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★ 「原告と共に」No37  2021年10月発行 

● コンテンツ

  
●えひめ訴訟高松高裁判決 国の責任認める!

 9月29日、えひめ訴訟の控訴審判決で、高松高裁は国の責任を認め、国と東電は発生した損害について、それぞれ全額賠償責任を負うとして、総額約4千6百万円(10世帯23名)の支払いを命じました。
 いつも問題になる地震調査研究推進本部の「長期評価」の信頼性については、「相応の科学的信頼性を有するものと評価できる」、長期評価の見解は、土木学会の「津波評価技術」より「優位とはいえないまでも、同等という前提でこれを参照する必要がある」としました。
 したがって経産大臣は、長期評価の見解をも参照し、福島県沖に波源を設定し、津波が福島第一原発に及ぼす影響の有無や程度を調査、検討すべきであった。
 それをしていれば、敷地高を大幅に上回る津波到来の危険性があることを認識し得たし、浸水で全交流電源を喪失し、原子炉施設の損傷などの重大事故が発生するおそれがあり、「技術基準に適合していないものと判断できた」としました。
 結論として、長期評価公表から遅くとも1年後には、技術基準適合命令を発することができ、その後7年6か月程度の期間があれば、技術基準に適合させるための措置を講じることは可能であったから、「経産大臣の規制権限不行使と本件事故との間には因果関係がある」と断罪しました。
 判決は、区域外避難者の慰謝料について、「自主避難慰謝料」に加え、初めて「避難継続慰謝料」(額は別として)を認める画期的なものでした。具体的には、妊婦子どもは自主避難慰謝料20万円、避難継続慰謝料126万円(月額7万円を2012年8月まで18か月分)、計146万円、妊婦子ども以外は、前者10万円、後者60万円(月額5万円を2012年2月まで12か月分)、計70万円。
 井関弁護士によると、辻内意見書、竹沢意見書が証拠提出されたようで、判決には2頁半にわたってその要旨が紹介されていたそうで、同弁護士は「東京訴訟判決以降続いていた賠償水準を、辻内・竹沢意見書が打ち破ってくれたと考えたいですね」との感想を述べられまし


●控訴審第11回期日報告

 9月30日、京都訴訟の控訴審第11回期日が開催されました。緊急事態宣言の最後の日でしたが、中に入れる原告は5名、傍聴席は38席に制限される中での開催となりました。
 支援者の皆さんにはZoomでの参加を呼びかけたため、抽選には至りませんでしたが、中に入れなかった原告を含めて30人ほどが傍聴しました。見慣れない顔の方が数人おられましたが、仲良し3人組のおじさんたちは裁判長が入廷するまでの時間が待ちきれなかったようで、開廷前に出て行かれました。大変驚いたことに6席用意された記者席は満杯で
した。前日にあったえひめ訴訟控訴審(高松高裁)で国の責任を認める判決が出たことが影響したのかも知れません。
 法廷では、原告側が4本のプレゼンを行いました(4~5面に要旨を記載)。
 
 閉廷後は、参加した原告、弁護士、支援者も会場へ移動し、報告集会(オンラインで配信)を行ないました。会場に約30名、Zoom で40名弱の参加者がありました。
 
 最初に川中弁護団長が、この間の自民党総裁選挙での原発についての候補者の態度を取り上げ、3人が公然と「原発は必要だ」と発言するようなことを許さない世論を作っていかないといけない、とあいさつ。

  
 
