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 ◆ 京都における原発避難者支援の取り組みと政府に求めたいこと

  ● 京都における原発避難者支援の取り組みと政府に求めたいこと

    2022年10月2日
    うつくしま☆ふくしまin京都 代表 奥森祥陽
 
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 私が避難者支援活動をはじめたきっかけは、福島第一原発事故後の2011年4月に福島県会津若松市に開設された避難所に、京都府職員として業務応援に入った事である。
 避難所には、福島第一原発周辺の「浜通り」の住民が、「中通り」の避難所には入れずに、遠く離れた会津若松市に避難してきていた。

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 私は、1週間後に避難所支援業務を終えて京都に返ってきたが、その時に京都府や近隣府県に多くの人たちが避難してきている事を知った。避難者の多くは、京都などに知人がいるわけでもなく、原発事故による放射線被ばくから逃れるため、とりわけ、「子どもたちの命と健康を守りたい」との思いで、遠く離れた京都府や近隣府県に避難したのだ。しかし、避難先自治体からの支援は極めて不十分で、避難先で孤立している状況が分かり、避難者同士、また避難者と地元市民とのつながりを作るための交流会の開催など、ネットワーク作りの取り組みをはじめた。

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 2011年の原発事故当時、原発被害者・避難者を支援する法律はなかった。地震や台風などの自然災害の被災者・避難者に対して適用される「災害救助法」が、避難指示区域外からの避難者(以下、区域外避難者)の一部にも適用された。

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 災害救助法は、「被災者への応急救護・保護と社会秩序の保全を図る」ことを目的とし、災害時における被災者・避難者の人権を保障する法律ではない。

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 政府・福島県は、区域外避難者に対して、災害救助法に基づく「みなし仮設住宅」として避難住宅をを無償提供した。仮設住宅は公園や運動場などに建設するため、供与期間は原則2年と定められ、必要に応じて1年ごとに延長されてきた。このことは、原発避難者にとって極めて大きな精神的苦痛となっていた。私たちは、2012年9月から毎年、復興庁、福島県、避難先自治体に対して避難住宅の長期無償提供や避難者の生活再建にむけた支援の実施を求めてきた。

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 2012年6月、超党派の国会議員による議員立法により「原発事故子ども被災者支援法」が成立した。この法律は、避難者・滞在者・帰還者のいずれに対しても適切な支援措置を講じることを基本理念として定めた。しかし、具体的な支援施策については政府が定める「基本方針」に委ねられることになってしまった。

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 2012年12月に政権復帰した自民党・公明党連立政権による徹底したサボタージュの結果、基本方針が定められたのは2013年10月のことであった。しかも、基本方針に織り込まれた具体的な施策は、帰還政策が中心であり、避難者に対する支援は、民間団体を活用した相談や公営住宅への優先入居など、わずかなものしかなかった。

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 福島県は内閣府と協議の上、原発避難者に提供していた「みなし仮設住宅」の無償提供を2017年3月31日で打ち切り、2年間に限り有償での提供や一部家賃補助などの激変緩和措置を実施したが、それも2019年3月31日で終了している。これを機に、意に反して福島県に帰還せざるを得ない避難者が出てしまった。

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 私たちが取り組んできた避難者支援活動は多岐にわたっている。写真報告集をご覧にいただければ、実際の活動をイメージしていただけると思う。避難者同士、避難者と地元市民のネットワーク作り、交流イベントの開催、政府・自治体に対する避難者要求の提出と交渉、国と東京電力に対する損害賠償訴訟への支援、中学3年生の高校進学に向けた学習支援など。
 2019年7月には、原発事故による放射線被ばくの影響のある地域で生活している方を対象に、通年的に無償で利用できる「京都やましろ保養の家」を開設した。
  http://fukushimakyoto.namaste.jp/hoyou_no_ie/index.html 
 これらの活動は、新型コロナ感染症の影響を受け一部縮小しながらも現在まで継続している。

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 私たちの11年に及ぶ活動を踏まえ日本政府に強く求めたいことは、「国内避難に関する指導原則」や社会権規約、各権利条約に基づき、国内避難民の人権保障のための国内法を早急に整備して欲しいということである。国際基準に則り、「子ども被災者支援法」の基本方針を改定することや、被災者の人権保障を明確にした災害救助法の抜本的な改正を求める。
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