裁判決(生業訴訟)と東京高裁判決(千葉訴訟)を踏まえたもので、その責任論に関する判断枠組みは精緻化されており、本件の参考になる。

〈予見可能性について〉
・高松高裁は、津波の予見可能性について、「経済産業大臣において技術基準適合命令を発する要件が備わっていることを認識し、または認識し得たことが、国賠法1条1項の適用上違法となる要件である」と整理した。
 その整理を前提に、判決は「想定津波の到来によって、全交流電源喪失、冷却機能の喪失という重大な損傷を受けるおそれがあることを認識し、または認識し得たにもかかわらず、技術基準適合命令を発しなかったことが、…許容限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合には、国賠法1条1項の適用上違法となる」との判断枠組みを示した。

〈長期評価の信頼性について〉
・判決は、長期評価の見解について「学者個人としての論文等とは異なり、海溝型分科会を中心とした多数の専門家による検討を踏まえ、相当程度の科学的信頼性を獲得していると評価されている知見」と判断した。その上で、「規制機関である経済産業大臣は、長期評価の見解をも参照し、福島県沖についても、明治三陸地震を参考にした震源域を設定して津波のシミュレーションを行うなどし、想定津波が福島第一原発に及ぼす影響の有無や程度を調査、検討すべきだった」とし、そうすれば同原発が「技術基準に適合していないと判断できる状況にあった」と国の予見可能性を認定した。

〈結果回避可能性について〉
・判決は、2008年の東電の試算に依拠した対策が実際に発生した津波への対策として有効であったかどうかを検討した。その結果、判決は「直ちに、本件津波による原発の主要建屋への浸水やそれによる重大事故を防ぐことができたかどうか判然としない」とし、また、実際には国・東電によって何らの措置も講じられていないため、「実証的な検証をすることは困難である」とした。
 しかし高松高裁判決は、実証できないから「判断不能」とはしなかった。ここが秀逸な点だ。すなわち、2008年の試算による想定津波を前提に、「防潮堤の設置に加えて、主要建屋または重要機器室の水密化の措置を採っていた場合、本件津波の到来による浸水を完全に防ぐことはできなかった可能性はある」が、「浸水の規模を相当程度抑制でき、本件事故のような全電源喪失の事態にまで至らなかった蓋然性が高い」と、結果回避可能性を肯定した。高松高裁が「蓋然性」の有無を基準とする判断を行なったことは非常に合理的だ。

〈防潮堤等の有効性〉
 さらに高松高裁は、原発敷地の前面を全体的に覆うように地上10m防潮堤を設置したと過程した場合に、遡上する津波の侵入をおおむね阻止することができ、浸水は50㎝以下であるとする今村教授のシミュレーション結果をもとに、防潮堤による結果回避措置を肯定した。
 また、タービン建屋や重要機器室の水密化により「本件津波の影響は相当程度軽減され、…全交流電源喪失の事態に至るまでのことはなかった蓋然性が高い」とした。
 以上のような高松高裁判決の判断基準と事実認定は本件にも妥当する。

◆国際人権法に関する主張のまとめ(高木野衣弁護士)

    

〈グローバー報告〉
 2013年5月、いわゆるグローバー報告が公表された。そこには、「低線量の放射線でも健康に悪影響を与える可能性があるため、被ばく線量が可能な限りに低減されて年間1m?未満になった場合にのみ、避難者は帰還を推奨されるべきである」と明記されていた。また、年1m?を超える被ばくを強いられることは、健康に対する権利への侵害であると指摘した。
 日本政府の年20m?基準はICRP勧告を裏付けとしているが、ICRP勧告が基礎とする最適化と正当化の原則(リスクベネフィット論)は、「個人の権利よりも集団の利益を優先するため、健康に対する権利の枠組みには適合しない」と指摘している。
 グローバー勧告を踏まえ、社会権規約委員会は第3回日本政府報告書審査・総括所見において、グローバー報告を履行するよう勧告した。

〈国際社会からの懸念〉
 2018年3月の国連人権理事会でドイルからの日本政府に対する「許容放射線量を年間1m?以下に戻し、避難者および住民への支援を継続することによって、福島地域に住んでいる人びと、特に妊婦および児童の最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること」という勧告が正式に採択され、日本政府はフォローアップする(「約束どおりできているか確認する」くらいの意味か…事務局注)ことに同意した。
 2018年9月に、有害廃棄物特別報告者のトゥンジャク氏と国内避難民特別報告者のダマリ―氏は連名で情報提供の要請文書を公表したが、そこでは「福島に設定された年間20m?の暴露水準という高いしきい値は、放射線防護の国際基準に沿っていないとの懸念が表明されていたことを指摘したい」と述べられていた。
 以上のことから、国際社会が、年1m?を超えるような被ばくを住民に強いる行為は、国史人権法に根拠を置く健康に対する権利の侵害に当たると考えていることが分かる。

〈国際人権を論じる意義〉
 原判決は、健康影響の有無ではなく、避難の相当性は社会通念に照らし、一般人からみて避難がやむを得ないものだったと言える場合には肯定されるとしている。しかし、社会通念の判断にあたって、ICRPが公衆被ばくの線量限度を年間1m?としたこと、それを日本が放射線審議会における審議を経て国内法に取り入れたことの意味合いが全く欠落している。国際人権法における健康に対する権利を尊重し、保護し、充足する必要がある。
 今回の原発事故による影響は、伝統的な不法行為法が想定してきた被害とは様相が異なる。「健康に対する権利への侵害」という考え方は、従来の伝統的な不法行為法では見られなかったが、「原発事故による避難」という「新しい社会現象」に対処する上では有効だ。