 支援する会共同代表の平さんは、高齢化が進み被爆者手帳を持っている人は毎年減ってきたが、減少傾向が変わる可能性が出てきた。黒い雨訴訟判決の確定で1万人を超える人から問い合わせが来ている。手帳を持つ人数が増える状況にある。この訴訟もそういう広い視野に立って進める必要がある、とあいさつされました。
 田辺弁護団事務局長からは、裁判の今後の見通しについて報告がありました。
 ①裁判所が審理計画を立てているが、国が遅れていて、国の主張が全部出終わるのは来年の9月になりそう。そのあと最終弁論になるのか、証拠調べになるのかが夏頃までには決まる。
 ②昨日高松高裁で国に対する判断が出た。これで高裁レベルで3勝1敗。裁判所の枠組みも固まってきている。予見可能性よりも技術基準(安全性の確保)が重視されて、そんなに確度の高い予見でなくても、技術基準を満たしていないのにほったらかしておいていいのかということになる。実は京都訴訟でもそういう主張を提出していたので、高松高裁判決を見て間違っていなかったと意を強くした。
 ③東電からは「新弁済の抗弁」というものが出されている。平たく言えば、払い過ぎた金を返せということ。その根底には、区域外避難者には本来損害なんてないという主張がある。今日は高木弁護士に反論してもらった。埼玉訴訟では東電の弁護士が避難者を詐欺呼ばわりした。今後は、損害を明らかにするために個別の準備書面を出していきたい。
 
 

 次に、会場の原告7名とオンラインで参加の原告2名が今の思いを語りました。印象に残った発言を紹介します。
・子どもたちに背負わせたくないという気持ちで闘っている。
・動画を作った際に、「放射能に汚染された」という背景に息子が撮ったふるさとの風景を出せば向こうにいる人が傷つくんじゃないかと迷ったが、二世三世の会のオンライン学習会に参加して、それでも言い続けないといけないということに気付かされ、出すことにした。
・裁判に来ると動悸がして心拍数が上がる。でも、みんなの顔を見ると安心する。
・映画「MINAMATA」を観に行った。チッソがやっていることが東電と同じ。映画は裁判勝訴で終わるが、水俣病は今も続いている。
・避難当初に体調が悪くても一生懸命やってきたのは、自分にとってみなさんとの交流が必要だったんだなと思った。
・去年コロナになってから裁判から気持ちが離れてしまって、自分は避難元に愛着はないし、PTSDも恐らく大丈夫だし、みんなとの違いを感じてしまって…。今日は久しぶりに参加して、頑張っていかなきゃとは思ったんだけど(なかなか整理がつかなくて)…。
・裁判もちょっと離れてしまうと何のためにやっているのかわからなくなることがあるが、姉の孫たちを見ると、この子たちに負の遺産をそのまま引き継ぐわけにはいかないと思う。
・10年経っていろいろあるけど、みんながいるから私も頑張れる。支援者の方々がいるから、ここまでやって来れた。いま京都を中心に国内避難民に関する特別報告者の訪日を実現するために頑張っている。
・裁判も長くなり、何回もやめてもいいかな、普通の生活にもどりたいなという気持ちもあったが、子どもたちの未来のために原発をなくしたいと思い、みんなと一緒にやってきた。

 そのあとゲストや他訴訟の原告・支援者から連帯のあいさつを受けました。
高松に行った帰りに参加されたかながわ訴訟原告団長の村田さんは、えひめ訴訟の高松高裁判決は責任論についてはきっぱりした判決、これで流れは固まっただろう。賠償金額は上がったが、区域内と区域外の線引きによる格差はそのまま。どうやって破っていくのかが課題。根っこは被ばく問題だと思う。かながわ訴訟も来年秋ぐらいに結審の見通し。京都、かながわ、東京の3訴訟が責任論を不動のものにしていこう、とあいさつ。
 村田さんと同行された全国支援ネット事務局長の岸本さんは、他の裁判では京都のように原告が7人も前に出て発言するなんてことはない。えひめの勝利で3勝1敗になった。全体的な流れとしては国の責任は認めるだろう。問題は区域外避難者。京都では2年間の避難期間を認めさせたが、賠償金額では東京の200万円が最高。黒い雨訴訟では大雨区域の壁を打ち破った。国内避難民の「生活権の再建」を認めさせ、避難指示区域の制約を突破していこうと呼びかけ。
 九州訴訟からは二人の共同代表がオンライン参加されました。第2陣で加わり共同代表になった木村さんは、長崎に住んでいるが、現地の被爆者から福島原発事故が起こったことについて「自分たちがもっと被爆を訴えて来なければいけなかった」と謝罪されたことを紹介。生まれた娘のために被害を訴えていきたいと話された。もう一人の共同代表である金本さんは、九州は今年に控訴審がはじまったばかりだが、忘れられ始めているかなとも思うので、手を取り合って世論に訴えていきたいとあいさつ。
 群馬訴訟原告の丹治さんは、群馬は高裁で負けてしまった。でも正義は私たちにある。忘却は政府にとって武器だが、私たちは絶対に忘れさせるわけにはいかない。全国の避難者が心をひとつにするのが各地の裁判。お互いに支え合いながら闘っていこうと訴え。
 千葉訴訟原告と家族の会の瀬尾さん(父と夫が原告)は、高裁では逆転勝訴した。京都からもビデオメッセージを頂いた。千葉でも原告が亡くなって、子どもさんが継承するケースが何件もある。最高裁に向けて署名に取り組んでいるので、協力して欲しいと訴え。
 関西訴訟原告を代表して森松さんは、責任論は洗練されてもうひっくり返せない。損害論をきっちり示すことで、被害の大きさが見えてくる。全国の仲間とつながれる機会を作ってくれてありがとうとあいさつ。
 
 最後に京都原告団の堀江さんが、原告で「公正な判決を求める署名」のプロジェクトチームを作り、署名を作った。QRコードから原告の訴え動画を観ることができるようになっている。京都地裁の時は2万4千筆集まった。今回はそれを上回る数を集めたい。オンライン署名も作る予定と、署名への協力を訴えました。


●一審原告側プレゼン要旨

◆貞観津波に関する国の主張への反論(森田浩輔弁護士)
・2008年8月頃、東電は貞観津波による堆積物調査結果に基づく断層モデル(佐竹教授が提唱したモデル10)を使い津波水位を算出したところ、福島第一原発1~6号機で9m前後の結果を得た。
・原告側は、その際の資料の脚注に、変数をいろいろ変えて解析すると2、3割大きくなる可能性があると書かれているので、算出結果を1・2倍、1・3倍すると、いずれも原発敷地高の10mを超えることを主張した。
・これに対して国は、「貞観津波は、本件事故当時はまだ信頼性のある波源設定には至らなかった」と主張している。しかし、2011年11月に公開された長期評価の第2版も佐竹モデルを採用している。
・2009年9月に、東電は上記の結果(津波は敷地高を超える)を保安院に報告している。
・2010年3月、保安院の小林耐震室長が名倉審議官宛てに、森山審議監に「貞観の地震による津波は簡単な計算でも、敷地高は超える結果になっている。防潮堤を作るなどの対策が必要になると思う」と報告したことを伝えるメールが残っている。
・東電と国は遅くとも2009年9月には、貞観津波の知見により、敷地高を超える津波の危険性を予見していた。

◆東電の辻内意見書批判への反論(井関佳法弁護士)
・辻内意見書は、福島原発事故の翌年から毎年、辻内教授が多くの専門家と共同して、避難元自治体が把握している全避難者を対象に、IES―RやK6を使ったアンケート調査を継続的に行ない、原発避難者の被害実態を明らかにしたもの。そのポイントは、原発避難者のストレス度が高い状態が長引いていること、それが心理的、経済的、社会的要因によること、区域外避難者のストレス度は区域内避難者と比べてそん色がないこと。
・東電の批判は、①回答率が低い、②目的が「被災者の生活再建や復興に役立てる」と記載され、回答した人も回答も偏っている、③質問項目が、「イライラして、怒りっぽくなっている」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」などの否定的な感情についての質問で、回答を否定的な方向に誘導している、④区域内避難者、区域外避難者、地震津波避難者の区分が適切に行なわれていない、というもの。
・これに反論する。①公的調査ではない、一研究者が行なった調査としては十分な回答率であり、過去の研究と比べても見劣りしない、②調査の目的を明記することは当たり前のことであり、アンケートを郵送し返送してもらう方法も普通に行なわれている方法で、何の問題もない、③IES―RやK6は被災者の精神健康調査として実施される代表的評価ツールであり、こうした質問は不可欠。本来は東電や国が実施すべき調査ではないのか、④被災体験や被害状況を見れば、地震津波避難者は宮城・岩手の地震津波避難者と同質だが、区域内外の原発事故避難者とは全く異質であることが明らかで、辻内教授の分類は的確。