◆低線量被ばくの危険性(鈴木順子弁護士)

    
 東電は、同種の別の訴訟で「年間積算線量100m?以下の被ばく線量であれば健康への影響は認められない、LNTモデルに依拠しても年間積算線量20m?以下の被ばく線量の地域に居住し続けたとしても発がんリスクは無視し得る」などと主張している。
 本行忠志教授(大阪大学大学院)の意見書・補充意見書などに基づき、低線量被ばくの危険性を示す科学的知見が今も集積され続けていることを述べる。
 本行意見書では、CT検査で発がんリスクの上昇がみられる旨を報告している調査もあることが指摘されている。また、補充意見書では、1990年から2020年に公表された3つの研究報告において、低線量の被ばくであっても健康影響が生じ得ることを示しており、低線量被ばくの危険性を示す科学的知見は現在もなお集積され続けていることは明白だ。
 さらに補充意見書は、放射線感受性に関して個人差がおおきいことを指摘している。
 ICRPは、「遺伝的素因によって放射線リスクの有意な上昇が懸念されるのは、集団中の1%かそれ未満にすぎないので、遺伝的素因に関する不確かさを考慮しても、現行のICRP勧告を見直す必要はない」と述べている。
これは、100万人が被ばくすれば1万人はICRPの言う「しきい値」よりも少ない被ばく量で「確定的影響」とされる健康影響を受けるリスクが生じること、すなわち、国や東電が危険性が少ないと述べる100m?未満の「低線量被ばく」においても確定的影響による組織反応のリスクが生じることを意味する。
 低線量被ばくの危険性を示す調査結果や科学的知見が集積しているという事実と、仮に「しきい値」が100m?であるとしても、自分が「100人の中の1人」に該当し、「しきい値」以下の低線量被ばくであっても確定的影響である組織反応を生じさせるかもしれない、しかも自分が100人の中の1人であるのかどうかもわからないという事実は、極めて重要である。
そもそも避難の相当性を判断する際に、低線量被ばくによる健康影響について科学的に立証することまで求められるものではない。しかし、低線量被ばくの危険性を示す科学的知見が現在もなお集積され続けていることは、原告らの避難の相当性を強く基礎づけるものであるといえる。

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●原告だより

コロナ下で奇跡の出会い

もうすぐ震災から十一年。震災当時から現在までの、私達家族のドラマをお話します。
福島県郡山市で居酒屋を営んで生活していました。震災当時は、まだ、お店を始めた時の借金があったので、主人は、その借金返済が終わるまでは、お店をやると決め、家族離ればなれの生活が4年ほど続きました。
家族と離れ、仕事から夜遅く帰ってきて家に家族がいない寂しさは、はかりしれない寂しさだったそうです。当時は、主人は私に心配かけないようにとしていたようですが、今になってやっと、その時の思いを話してくれました。
主人が京都に来て、すぐ仕事ができるようにと、私が避難先で友人になった方の紹介で、「鳥せい」ですぐ働けるように準備し、京都での生活がスタートしました。子供達も、家族が揃って生活できることになり、喜びと安堵感で満たされました。
私も主人が一緒に住めるとなった時に見た夢を今でも覚えています。暗い道を私が一人で歩いたところに、主人が来てくれて、これからは主人も一緒にいてくれるんだと泣いて喜んでいた夢でした。
「鳥せい」で5年半勤めて、そろそろまた自分達でお店をしたいという思いがでてきました。奇跡のようなタイミングで、私が心身の健康のためにしているヨガの繋がりで、素敵な物件に出会うことができたのです。
そして、コロナの影響で主人が勤めていた支店が休店状態になったのを機に、思い切ってお店を開くことを決断しました。しかし、お店を始めて半年後に緊急事態宣言が出され、休業せざるを得なくなりました。その中でも、あたたかなお客様のおかげで、一周年を迎え幸せと感謝を感じながら生活できています。
大変なこと、涙を流したこと、 たくさんありました。でも、今こうして、 家族揃って生活できていることに感謝の日々です。 今のお店のお客様が、「このコロナの中、開店する勇気が出たのは、あの大きな震災を経験して乗り越えてこられたからなのでしょうね」と言ってくださいました。
大震災を経験したからこそ、私たちが伝えられること、行動していけることがあります。未来の地球が美しくあり続けるために、原発のない世界を。(二宮)

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●公正な判決を求める署名にご協力を!

    

  原発賠償京都訴訟では、控訴審の結審が1年後頃に予想される中、「公正な判決を求める署名」に取り組んでいます。
 控訴審第12回期日の昨年12月16日、大阪高裁民事第12部書記官室に団体署名35と個人署名2031筆を提出しました。この署名は結審まで取り組み、期日ごとに大阪高裁に提出する予定です。ぜひご協力ください。
 署名には、団体署名用と5名連記の個人署名、そして裁判官宛てに一言メッセージを書く欄のある1名用のものがあります。
 集めてあげようと思われる方は、当支援する会のウェブサイトからダウンロードすることができます。また、印刷する機器のない方は、当会のメールアドレスにメールするか、当会の宛先にはがき等で連絡いただければ、署名用紙をお送り致します。その際、どの用紙が何枚必要かを必ず明記ください。
 *当会のウェブサイトURL、メールアドレス、宛先は1面の題字の右側に表示しています。

     

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 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
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