◆東電の竹沢意見書批判への反論(白土哲也弁護士)
・東電の批判は、①原発事故からの避難生活が心的外傷体験に当たるのか論証できていない、②事前に訴訟資料や避難者支援に活用されることが告知され、回答者が誘導されており、調査手法にバイアスがかかっている、というもの。
・これに反論する。①東電は、PTSDの出発点となる心的外傷を死の危険に直面するような、極めて限定的な出来事と捉えている。しかし、死の恐怖の経験はなくても、反復される苦痛の経験(DVや家庭内の性暴力など)がPTSDを引き起こし得るとするのが精神医学の理解。さらに著名な研究者は、PTSDが発症しやすくなる要因として、◇社会的支援が不足しているとき、◇日常生活の中で常に二次的ストレスにさらされているときを挙げている。このことから、自然災害より人為的災害や性暴力にさらされたケースの方が発症リスクが高まることも指摘できる。本件原告が置かれている状況がピタリと当てはまる。
・またトラウマ体験には、戦争体験や災害などの「急性単発型」と日常的に繰り返される「慢性反復型」があるが、辻内教授は原発事故被害者が置かれている状況について単発型(原発の爆発、緊急避難)と慢性反復型(その後の政策決定や賠償問題)が合わさった「福島型PTSD仮説」とされる。
・②竹沢教授が所属する文化人類学会の倫理規定には「調査対象の人々に対して当該調査・研究の目的、方法およびその成果公表などの一切に関する説明責任を負う」とされているほか、厚労省のガイドラインでも説明責任が挙げられており、竹沢意見書の調査は今日の人文科学では不可欠の手法を採用している。目的を事前に告知することで、当調査の信用性が減殺されるのであれば、アンケートという調査手法自体が成り立たなくなる。実際の結果を見ても、回答状況には原告ごとにばらつきがあり、一方方向への偏った回答など見て取ることはできない。そもそも、原発事故と避難の体験をしている原告について、全体的に高いストレスを受けたとの調査結果が出ることは、むしろ当然のことである。

◆東電の「新弁済の抗弁」への反論(高木野衣弁護士)
・東電は「新弁済の抗弁」という耳慣れない用語で、新たな主張をしている。要するに、被害者には十分に賠償金を払った、いや、払い過ぎていたから、その分をほかに充当するという趣旨だ。
・東電は、精神的損害と財産的損害が費目を問わず充当されるとし、3つの最高裁判例をあげているが、3つとも本件とはまったく異なる事例だ。
・そもそも、実損害を超える賠償がされているだろうか。直接請求手続きでは、多くの費目ごとに賠償基準が定められており、定額とされた費目以外の損害は、請求者側が資料を提出し、東電の定めた基準で算定されていた。ADR手続きでは、最終的に和解契約書が作成され、費目、期間などが特定された上、清算条項まで設けられていた。
・費目間充当を認めると、不当な結果となる。被害者は裁判で不足分を求めた途端、事前に支払われた部分についても立証しろと言われることになる。もし、「新弁済の抗弁」がまかり通り、訴訟した者はいちからすべて立証し直せとなっても、賠償済みの立証資料は散逸しており、裁判を起こせなくなる。これでは、直接請求やADRが被害者の真の権利回復の妨げになってしまう。
・東電はまた、住宅確保損害は、土地建物の時価相当額を超えるのだから、生活再建の資金だと主張する。しかし住宅確保損害については、原賠審でも議論し、賠償すべき損害として整理されている。研究者の論文も、住宅確保損害を原状回復に位置付け、賠償機能を実現しているにすぎないと指摘している。
・本訴訟の原告らは多くが自主的避難等対象区域からの避難者だが、東電はこれらの原告について「法律上保護される利益に対する違法な侵害があったとは評価し得ない」と主張する。これは、区域外避難者には基本的に賠償されるべき損害などないということを意味する。これについては前回期日で反論した。
・東電は、精神的損害に対する賠償と生活費増加分等の実費の賠償が一体として行なわれているから、費目間充当すべきと主張する。しかし、東電が考えているような、損害項目を超過するような既払い金は一切存在しない。
・最後に東電は、世帯内相互充当(同じ世帯の中にもらい過ぎている人がいる場合、そのもらい過ぎを世帯内の別の家族の損害に充当すべき)を主張している。その理由の1つに、受領権限のある世帯の代表者が世帯分を一括して受領していることをあげるが、これは民法上の代理の考え方から逸脱している。世帯主は代理をしているだけで、それぞれの賠償金は世帯の個々人に帰属する。
・東電は、世帯内相互充当を認めないと、もらい過ぎ部分について反訴や別訴を提起しないといけないと主張するが、これは取りこし苦労だ。東電にはすでに支払った賠償金の返還を求める理由がないからだ。


●内部被曝の危険性を認めた「黒い雨」訴訟広島高裁判決

  7月14日広島高裁は、「黒い雨」訴訟控訴審判決で、原告84名全員への被爆者健康手帳の交付を広島県と広島市に命じました。
 「黒い雨」訴訟の争点の一つが、内部被曝による被害の可能性でした。被告側(特に国)は、①低線量で放射線被曝被害は生じない、②内部被曝も外部被曝もそのリスクは同じであり、内部被曝が特に危険というわけではないとして、「内部被曝被害はありえない」と主張しました。
 判決は、内部被曝について原告側の主張をほぼ全面的に認めました。その判示内容は、福島原発事故にも当てはまるものなので、「黒い雨の人体影響」という節の重要部分を掲載します。
(ア)黒い雨による内部被曝
 黒い雨の降る空間には放射性微粒子が充満するため、雨に打たれても打たれなくとも呼吸による内部被曝がもたらされる。また、黒い雨は大地に成育される野菜などの表面に付着して農作物を汚染し、さらに、黒い雨が土壌を汚染し、放射性微粒子が根から吸収され農作物を汚染する。これら農作物を食べることで、内部被曝をもたらす。加えて、黒い雨が流れ込んだ池や川の水に接すると水が媒体となって内部被曝をもたらす。つまり、水に浸けた物には放射性微粒子が付着し、水を飲むと内部被曝する。

(イ)内部被曝の危険性
 内部被曝は、外部被曝に比べ、次のような特徴を持ち、より危険性が高いということができ、放射性微粒子1個で内部被曝するだけで、可能性としては、身体に原爆の放射能の影響を受ける事情が出現することになる。
 a 内部被曝では、外部被曝ではほとんど起こらないアルファ線・ベータ線による被曝が生じる。
 b ガンマ線と比較すると、局所的な被曝であるために分子切断の範囲が狭く、放射線到達範囲内の被曝線量が非常に大きくなる。
 c 放射性微粒子が極めて小さい場合、呼吸で気管支や肺に達し、飲食を通じて腸から吸収されたり、血液やリンパ液に取り込まれたりして身体の至る所に巡回し、親和性のある組織に入り込み、停留したり沈着したりする。
 d 身体中のある場所に定住すると、放射性微粒子の周囲にホットスポットと呼ばれる集中被曝の場所を作る。バイスタンダー効果(放射線を照射された細胞の隣の細胞も損傷すること)等を考慮すると、DNAに変性を繰り返させ、癌に成長させる危険を与える。
 e 放射性物質が対外に排出されるか減衰しきるまで、継続的に被曝を与え続ける。
 f 外部被ばくの場合には低線量と評価される状態であっても、内部被曝の場合には桁違いの大きな被曝を与える。


●原告だより

「公正な判決を求める署名」にご協力を!
 10月から「公正な判決を求める署名」を始めるにあたり、原告さんに今思っていること(国に対して言いたいこと、裁判官に分かってほしいこと、支援者の皆さんに伝えたいことなど)を書いてもらいました。
 
●国に言いたいこと
 私は原発事故による避難を経験しただけで、他の人とは何ら変わりません。ただこの経験で人生が大きく変わったことは、間違いありません。原発は私が生まれたときにはもう存在していました。反対も賛成もできず、既にあって、被害が起きて莫大なお金がかかる事態にまでなっていました。
 事故が起きてたくさんの人が犠牲になっていてなにも解決されてないのに、この国は、それでも原発を進めるつもりなのでしょうか。
 日本にはたくさんいいところがあったはずなのに、お金にばかり執着して、自然を潰す事態になっていることに、いい加減気づいてください。
 これ以上、これからの子ども達やその子ども達にまで負の遺産を引き継がないでください。
 (齋藤夕香)
 
●裁判官の皆さまへ
 10年前、国は私たちを守ってくれないということを悟った。事故を機に、変わることなく、今も経済優先で人命尊重ではない現実に疑問を覚える。そんな中でも、権利を主張し闘ってきた全ての方が、今度こそは守られる判決であって欲しい。 
 (匿名希望)
 
 自分の家の庭や部屋に毒をばらまかれたら、逃げますよね。ましてやその毒が消えるのに何十年、何百年もかかる代物だったらその場所から避難するのは当然ですよね。
 毒はまだ消えていないのに、加害者はもう安全だと言う。『お前たちは勝手に逃げた』と被害者にさらに追い討ちをかける。
 毒をばらまいた加害者が被害を、被害者を線引きしてセカンドレイプまがいのことまでするんですよ。もう、ボロボロですよ。放射能という毒をばらまかれ、命と健康を守るために逃げたらズタボロにされるんですよ。そんなのありですか?そんな不条理ありですか?
 日本は法治国家ですよね。毒をばらまいた犯人は罪を認めて謝罪し、被害者に対して罪の償いをするようにさせることが、司法が正しく機能している証になるのではないでしょうか。
(小林雅子)

 弁護団の先生方や支援する会の皆様にいつも支えていただき感謝いたします。
東日本大震災が起こった2011年から10年が経ちました。震災で生活は一変しました。
 慣れ親しんだ地域は放射性物質で汚染され、安心して暮らせるところではなくなってしまいました。
 親、きょうだいや友人とも離れ、知らない土地に避難してきました。
 世間では原発事故は風化して無かったことのようになっていますが、放射性物質の危険は変わっていません。
 このことを考えるととても辛く悲しい気持ちになります。
10年経っても、辛く悲しい気持ちは消えることはありません。
 避難したことは間違っていなかったことを認めていただきたいです。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 (S)

 放射能に対する懸念から、安心した子育てがしたくて、福島から京都へ避難して9年。母子生活なので、無理せずをモットーにやってきましたが、いつのまにか「時間がない」が口癖の生活となり、子どもの心身不調にも気づきませんでした。
 今子どもの気持ちに耳を傾けると、ずっと我慢してきたことがわかりました。今まではなかったのですが、最近地震アラームが鳴ると、震災の事(当時3歳)を思い出し、怖かったということもありました。子の不調により、親兄弟が近くでサポートしてもらえたらと何度も思いました。一人での子育ての大変さを今更ながら感じています。
 原発事故では、命の危険を感じました。二度と起きてほしくない気持ちから裁判に参加しました。危ないものは危ないという判決を下してほしいと願います。
 (H・S)

 裁判官の方々も世界一の原発過酷事故を扱うのは初めてだと思います。
 原発は核です。核の性質はよくご存知だと思いますが、しかしそれを取り扱う東電、適当な仕事も容認してる国が全く自覚がありません。事故の責任も取らぬまま再稼働するという発想がその証拠です。事故は終わってないんです。継続中です。私たちの避難生活も継続中です。
 それなのになんの罪もないとは言えない。廃炉、除染を丁寧に行い、昔からその土地に暮らす方々に安堵の顔が出て生業と暮らしが戻って初めて事故収束です。
 できないなら事故の重さを知らしめてください。もとの暮らしが生きてる間に取り戻せない事を想像してください。心からの謝罪と自分達の責任を認めさせてください。
 (菅野千景)

 あの悪夢のような地震津波のあとの爆発、原発事故、その後、海外のインターネット放送でことの重大性を聞き、震えました。
 しかし、日本の公式の情報はいつも遅く客観的な現状が正しく伝えられているのか疑問でしたし、今でも不安です。福島の原発事故により、多くの人が「安全神話」の間違いに気付きました。
 「想定外」の事故はこれからも起こります。どうか、公平な裁判を通じて、原発事故防止の努力を怠った東電と国の責任を追及してほしいですし、私たちの避難の権利を守ってほしいです。
 (水田爽子)

●支援者の皆さまへ
 2011年、見知らぬ京都という土地で避難生活を始めてから様々なことがあり、2018年3月、京都地裁の判決では、国、東電の責任が認められたことは、弁護団や支援者の方々の大きな支えによって実現したと痛感した日でした。と同時に、棄却された原告さんがいたことが、一番のショックでした。
 生活環境、年齢、性別、宗教、イデオロギーの違いに関係なく放射能が降ってきたことは事実です。毒をまいた加害者が被害者を分断することは許しません。
 大阪高裁では、全原告の避難、被害を認める判決を願って、ここまで来ました。これからも、皆様の応援が支えになります。どうぞ、よろしくお願いいたします。 
 (M)

  もっと多くの方々に、この裁判に対して関心を持っていただきたいと思います。
 子どもを持つ親として、私たち原告がなぜ争わなければならなかったのか、小さな子供を持つお父さんやお母さんに知ってほしいです。
 つながっている皆様、いつもありがとうございます。感謝を込めて。
 (高木久美子)

●いま思うこと
 3・11から11年目の今。原発事故はすっかり風化し、もはや事故に向き合っているのは被害当事者とほんの一握りの支援者のみなさん、そして非情な加害者だけなのだという現実。「社会通念」生きているだろうか。
(川﨑安弥子)
  
 ごきげんよう。独り桑田フェス(注)中の池田です
 お上は復興って言葉好きですね。何が〝復興〟五輪だったのでしょうか(ネタが少々古いのはご容赦を)?
 お上が、明るい未来へ〝がんばってるよ〟アピールで福島を槍玉に挙げ、よっこいしょしてるのに気づかない人も少なくないのでは無いかと思います。お上の大好きな復興と名の付く税は復興庁の采配で東日本大震災関連に使われているハズですがそれもどうだか。
更に25年間納めんの!…長げぇなぁオイ。因みに近場のモニタリングポストは設置されたはいいが、お粗末にも動力がソーラーなので夜間は動かない。…設置の意味はあるのかしら?
 「あれから10年?」云々も正直言うと聞き飽きましたね。そのフレーズを使っていいのは、「はじめてのおつかい」と「ポツンと一軒家」くらいでしょう。
 こんなに長く関わると目標が行方不明になりそうです。けじめってわけでも無いけど、もう暫く現状を見て行きたいと思います。
 コロナのせいにして出廷しない(出来なかったんですョ!本当!)。
 ♪シンドイね、生きて行くのは♪
 池田でした。

(注)サザンオールスターズの桑田佳祐の音楽フェスティバル(祭典)の最中(独りで音楽ビデオ見ている)という意味だそうです。


●公正判決署名集めを開始しました!

 

 
 10月17日、伏見大手筋通りは、日曜日でお天気も良く、家族連れもたくさん歩いており、賑やかな雰囲気が戻りつつありました。
 第1回目の署名集めは、この大手筋商店街での第一声でスタートしました。
 原告3名、支援事務局4名の布陣で、バラバラに位置して通行するみなさんへ声をかけていきました。子ども脱被曝裁判を闘う同志も共に街頭に立ち、時にはマイクを握り道行く方へ署名を集める意義、原発賠償京都訴訟など裁判をしている理由をアピールしてくれました。
 1時間ほどの署名集めの間に、話に耳を傾けてくれ、積極的に名前を書いてくれる方もいて、約30筆が集まりました。ご協力に感謝申し上げます!
 第2部は丹波橋の事務所に移動して、全国発送する署名用紙の封入作業をしました。スタッフさん3名、原告1名が新たに加わり、さらに支援する会の会員さんが西京区から加勢しに来てくださいました。
 わいわいと最近観た映画の話や情勢などを話しながら、署名協力のお願い文と署名用紙を340枚の封筒に封入する作業は予定どおりに終了しました。
 秋空のもと、久しぶりにみなさんとお会いし、身体を動かして声を張り上げて「運動」して、とても清々しい日曜日でした。裁判に反映しますように!
 「運動」は継続しますので、ご参加のほどよろしくお願いします。  (共同代表 福島敦子)

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